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賀茂川沿いの公園でぼっと、していることが好きだった、下宿が近くにあったせいもあるが、川の流れを見ているだけで不思議と落ち着くのだった。そのころはやっていた、ソニーウォークマンのカセットを入れ替え、ベンチの上で寝転び、流れ着く雲をみあげなら、オフコースのカセットを聴いていた。オフコースの解散騒動があったとき、解散するかどうかなんて、そのときはどうでもよかった。ぼくの中でその歌があればいい、それでだけでよかった、橋の上から、ハンカチがゆらりゆらりと、飛んできた、僕の顔の上にちょうど落ちてきた。北山大橋の上から、女の子がこっちに手を振っていた。何か叫んでいるけど、わからない。「これ、きみの?」ぼくは起き上がり、ハンカチをもって見上げた。ハンカチは、スヌーピの絵柄のかわいいものだった。数分たち、そのハンカチの女の子は賭けてきた、「ごめん、ごめん、命中した?」「はい、」ぼくはハンカチを手渡すと、再び寝転んだ。「あ、ありがとう!」そういって、ぼくを起こして無理やり横に座った。「何?聞いてるの?」「なんでも、いいだろ」「あそこの、豆腐屋さんの横の下宿の学生さんでしょ・・」「え、俺のこと知ってるの?」「うん、しってるよ!」「ふーん、どこ?どこの下宿?どこの学生?」「あはは、私は、あそこ!あそこに見える寮、看護学生なんだ」「へ-え!看護婦になるんだ」そういって、ぼくはポケットのジッポーを取り出しカチッと火をつけ、マイルドセブンに火をつけた。女の子は目を輝かせ、話し出した。「京都産業大学でしょ、ね、」「なんで、知ってるの?」「こないだ、加茂湯の前から、下宿まで、ストリーキング、やったでしょ!」ぼくは、驚いて、くわえたタバコを下に落とした。「ええ、みてたのか!」「そうだよ、見てたんだ!後ろからね!もう、大笑い!」ぼくは、ばつが悪くなり、内心、後ろからでよかったとおもった。「ねえ、何?何の音楽聴いてるの?」そういいながら、ウォークマンを取り上げた。ヘッドフォーンを耳にあて、長い髪を掻き揚げた。ほんのり、長い髪のいいにおいがした。「へ、オフコースなんか、聞くんだ!オフコースは女の子のきくもんだよ!」そういわれ、ぼくは、内心、またいわれた、と思った。「なんだっていいだろ、君は誰が好きなの?」「エイちゃん!」僕は驚いた目をして、「あれは、ヤンキーが好きな音楽だろ!」といった。女の子は「私ね、もう時間ないから、かえるね、電話当番なんだ、名前いってないね、山下といいます、山下ゆかりです」そういいながら、手を差し出した。不思議なやつだった。別にすきとか、付き合うとか、そういうこともなく、ただ、賀茂川のベンチでいろいろ話すことがそれからあった。くすっと、笑う、さよならの風が吹き、あの、僕のつまらない話に、くすっと、笑ってくれた、あの笑顔が好きだった。
2015.01.05
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ぼくは、後期試験日程をスケジュール表にまとめ、はやばやと2月あたまには試験が終了することを確認して、それからフルタイムでできるいつものバイト先に電話をした。加茂川の冬の名物である、あのゆりかもめがたくさん飛来し、川の中を泳いだりえさをさがしていたりしていた、「あのとりさんたちは、夜はどこで寝るのかな?」ぼくが、御園橋でぼっと川と鳥をみていると、話し掛けてきた女の子がいた・・。「そうだな、比叡山のやまでもいくんじゃない?」「ふーん、それで、君は講義ノートは完璧なの?」「いや、出席もだいぶ抜けてしまったから・・受けるだけ無駄かも・・」「単位落としたら、来年度もたいへんだよ」そういいながら、女の子はマフラーを後ろにまわしつつ、かばんからノートを差し出した。「はい、これでしょ、ノート貸してあげるから!」ぼくは手を合わし、目を輝かし、ノートをとろうとした、その瞬間ノートを差し戻し、「あのね、条件があるのよ!」「ええ、なに?」二人で川の流れを見ながら、「なになんだよ!」ぼくは、聞いた。「あのね、お願いがあるんだ、この手紙をラグビー部の田中くんに渡してほしい」「なんだ、ラブレターか?」といいながら、手紙をすかしてみた。「だめ、中をみてはだめなの、この手紙は私が書いたモンデナイノヨ」「ふーん、じゃあ、誰からの手紙なんだよ、俺に渡してくれというんだろ、誰が差し出し人がわからないなんて、あいつも受け取らないかもしれんしな・・」そういいつつ、ぼくらは、寒い風の中、行き交う車やバスのよこ、御園橋の橋の上話をしていた。「いいよ、わかったよ、渡せばいいんだろ、明日、第三食堂で見つけて渡すよ」「うん、たのんだよ」そういって、ノートを渡し、そのこは神社のほうに歩いていった、ぼくは、たぶん、その夜も徹夜でテスト勉強をすることを考えていて、貸してもらった講義ノートをめくった。そのノートはきちんときれいな字でしっかりと書かれていて、そのこの几帳面さを感じとった、何枚かのページをみて、ノートの片隅に書かれていた、短い詩を見つけた。加茂川のほとりの公園を歩きながら、その詩を再び読み返して、ベンチにすわった。夏の夕ぐれ青いころ、行くが楽しさ小径ぞえ、青麦に刺され、草を踏み夢心地、あなうら爽に吹く風に髪なぶられてもの言わず、もの思わず、愛のみが心に湧いてさすらいの子のごとく遠く僕は行く天地のかけ―女なぞ連れたみたいに満ち足りてその詩を、読んだ、寒い風がぼくの顔を吹きつけ、おもわず、顔を背けひとりでつぶやいた。「なんだ、この詩は?誰の詩なのか?」文学青年でもないぼくは、その詩のもつ言葉の風景を頭に浮かべでみてはけし、そして、意味が読み取れないまま、空腹感で現実の世界にひきもどされ、下宿への帰宅を急ぐべくベンチを離れた。大学3年の冬はあっというまに、終わった
2015.01.03
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