まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2023.06.20
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暮れなずむ愛猫色の夏の空 玄関に恐れ入りますががんぼです 夕暮れて公園ベンチも涼しげだ 八十路夏蛍照らせし初デート 夕焼やつくばいのある美術館 夏至の古色蒼然行商老婆 せせらぎの1/F夕蛍

お題は「夏の夕」。




梅沢富美男。
せせらぎの1/F 夕蛍
1/F せせらぎも蛍も
(添削後)

古い日本語ではなく、
新しい用語に挑んでいるのだけど、
これも一種の《綺麗な言葉詐欺》には変わりない。
要は、たんに「1/F」って言ってみたかっただけの句。
※表記としては小文字で「1/f」が正解のようです。

そもそも、

とも言えるわけで、内容的に凡庸きわまりないのですね。



立川志らく。
夏至の古色蒼然 行商老婆
行商の老婆は夏至の逆光に
(添削後)

形容動詞の「古色蒼然」という熟語を、
描写ではなく抽象概念のように用いてるので、
前段はまったく具体的な映像になっていません。

わたしも読んだ瞬間にボツだと思ったし、
先生がこれをボツにしたのも妥当だろうし、
客観写生の原則に徹するなら添削が正解でしょう。


…ただ、選者によっては、
これを型破りな表現として評価するかもしれない。


目の前の夏至の光景が、
何かのフラッシュバックのように、
あるいは古いフィルムのデジャヴのように見えて、
現実感を失った瞬間の心象を詠むのなら、
こういう記述になる必然性はある気もします。



春風亭昇吉。
夕焼や つくばいのある美術館
作品名「つくばい」 夕焼美術館
(添削後)

中七の「蹲踞 つくばい 」は茶庭の添景物。

たとえば西洋画のタイトルには、
「果物 のある 部屋」とか、
「糸杉 のある 風景」みたいなのがあるし、
旅行雑誌のタイトルなんかにも、
「庭園 のある 美術館」とか、
「カフェ のある 神社」みたいなのはよくあるし、
そこに一定の詩情や映像喚起力もあるとは思う。

なので、ひとつの俳句の作り方として、
「○○ のある ○○」というフレーズを、
季語に取り合わせる手法もありえる気はします。

ただ、
そこに詩情を感じるかどうかは読み手しだいでもあって、
たぶん作者は「美術館に蹲踞がある」というだけで、
なにかしら固有の詩情が喚起されると思ったのだろうけど、

志らくにいわせれば、
そういうキザな感性が「嫌味だ」ってことにもなるし、
わたしも「蹲踞があるから何なのよ」って気はしました。



中川翔子。
暮れなずむ愛猫色の夏の空
暮れなずむ夏や 愛猫色の雲
(添削後)

しょこたん、
結婚したら急にしっとりとして綺麗になったよねぇ。
今までに見たことのないような色気を感じました(笑)。

そして、
「結婚する飼い主を見送るように猫ちゃんが亡くなった」
…という話を知るにつけ、
けっこうスピリチュアルな人だなあ、とも思う。
(たんに沢山飼ってるからかもしれませんが)

これは、
そんな猫ちゃんへの鎮魂の句。

海援隊的な「暮れなずむ」も、
松本隆=松田聖子的な「○○色」も、
いつもの歌謡曲的なフレーズではあるけれど、
かろうじて俗っぽさを免れてる気はする。

目に見えて綺麗になったしょこたん。



レイザーラモンRG。
玄関に恐れ入ります ががんぼです
玄関の隅にががんぼ 夕間暮れ
(添削後)

夏の季語「蚊蜻蛉 ががんぼ 」を擬人化したセリフの句。

"恐れ入ります"という風情は、
けっこう面白いとも思うのだけれど、
面白いと思うかどうかは、
読み手しだいってところもあるでしょう。

ネタを組み込むのがお約束になってしまうと、
必要以上に作句のハードルが上がるから、
次回からはふつうに詠めばいいんじゃないでしょうか?(笑)



山口もえ。
夕暮れて公園ベンチも涼しげだ
夕涼や 公園ベンチ一人きり
(添削後)
夕涼や 公園ベンチ一人じめ (添削後)

凡人らしさが素直に出てしまった感じ?

率直な客観写生ではあるものの、
いまいち詩情に乏しいかな。



徳光和夫。
八十路夏 蛍照らせし初デート
君とゐて椿山荘の初蛍
(添削後)

昇吉が指摘したように、
時制の分かりにくさが最大の難点。

本人が意図したのは、
「若いころの初デートを思い出した」
ってことだったようですが、
字面からは「80才の初デート」のように誤読してしまう。

過去の助動詞「し (きの連体形) 」の一語で、
前段と後段の時制を変えるってことなのだろうけど、
そういう手法をプレバトで見たのは初めてです。

手法としてはけっこう斬新だし、
うまくいけば「夏」と「蛍」の季重なりも、
時制の変化で強弱をつけられることにはなります。

とはいえ、
さすがに17音のなかで時制を変化させるのは難しい。
添削では、
過去の場面を《現在》とみなして作り直しています。

実際、原句の前段の部分は、
たんに「80才の夏です」という説明にすぎないので、
いっそ現在の説明は切り落として、
過去の描写に徹するほうがいいってことでしょうね。





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最終更新日  2023.07.08 03:57:05


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