いっしょにね

いっしょにね

2007/04/20
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カテゴリ: 親子の姿
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一時期父子家庭だったときがある。

母親がいなくなって、私と弟は家にひっそりと黙って父の帰りを待っていた。

平日はいつも遅くまで父親は仕事をしていた。

父親は、朝のうちに夕方まで私達がきちんと食べられるようにたくさんの調理をしておいてでかけてくれていたのでおなかを空かせて待っているということはなかった。

私と弟は夕方になると鍋の中のものをすくいとっては食べている毎日を送っていた。
私はそのころ幼稚園児だったからほとんど調理はできなかったけど、たまに卵焼きをしたり、ウインナーを焼いて食べた記憶が残っている。

そんな私だったがある日ふと「自分で夕ご飯を作ってみよう。お父さんびっくりするかな」と思い立った。

野菜に肉に‥野菜を切りながら父親の顔を思い浮かべてはウキウキしていた。

「上手にできたな、結構やるなぁ」



しかし。

あに図らんや。

野菜は芯まで火が通っていなくて肉は変に焦げつき見るも無惨な状態になってしまった。

あーあ。だめだ・・。


私は「失敗だ」とがっくりして鍋の中のものを始末しようとした。

そのとき車の音がした。
ん?
父親が帰ってきた!

私は慌てて鍋ごと食器棚の下に隠した。恥ずかしくて、とにかく隠したかったのだ。
父親が「ただいま」と帰ってきてしばらくして私の名前を呼んだ。
父親の前には私が調理し損なった鍋が置いてあった。


私はうなだれた。
恥ずかしさでいっぱいだった。

しかし。
次の瞬間父親は、信じられない事をした。
鍋の中のものをつまんで食べだしたのだ。

それしか言わなかった。

どんなにかまずかっただろうに。
父親は黙って芯の残る野菜と焦げついた肉を「うまいうまい」と言いながら食べ続けていた。

お父さん・・・。

私はそのとき何にも言わなかったけど確かに父親の暖かさを感じた。
嬉しいような申し訳ないような気がして涙が一滴ポツリと流れた。


あれから数十年。
今、自分の小学生の子供がぎこちない手つきで一生懸命料理を作っている。
「あぁ、おいしいねぇ!上手になったね。」
私は心を込めてありがとうといいながらご馳走になる。
子供はぱっと顔を輝かせる。
「そぉ?もっと一杯作るからね!」
私はうんうんと頷きながら、父親の朴訥な姿を思い出していた。







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Last updated  2007/04/20 05:01:32 PM


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