まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2020.02.13
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カテゴリ: スカーレット!
このドラマは「伏線を回収しないドラマ」なのかも、
とひそかに思ってはいた…。

なかなか物事が上手くいかないし、
ちょっと進んだと思ったらまた戻ってくるし、
宣言や約束はちっとも果たされないし、
悪いヤツだと思ったら意外に善人だったりするし、

すべてが思惑とは違う結果を招きつづけるドラマなのです。



ふつうに物事が成就するドラマの場合、

このドラマは、ほぼ伏線が回収されない(笑)。

「一緒に生きよう」と誓ったはずの夫婦。
「成功したら穴窯やります」と言ったはずの妻。
「平和なうちに穴窯やれよ」と言ったはずの夫。
何ひとつ初志は貫徹されず、むしろアベコベになっていく。

そういうところが、かえってリアルで面白いのかな、と思ってました。

そんななか 《炎を信じて》 という神話のなかでは、
なぜか村上ショージだけが確実に「神」になるという、
リアルを超越する宗教的展開だけが際立ったのでした。




印象的になんども繰り返されるシーンがあります。

いろんな登場人物が、
いったん去ろうとして、また戻ってくるシーンです。
最近では、信作もそうでしたし、草間も、武志もそうでした。

いちどは背中を向けて歩き去っていくのですが、

主人公にむかって大事なことを言うのですね。

そういうシーンが象徴するように、
このドラマは、さまざまな意味で、
行ったと思ったらまた戻ってくる物語 なのだと思います。
みんな、なかなか前に進まない。



一般に離婚のことを「出戻り」と言います。

いちどは大阪に出た主人公が、また故郷へ戻ったように、
わたしは当初、主人公の離婚のエピソードも、
行ったと思ったらまた戻ってくる物語 として描かれると予想しました。
でも、結果は逆でした。

そもそも喜美子の場合は、
嫁いだのではなく、八郎を婿に取ったのですから、
考えてみたら「出戻った」のは八郎のほうだったのです。


ドラマは、あえてその設定を逆にしている。


喜美子から見れば、
むしろ八郎は、行ったまま戻ってこなかったのです。

そして、
八郎が戻ってこなくなったとき、
喜美子はようやく前に進むことができました…。



離婚に至るまでの展開は、かなり強引な印象をあたえました。
「やっぱり不倫のほうが説得力あったよね…」という思いは拭えない(笑)。

たしかに、八郎の性格から考えれば、
三津がよっぽど淫乱かつ強欲でもないかぎり、
けっして不倫には至らなかったのだろうけれど、

結局のところ、
「なぜ夫婦は離婚するほどすれ違ったのか?」について、
視聴者の多くは明確な回答を得られなかったと思います。

そもそも売れる保証すらないのに、
「いますぐ穴窯」「借金してでも穴窯」「家を焼いてでも穴窯」
という喜美子の頑固さはちょっと解せなかったし、

かたや、
登場人物がみんな喜美子に協力しはじめたのに、
ひとりだけ別居をつづけた八郎の頑固さもちょっと解せなかった。

むやみに同じ屋根の下で衝突しないように、
一時的に別居しただけなのかもしれないけど、
それがなし崩し的な離婚に至るんじゃあ、元も子もないわけで。



ただ、ひとつ言えることは、
この離婚において、喜美子は「被害者」じゃなかったってことです。

かりに不倫なら、八郎や三津にこそ罪があれ、
喜美子は「被害者」ってことになるけれど、
この脚本では、喜美子にはほとんど被害性が見当たりません。

たしかに、
三津とのことや、女性差別の問題や、
芸術面でのすれ違いや、八郎の京都への移転など、
なし崩しに色々なことが積み重なったとはいえ、
結局、八郎を捨てたのは、喜美子自身の選択だったともいえます。
その意味では「花子とアン」の蓮子に近い。

大きなものを得るために、大事なものを失うという生き方。
そのすべての責任を、自分で背負わなければいけない生き方。

ヒロインに「罪」を背負わせたところが、この朝ドラの大きな特徴です。
それを描いたところに、この朝ドラの新しさがある気がする。



このドラマは、
前に進むことを、かならずしも肯定的には描いていません。

前に進むことは「戻れなくなること」であり、
何かを得ることは「大事なものを失うこと」です。
もっとえいば「何らかの罪を背負うこと」でもあるかもしれない。

陶芸家として成功を得てから後の喜美子の姿は、
おどろくほど寂しいものになっています。

成功して、夢も叶って、経済的な不安も無くなったのに、
気づいたら、夫もいない。息子もいない。父も母もいない。
喜美子は、多くの時間を一人ぼっちで過ごしています。

肯定的な描き方ではないけれど、ものすごくリアルです。



まだ一ヶ月以上ありますが、
このドラマの結末は、いったいどうなるのでしょうか?

アシガールみたいに、
若いときの三津がタイムスリップして武志に出会ってほしいけど、
神山清子さんは長男を亡くしている。

モデルの女性は存命していますし、
はたしてどの瞬間を物語の終着点にするのか、とても興味深いです。





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最終更新日  2020.09.19 20:36:34


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