マックの文弊録

マックの文弊録

2005.09.05
XML
◇月曜日:旧暦八月二日 壬辰(みづのえ たつ) 二日灸

青年門左衛門
旧 暦八月二日の今日の歳時記は ふつかやいと 。
これもやはり中国渡来の風習なのかも知れないが、旧暦の二月二日と八月二日にお灸をすえると、無病息災のおまじないになるというのだ。
お灸など余りしなくなってしまった今日では、この風習に従う人も殆どいないだろうが、昔は庶民の間でも割合に普通に行われていたようだ。その証拠に「二日灸」は俳句の季語にもなっているのだ。俳句の季語は、今でも旧仮名遣いを踏襲することになっているので、「ふつかやいと」と書かない時には、「ふつかきゅう」ではなく、「ふつかきう」と書く事になるのだ。

昨 晩下の娘からのメールが、門左衛門の訃報を伝えてきた。我が家の住人、兎君のことだ。この兎君、かつて動物病院にかかったとき、♂と判定されている。

彼は、我が家の隣のお茶畑に迷い込んで途方にくれていたところを、上の娘に保護され、以来我が家の食客になった。もう十年も前のことである。
真っ白な毛並みの彼は、残念ながら門歯が一本欠けていた。それで、我が苗字の後に続けて、「門左衛門ハオレ」と命名され、家族の一員に認定された。

最初の頃は居間に同居を許され、機嫌の良い時は板張りの居間を駆け回ったり、床の新聞をボロボロに裂いたり、ソファに飛び上がったり、時々階段を登って二階まで探検に出かけたりと、縦横無尽の振る舞いであった。


一度我が家のやんちゃ犬に吠えられて驚嘆し、文字通り脱兎の如くに駆け出して、姿が見えなくなったことがある。近所を探し回っても一向に見つからない。「もうどこかへ逃げちゃったんだよ」と諦めて二日後、ソファの後ろにうずくまって不貞腐れているのが見つかった。
二日間、何も食べていないものだからやせ細っていたが、空腹にも拘らず一所に閉じこもっていたのだから、さすが名に恥じぬ根性であった。

兎 によらず、人に飼われている動物は、野生で暮らしている同属と較べて、押しなべて生活や食生活がいびつに偏るのだろう。門左衛門も、元々門歯が一本欠けていたせいもあるのか、何年かしてから「乱杭歯」になってしまった。

げっ歯類の動物の歯は伸びるのが早い。木の実や皮、草の根など硬いものを食べては歯を磨り減らすことでバランスを取るのである。それが乱杭歯になってしまうと、歯を削ることも出来なくなる。
以来、伸びすぎた歯を時々切ってやるのは僕の役目になった。歯が伸びすぎると、膝に抱き上げて、唇(?)を開いてニッパーで一息に切り取るのだ。普通だと抱き上げられただけで暴れまわる門左衛門も、僕が歯を切る時だけはおとなしくしている。男同士の友情が芽生えたのだ。そう思う。

僕が夜遅く帰宅すると、家の人間は眠ってしまっていても、門左衛門は階段の途中に座って起きている。そうして人の顔をジロッとにらみ、「相変わらず遅いじゃないか!いい加減にした方がいいぞ。」と小言を云うのである。

この夏は外に出しておくには暑過ぎるという、カミサンの温情で、棲家の籠を居間に入れてもらっていたが、何となく静かで余り元気とはいえない様子だった。その挙句の昨日の訃報だった。

娘によると、午後四時過ぎ頃急に騒いで、ぴょんと跳んだ。何事かと籠を覗いたら、「車のジャガーのエンブレムのような格好で大往生していた」そうである。そういえば上の娘が未だうんと小さかった頃、どなたかに戴いて庭で飼っていたパンダ兎も、いきなりぴょんと跳ねて急逝したことを思い出した。
兎君は、若く元気な頃を思い出して一跳ねするのをこの世の名残にして、あの世に旅立つものなのかもしれない。

門 左衛門ハオレは、今朝方引き取られ、動物合同葬に付された。
我が家に来た時彼が何歳だったか知らないが、家族になってから十年である。兎の寿命は数年から頑張っても十年程度だといわれるから、彼も天寿を充分に全うしての大往生だったのだ。


それにしても、僕は唯一の同性の同志をこれで失ってしまった。「敵地」に独り残された想いで、これから寂しくなる。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005.09.05 19:22:29
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

プロフィール

求連帯而懼孤立!

求連帯而懼孤立!

カレンダー

バックナンバー

2026.10
2026.09
2026.08
2026.07
2026.06

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: