まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.04.09
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頬紅き少女の髪に六つの花 左見右見風を抱くや鬱金香 ライン引き残してつるべ落としかな 花びらも乗車するなり春隣 えり足に冬の風ありLINE消す 空のあお富士の蒼へと飛花落花 旱星ラジオは余震しらせおり 廃村のポストに小鳥来て夜明け 札止めの墨色の濃さ初芝居 鷹鳩と化すカフェオレの白き髭 白髪の薄色に染め春立ちぬ おひねりや子役の見得に夏芝居 桐の花いつかは来ない紙袋 剪定や鋏の音の霏々として


今回は、
梅沢富美男の過去作品を回顧していました。

2020年以前の句は、
このブログでは取り上げていなかったのですが、
思いのほか凡句が多いですね…。
初期のころは、かなり評価が甘かった気もします。



古いほうから順に見ていきます。




テーマは「12月の風物詩」。
頬紅き少女の髪に六つの花


これが、
初登場にして「才能アリ1位」だったらしい。
でも、いま見ると凡句です。

冬に「頬紅き少女」ってのは発想が凡庸だし、
たんに「雪」と書けば2音で済むものを、
わざわざ「六つの花」などと書いて5音も費やしてる。

次の句でも、
フジモンに「綺麗な言葉詐欺」と言われていましたが、
たんに美辞麗句をひけらかして、

じつは内容に乏しい駄作でした。



テーマは「チューリップと遠足」。
左見右見 とみこうみ 風を抱くや 鬱金香 うこんこう
おもたげに風を抱くや 鬱金香
(添削後)

これも典型的な綺麗な言葉詐欺。
そしてクサい擬人化。


ゆらゆらと風を抱くや チューリップ

と書けば意味は同じと切り捨てられていました。



テーマは「秋の運動会」。
ライン引き残してつるべ落としかな


上五の「ライン引き」は、
器具ではなく人物だと誤読されかねないし、
そもそも名詞ではなく、
複合動詞の「引き残す」だとも誤読されかねず、
いずれの場合も、
グラウンドの光景すら思い浮かべるのが困難になる。

一般に、
動詞を含む名詞を扱うのは厄介だと思いますが、
耳慣れない名詞であればなおさらです。

そして、
この句もやっぱり綺麗な言葉詐欺。

たんに「夕暮れ」と書けばいいものを、
わざわざ「つるべ落とし」などと6音も費やし、
それで何か文学的なことをやった気になっている。

プレバトの俳句査定がはじまった当初は、
こういう古い日本語の美しさを、
テレビで紹介することの教育的意義もあったでしょうが、

おそらく今ならボツにされる可能性が高いと思いますし、
分かりやすい口語で詠む村上やフジモンに比べると、
こういう梅沢の作風はたんなる虚飾としか見えません。





テーマは「江ノ電と桜」。
花びらも乗車するなり 春隣
花びらも乗車す 風ゆらぐ電停
(添削後)

このあたりからは、
これ見よがしな美辞麗句は控えられています。
しかし、
それに代わって「クサい擬人化」が出始めてますね。



テーマは「初冬の代々木公園」。
えり足に冬の風あり LINE消す
冬の恋終わりぬ 風に消すLINE
(添削後)

失恋して髪を切った女性を詠んだらしい。

句材そのものにはオリジナリティがあり、
詩情も悪くないと思いますが、
せっかくの内容が読み手には伝わりにくい。

たんに「えり足」と書いただけでは、
髪を切った後だとは分からないし、
たんに「LINE消す」と書いただけでは、
恋人との連絡手段を断ち切ったとは分からない。

短髪の男性がLINEの交信を終えただけにも見えます。
まあ、それはそれで、ひとつの風景にはなりますが。



テーマは「桜と富士山」。
空のあお富士の蒼へと飛花落花


鮮やかな映像ともいえますが、
句材そのものにはさほどの独創性がなく、
リフレインの効果だけで誤魔化されてる感もある。



テーマは「ラジカセ」。
旱星 ラジオは余震しらせおり


これは良い句ですね。

率直で無駄のない客観写生になってますし、
社会的な句材にも迫真性があります。



テーマは「郵便ポスト」。
廃村のポストに小鳥来て夜明け


これも良い句です。
やはり社会的な題材を扱っている。

梅沢が、
接続助詞の「て」でお茶を濁すのは悪い癖ですが、

ここで「小鳥来る夜明け」とせずに、
あえて「小鳥来て夜明け」としたのは、
まるで小鳥が朝を呼び込んだような面白さを生んでいて、
例外的に「て」の使用が功を奏しています。



テーマは「書初」。
札止めの墨色の濃さ 初芝居
札止めの墨色の濃し 初芝居
(添削後)
札止めの墨色ぞ濃き 初芝居 (添削後)

切れの作り方で添削されたのは惜しいですが、
これも率直な客観写生で良い句だと思います。
初芝居の期待と目出度さと活力がみなぎっている。



テーマは「コーヒー」。
鷹鳩と化す カフェオレの白き髭


またもや文学的表現のひけらかし?
…って気もするけど、

この句にかんしては、
滑稽な場面が季語と響き合ってるし、
春の緩んだ空気感も出てますし、
なかなか上手く出来てると思います。



テーマは「美容室」。
白髪の薄色に染め春立ちぬ
白髪をうすむらさきに春立ちぬ
(添削後)

原句は「てにをは」がおかしい。
「白髪の染まる」or「白髪を染める」
のどちらかでなければなりません。



テーマは「100円玉」。
おひねりや 子役の見得に夏芝居
おひねりの飴よ硬貨よ 夏芝居
(添削後)

これも原句は「てにをは」がおかしい。
「見得に」が「夏芝居」に掛かっていますが、
どう考えても「おひねり」に掛けるべきです。



テーマは「紙袋」。
桐の花 いつかは来ない紙袋


読み手に「いつかは来ない」の意味が伝わるのか、
ちょっと微妙ですよね。
≫ いつか使う日が来るだろうと思ってても、

ってことなのだけど、

読み手によっては、
「いつもの紙袋の人がいつかは来なくなる」
みたいに誤読されかねない。



これ以降の句は、
過去に取り上げたはずなので割愛します。

最後は、今回の締めの一句。
テーマは「シュレッダー」。



剪定や 鋏の音の霏々 ひひ として
言葉摘むに似て剪定の鋏の音
(添削後)

ああ!無内容の極み!

この場合の「霏霏」は、
《絶え間なくずっと~》みたいな意味ですが、
「絶え間なく鋏の音のしない剪定があったら持って来い!!!」
ってやつで、
上五の「剪定や」以外は、まったく不要な情報です。

たんに「霏霏」って言ってみたかっただけ!

相も変わらず綺麗な言葉詐欺。
なんら成長していませんでしたw

なお、比喩をやる場合に、
「~ごと」を使う手法は何度も見ましたが、
この添削のように「~に似て」も使えるのですね。





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最終更新日  2023.09.17 15:08:20


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