まいかのあーだこーだ

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2005.10.17
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テーマ: 風のハルカ(31)
カテゴリ: 風のハルカ
「ハルカ」と「トトロ」について、
これまでの日記にもいろいろ書いてきましたが、
もっと本格的に考えなくちゃいけないような気がしてきた。


「風のハルカ」第一週の内容は、「となりのトトロ」を逆説的に引用してる。


先々週ぐらいに、わたしは、そう考えてたんだけど、

でも、
トトロの引用は第一週だけにとどまらないかもしれません。

もしかしたら、
ドラマの全編にわたって、
「となりのトトロ」は重層的に引用されて、


しかも、それにともなって、
元の「トトロの世界」それじたいがバラバラに分解されていくかもしれない。

◇   ◇   ◇

とりあえず、
いままで書いてきたこともふくめて、
「ハルカ」と「トトロ」の関係を整理しておきます。


1. なぜ「ハルカ」は「トトロ」を引用したか。

たぶん、NHKの朝ドラの場合、
舞台になる土地(今回は大分県の湯布院。)を発想の原点にして、
物語を構想しなきゃならないっていう条件があるんだろうと思います。

大分・湯布院という土地から、

その中のひとつに、
「由布岳の形がトトロに似てるから、由布岳をトトロに見立てる」
みたいな発想があったんじゃないでしょうか。

それに、
大分県は、もともと『となりのトトロ』にゆかりがある みたいです。


日本人なら誰でも知ってる『となりのトトロ』の世界を引用しつつ、
大分県に「トトロの物語」みたいなのをつくる構想が出てきたんだと思う。



2. 「ハルカ」はどんなふうに「トトロ」を引用しているか。

とくに第一週では、
「トトロ」の引用っぷりは徹底してます。

言うまでもなく、、
ハルカ&アスカは、『となりのトトロ』のサツキ&メイです。
2人の年頃も同じだし、子役の顔立ちも似てる。
髪形は完全に同じ。(10年後の今でも同じまま。)
それぞれの性格もそっくりだし、何より姉妹の関係がそのまんまです。
そして(意図的かどうかはわからないけど)、
妹のアスカ役を演じてる、桝岡明ちゃんと黒川芽以ちゃんが、
考えてみりゃ、2人とも「メイちゃん」だった・・というほどの徹底ぶりです。

それから、
「お父さんと引っ越してきたところがオバケ屋敷」という設定も、
このドラマが「トトロの物語」であることを明示している部分です。



さらに、
脚本の大森美香ちゃんが、 公式HPの中 で、
このドラマのタイトルにある「風」という言葉について語っていて、

それによると、「春風のような爽やかさ」みたいなのが、
このドラマの基本的なイメージのようなんですが、

じつは、宮崎駿もトトロの世界を描くときに、
「5月」という季節をイメージしていた ようなので、
その部分も、両方で共通するところなのかもしれません。



そして、何より、
満月の夜に湖から龍が昇っていく というエピソードが、
「子供だけが見ることのできるファンタジー」として描かれるところも、
ハルカの第一週はトトロの世界の再現だったんだ、と感じさせます。

トトロの世界もまた、子供だけにしか見えない世界だったから。


◇   ◇   ◇


でも、第二週になると、
こうした「トトロ的な世界」は、すべて壊れてしまう。

満月の龍にたくした少女たちの願いは、
無情な現実によって、何もかも打ち砕かれてしまいます。

両親は離婚して、
病の床にあった少年は死んでしまい、
友達の一家は夜逃げして、
父親のレストランも失敗に終わってしまう。

このドラマにおける『トトロ』の引用が、
かなり 「逆説的なもの」 だというのは、そういうことです。


◇   ◇   ◇


でも、それだけじゃないかもしれない。


もしかしたら、
トトロの引用は、第一週にはとどまらないかもしれません。



「ハルカ」と「トトロ」で、もうひとつ似てるところがあります。

大森美香ちゃんが、このドラマを構想し始めたとき、
だだっ広い一本道をお父さんと小さな女の子が手をつないで歩いている
というイメージがあったそうなんですが、
たぶん、最初、主人公の少女は、
姉妹じゃなくて、一人だけだったんだと思う。

たぶん、大森美香ちゃんは、
「トトロ」の世界に近づけるために、
主人公の少女を、
ひとりじゃなく「姉妹」にしたんじゃないかと思うんだけど、

じつは、宮崎駿自身も「トトロ」を作るとき、
最初は、一人の少女の物語を構想していたのに、
脚本の辻褄あわせのために、後から「姉妹」という設定に変えた んだそうです。


でも、
大森美香ちゃんの場合、
この姉妹を、たんにサツキとメイの実写版のように描くのではなくて、
2人をあえて分裂させることで、
それぞれを別のベクトルに向かわせて、
そこから、、新たなドラマのダイナミズムを生み出そうとしています。

「トトロ」ではほとんど一心同体だったはずの姉妹が、
「ハルカ」では互いに分裂して、それぞれにちがう方向へ進み出してしまう。
それが、新たな物語を生んでいく。

わたしたちが見ているのは、
サツキとメイの「その後の物語」なのかもしれません。

その意味でも、
このドラマは、外見的には「トトロ的」でありながらも、
じつは、内容的にかなり「反=トトロ的」な要素を孕ませています。
トトロをまねながら、じつはトトロを解体しようとしてるかもしれない。

もちろん、このドラマが、
「トトロ的なファンタジー」へのアンチテーゼになっているのかどうかは、
ドラマを最後まで見てみないとわかりません。



今日の放送で、アスカはこう言いました。


いつまでも「この家の犠牲者」でいることはない。

お姉ちゃん、一生ここに縛られてれば?

あたしは、春になったらここを出る。



アスカが何から自由になろうとしてるのか。

それは、この家(=お父さんが連れてきたオバケ屋敷)からです。
そして、その家は、「トトロ的な世界」の象徴です。

言いかえれば、アスカは、
「トトロ的な世界」の幻想から抜け出そうとしてるのかもしれない。

トトロ的なファンタジーは、第二週で壊されてしまったんだけど、

じつは、姉のハルカのほうはまだ、それを信じてるのかもしれない。
でも、妹のアスカは、その子供みたいな幻想を捨て去ろうとしてる。

こういうハルカとアスカのちがいは、
そのまま、お父さんとお母さんのちがいにも重なってます。

幻想を信じる父親。現実だけを信じる母親。

アスカから見れば、
「トトロ的なファンタジー/子供じみた幻想」をいちばん信じているのは、
ほかでもない、 父親 だってことになる。

自分たちは、父親の子供じみたファンタジーの犠牲になってきた。
アスカは、そういうふうに思ってる。

じっさい、だれよりも「トトロの世界」に住もうとしていたのは、
じつは彼女たちの父親だったのかもしれません。



トウモロコシがどうとか言ってる場合じゃないんだよ・・



これは、先週の最後の放送で、
お父さんが言った何気ないセリフですが、
この“トウモロコシ”というのも、じつは「トトロの世界」を象徴したアイテムです。

『となりのトトロ』の中に出てくる“トウモロコシ”は、
子供だけが見たファンタジーの片鱗を、大人に伝える役割 を果たしてます。


ハルカの父親は、まだこの“トウモロコシ”を信じようとしてるかもしれません。


◇   ◇   ◇


こんなふうに考えていくと、
今後も、「トトロ」」の世界というのは、
いろんなかたちで、このドラマの背景でありつづける可能性があります。



(「となりのトトロ」については、 こちらのサイト を参照しました。)





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最終更新日  2005.10.18 04:15:23


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