まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2021.07.25
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プレバト俳句。夏の炎帝戦。
お題は「Tシャツ」。

今回も「異議あり!」ってほどのことじゃないけど、
個人的な感想です。



まずは、2位の東国原英夫。
Tシャツの干され 西日の消防署

季節の場面だけでなく、
社会の断面をも切り取るのが、東国原らしい特徴で、
この句も卓越しています。


1日の終わりを表す「西日」の対比に、
いろいろなストーリーも見えてきます。


日が沈めば終わりってわけじゃないでしょうけど。




そんな東国原を押さえて、
1位になったのは犬山紙子。
日盛りや 母の二の腕は静謐

出来の優劣はともかく、
これが今回の1位だったのはよかったです。
おかげで学ぶところがありました。

実際には「介護」の場面だったそうで、
そのことは読んだだけじゃ分からないのだけど、
そのぶん、読む人ごとに、


わたしの場合は、
「逞しく働く母親の年季が入った二の腕のたるみ」
みたいな対比的な光景が見えたので、
本人の話とは別のストーリーを思い浮かべたけど、
そういうところにも俳句の価値はありますね。


それは直す必要があるけど、
この句の場合は、
あえて語らず、映像に奥行きをもたせてるわけなので、
けっして瑕疵があるということではないし、
実際とは違う「読み」を誘っても構わないのだなと思います。

本人の意図を確かめないと判断できない面もありますが、
「誤読を招く」というのと「読みを許す」というのは、
似ているけれど、意味が違う。

…ということを考えさせられました。



順序バラバラですが、つぎは春風亭昇吉。
海の風 火薬の尽きた花火蹴る


これはランク外の12位だったのですけど、
わたし好みの作品だったので、目にとまりました。

なぜ最後に花火を「蹴る」のかは分からないけど、
これもやはり映像に奥行きがあって、
いろいろとストーリーの読みの可能性を感じます。

「火薬の尽きた花火」という表現が、
やや重複ぎみで効率が悪い気もするので、
「尽きた最後の花火」とか、
「尽きてしまった花火」とか、
「最後の花火の殻を」とも出来るけど、

花火の終わり=夏の終わりの場面だから、
そこに「火薬のにおい」を残しておきたいのも分かる。
「花火」は秋の季語という話もあるけど(笑)。

もうひとつ難点としては、
季語よりも「海の風」のほうに主役感が出てるので、

ためしに、上五で切らず、
海風に火薬が尽きた花火 蹴る
としてみましたが、
これだと「風で火が消えてムカついて蹴った」みたいだし、

いっそ語順を変えたほうが良いのかもしれません。



つぎ、
順位を戻して、フルポン村上。
まだマシなTシャツを貸す 夜の雷


これが3位でしたが、
こっちは逆に、悪い意味でストーリーが見えすぎる気がする。

本人の話によれば、
天候とは関係なく「お泊りの恋人にシャツを貸した」、
(そうしたら、ドラマティックに雷が鳴った!)
って場面らしいのだけど、

字面だけで解釈すると、
「雨で濡れた友人が来たので、シャツを貸した」
という因果関係のストーリーにも見える。

形式じたいは散文的なわけじゃないけれど、
内容が、映像描写じゃなくて、
小説やドラマのような叙述っぽく見えます。
その点が、評価の分かれ目だと思います。



4位のキスマイ千賀。
光るシャツ ひるぎの森を行くカヌー
シャツ光らせ ひるぎの森を行くカヌー
(添削後)

これは、
なんだか手練れの技術さえ感じさせる句でした。
ちなみに「カヌー」が夏の季語だそうです。

まず「ひるぎの森」と「カヌー」で、
西表島のマングローブ (←たぶん) を見せる仕掛けが上手い。

上五の「シャツ光る」は、
川面から照りかえす強い「日差し」だけでなく、
南国の温度や湿度からくる「汗」の表現にもなってて、
この効率のよさも素晴らしいと思います。

追記:屋我地島に固有名の「ひるぎの森」もあるようです。



同じくキスマイの北山。
花栗や 肌に張り付くツアーロゴ
ツアーロゴ張り付く 花栗の真昼
(添削後)

7位ですけど、
北山にしてはかなり上出来。

中七の「肌に張り付く」は、
出来ればもっと簡潔に収めたい表現なので、
先生の添削では「肌に」を消しているのですが、

この是非はちょっと微妙。

ツアーロゴが印刷されてるのは、
かならずしもTシャツだけとは限らないし、
たとえば、
「風で飛ばされたポスターが花栗の木に張りついている」
という誤読もありうるかもしれません。



同じくキスマイの横尾。
星空の渋谷 白シャツCEO


名人6段にもかかわらず、
今回は横尾がキスマイ最下位の8位。

今どきのカジュアルな経済人を描いていて、
お洒落といえばお洒落なのだけど…。

見方によっては、
キザというか、高慢というか
上級国民的なニオイも鼻につくし、
個人的な感想としては、
詩情そのものが、ちょっと微妙です。

なお、
季語を主役にするためには、
この語順で正解だったのだろうけど、

個人的には、
白シャツCEO 渋谷の星空
CEOの白シャツ 渋谷の星空
のような語順にしたほうが、

ストーリー性がうまれるぶんだけ、
イヤミな金持ち臭さが抑えられる気がします(笑)。



順位を戻して5位のミッツ・マングローブ。
白靴の老女冷ゆ 生鮮売場


スーパー店内の冷房&冷蔵のW攻撃。
現代社会の「夏だから寒い」という逆説的な季節感。

痩せた老女の細い足を見てるところが、
うっすら生々しくてミッツらしい。



つぎは小倉優子。
ガレージにチョークののび太 夏の蝶


ランク外の18位だったのですけど、
これも良いと思いました。
過不足もないし、上手だと思います。
フジモン的な作風ですね。

強いていえば、
上五・中七と、下五の季語のバランスが論点?



岩永徹也。
バーチャルの装備に課金す 裸の子


これは順位もつかないランク外で、凡人判定だったのですが、
俳諧味があって面白いと思いました。

ただし、
IQ150の天才俳優に言うのは何だけど、
「課金」をするのはゲーム会社であってユーザー側ではないのだから、
(もしかしたら誤用が常用化してるのかもしれないけど)
基本的な言葉の使い方が間違ってる気もします。

それから、
中八になってる「す」は不要かもしれないし、
語順を逆にして、下五を上五にしてもいいのかもしれません。

ちなみに「裸子 はだかご 」が夏の季語です。



パンサー向井。
風死せり 喪服の下のエアリズム


これまたランク外の凡人判定だったのだけど、
やはり俳諧味があって面白いと思いました。

「エアリズム」は冷感素材下着の商品名。
「風死す」は晩夏の季語です。

作者は自分自身のことを詠んでるはずですが、
作者を知らなければ、女性の句としても読めますよね。



順位を戻して、6位の梅沢。
若夏や Tシャツという戦闘服
若夏や Tシャツ一枚の闘い
(添削後)

フジモンは「渋谷のナンパ師」みたいな句だと言いました(笑)。

一方、わたしは、
マーロン・ブランドやジェームス・ディーンみたいな、
いわゆる「反抗の季節」を詠んだ句なのかな、と思いました。

しかし、
「若夏」は南島の初夏をあらわす季語だそうで、
そう考えると、たしかに先生の言うとおり、
「沖縄の政治闘争」を詠んだ句のように見えてきます。

ところが、
梅沢本人の意図はそれとは違っていたので、
(どちらかといえば、わたしの解釈に近い)
先生は「作者の意図に近づけて添削した」と言うのですが、
それでもやっぱり「沖縄の政治闘争」の句に見えます(笑)。

まあ「戦闘服」とかいうクサい比喩を使うよりは、
添削のほうが率直な表現になってるので、
それで異論ありません。



9位のフジモン。
夏暁のおなら逞し ロンパース
おなら逞し 夏暁のロンパース
(添削後)

原句のままだと、
「ロンパース」が主役になってる感があるので、
これは添削の語順が妥当だと思います。



10位の千原ジュニア。
白シャツは何より白く 退院す
白シャツの全き白や 退院す
(添削後a)
白シャツの白はこの白 退院す (添削後b)

中七の「白く」という連用形にちょっと違和感はある。
でも、
原句のほうがいいのか、添削のほうがいいのか、
正直いって、よく分からない。

ためしに語順を逆にして、
退院の ことさら白き白シャツよ
退院の白シャツ ことさらに白し
退院のTシャツ 白きや 白きや

などと色々やってみました。

結局、よく分かりません。



11位の中田喜子。
掛け違ふ釦 ぼたん 思春期の白シャツ


前段の「掛け違ふ釦」というのは、
「白シャツ」の映像描写であると同時に、
「思春期の対人関係」の比喩でもあって、
おそらくダブルミーニングですね。

しかし、
ダブルミーニングの意図を除けば、
思春期に「ボタン付きの白シャツ」を着てる必然性は、
あまり感じられないし、

結局のところ、
対人関係を比喩的に語ってる印象しかないので、
映像的なリアリティがとても貧弱です。



13位の森口瑤子。
日焼けして 上腕二頭筋強 こわ


これは、いわゆる、
「日焼けしてるのに強々しくない上腕二頭筋があったらもってこいっ!」
ってやつですね。

もちろん、
日焼けしてても「ひよわな上腕二頭筋」だってあるだろうけど(笑)、
日焼けても 上腕二頭筋弱し
だったら、たぶん川柳にしかならないと思います。

「日焼け」と「上腕二頭筋」で作り直すパターンの句。



14位の立川志らく。
白シャツに染み込む あの日の長崎


中七の「染み込む」は、
基本的には8月の「汗」と「記憶」のダブルミーニングであり、
あるいは「陽射し」「光景」「感情」などが染み込むのでしょうが、
この動詞の選択自体が、ちょっと凡庸という気もする。

でも、
先生はこれを「凡ミス」と言ってるので、
何か別の意味での減点なのかもしれません。



15位の松岡充。
Tシャツを買うシャツの列 汗みどろ


読んで字のごとしの詠み方で、
内容は明瞭だし、とくに過不足もないけれど、

「買うシャツ」と「着てるシャツ」の対比が、
俳句にするほど面白いのかといえば、そうでもない。

語順がやや散文的なので、
それを変えれば、もう少し面白くなるのかも。



16位のパックン。
ランマーにティーシャツかける レモネード


分からないので「ランマー」を調べたら、
アスファルトの舗装を固める工事用の機械だそうです。

季語は「レモネード」で夏です。

たぶん「上半身脱いで一休み」という場面でしょうが、
一読して中七の「かける」という動詞が引っかかる。

終止形で切っていますが、
切って強調する動詞としては弱すぎて間が抜けてる。

切らないで、
ランマーにTシャツ掛けてレモネード
Tシャツをランマーに掛けレモネード

とやったほうがマシ。

そもそも「かける」という動詞は、多義的で曖昧なので、
「置く」「乗せる」「被せる」「提げる」「干す」
などのほうが明瞭だし、

本来、ランマーの意味さえ共有されていれば、
動詞がなくても意味は通じるはずだから、
ランマーに黒ずんだシャツ レモネード
みたいな形も可能だろうと思います。



17位の的場浩司。
殺陣 たて 終えて 息荒く脱ぐ汗のシャツ


だいぶ暑苦しいです(笑)。

とりあえず、
「殺陣終えて」「息荒く」「汗」の3連打がクドいので、
まずは季語の「汗」を消してしまいたいし、
できれば「息荒く」も重複情報として消したいです(笑)。

なにか他の夏の季語と取り合わせて、
「殺陣終えて脱ぐシャツ」だけで作り直せるタイプの句。



19位の三遊亭円楽。
白シャツを干すハンガーの骨も痩せ


ハンガーの擬人化ともいえるけど、

逆からいえば、
老人 (もしくは病人?) の身体を、
針金ハンガーに見立てた比喩の句ともいえます。

「ハンガー」の擬人化そのものはクサいけど、
「老人」の比喩としてなら面白さがあるのかも。

哀れな貧しさを醸し出すような詩情が、
個人的には気持ち悪くて嫌だけど(笑)
そこが評価のしどころでもあるのかな。



20位の筒井真理子。
なで肩の詐欺師のシャツの白きこと


これも気持ち悪いのだけど、
こういう異様な不穏さは、ちょっと面白いです(笑)。

金回りのよさそうな優男のインテリ詐欺師かもしれないし、
カジュアルな身なりの「受け子」の若者なのかもしれない。

ぜひ、具体的な話が聞きたいなと思いました。



二階堂。
思い出のツアーTシャツ 炎


あ、
ここにもキスマイがいました!

下二の「炎ゆ」は晩夏の季語です。

って、
なぜ 5・7・2…?
なんでこんなに字足らずなの???

しかも、
横尾からは「"思い出"も不要」と指摘されてたから、
実質 「ツアーTシャツ 炎ゆ」 だけ!

もはや「咳をしても一人」的な短さですね。




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最終更新日  2021.08.11 19:17:22


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