まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2026.09.25
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カテゴリ: NHK朝ドラ
NHK「風薫る」が終了。

結局、
卯三郎さんが言ってた「リターン」とは、
個人的なリターンじゃなくて、
社会的なリターンだったのね。

シマケンが、
貧しい母子にりんの著作とチョコをあげたのも、
やはり社会的なリターンを期待してのこと。

◇


あくまで未来への投資だから、
本人に還元されなくてもOKなのね。

最終回には、
捨松も吉江先生も出てこないし、
勝海舟も卯三郎も出てこないし、
バーンズ先生も出てこなかったけれど、

彼らも未来へ投資してたのだから、
個人的なリターンの伏線回収は必要ない。
全員集合の大団円はなくてよかったってこと。

◇

バーンズ先生が言った、

患者個人から対価を得るって話じゃなく、
社会投資を財源に看護を還元するのが仕事、
…という意味だった。

だから、
直美の派出看護が、

その発想に倣ってたといえるし、

これは最終的に、
柳生の「社会保険」の構想にまで繋がっていく。
(彼は海外の農業保険論を医療保険に応用しようとしてた)



…でも、じつは、
このドラマの最大の裏テーマは廃娼運動だったのよね。

◇

大関和さんが廃娼運動に取り組んだ史実を、
どのようにドラマで描くのか注目してたのだけど、
結局、りんが社会運動に取り組むことはなく…

強いていえば、
シマケンの書いた新聞小説が、
セツの遊郭からの足抜けを後押ししただけでした。

ただ、後から考えてみると、
じつは寛太と直美の活動こそが、
廃娼運動を裏から支えてたのよね!!

わたしは、
ようやく最終週でそのことに気づいた…(^^;

◇

史実において廃娼運動を推進したのは、
新聞メディアやキリスト教会なのだけど、

現実問題として、
たんに遊郭を廃止するだけでは不十分で、
失職した女郎たちは路頭に迷ってしまうし、
誰もその後の彼女たちを救ってくれません。

だから、このドラマのなかでは、
寛太が彼女たちを救ってたわけですね。

◇

寛太は直美と出会ったころから、
女郎たちと関わりをもって、
ギブ&テイクで裏の仕事をしてました。

彼が直美に興味をもったのは、
彼女が女郎に捨てられた娘でありながら、
看護婦という地位にたどりついたから。

そして、
彼女の実母の過去を探れたのも、
女郎たちとのネットワークがあったからです。

◇

寛太は最終的に、
行き場を失くしていたセツをすくいあげ、
直美とのつながりのなかで、
彼女が看護婦になるための回路を作っていく。

つまり、今回のドラマは、
廃娼運動を表と裏から立体的に描いたわけで、
その立役者はりんじゃなくて、
寛太と直美だったのだと思います。

NHK朝ドラとしては、
詐欺師の活動までは詳しく描かなかったけど、
じつは彼のキャラは、
綿密な調査のうえで造形されてたかもしれない。

◇

寛太は最後まで、
近代制度の枠の外側でしか生きられず、
最後は大陸浪人になる道を選びます。

彼が自称した「小日向」は偽名ですが、
小さな日向で生きることが、
たぶん彼のほんとの望みだったのよね。

わたしは、
5年前の「カムカム」のるいが、
サッチモの《明るい表通りで》を歌いながら、
必死に日の当たる人生を歩もうとして、
娘に《ひなた》と名づけたことや、

東野圭吾の「白夜行」の亮司が、
雪穂を日の当たる場所へ送り出しながら、
彼自身は死ぬまで日の当たる人生を歩めなかったことを、
ついつい思い出してしまいます。


いちばん悲しかった寛太との別れ…(T_T)

このシーンで流れたのが「別れの先に」です。


◇

今作「風薫る」は、
前作「ばけばけ」と時代設定がほぼ同じだけど、
ディレクターも「同じ山を登ってる」と言ってたように、
じつはテーマも共通してたのよね。


前作「ばけばけ」は、
トキとなみとサワの3人の女性が、
遊郭のある此岸から川向うへ渡る話でした。

トキは異人と結婚することで、
なみは客に身請けされることで、
サワは教師になることでその川を超えた。

彼女たちの貧困の背景には、
明治維新と戊辰戦争の歴史があります。

松江藩は新政府側に寝返ったものの、
没落した武士は路頭に迷い、
父の借金を背負ったトキも、
あわや女郎になりかけたわけですね。

◇

今作「風薫る」のりんは、
那須の家老の娘ですが、
やはり父は新政府側に寝返ったものの、
没落武士として新しい生き方を模索してました。

そして、りんもトキと同じく、
いちどは結婚によって貧困から脱しようとするけど、
最終的には看護婦として自立する道を選ぶ。

かたや直美は、
女郎に捨てられた娘で、
キリスト教会に拾われて看護婦への道を進み、
セツとツヤも、
女郎や看病婦といった蔑まれた職業から、
誇り高いトレインドナースを目指すようになります。

シマケンが、
りんの著作とチョコレートを授けた貧しい母子も、
いずれ看護婦を目指すのかもしれません。

◇

ドラマの背景にあるのは戦争ですが、
もとから新政府側だったのは大山巌だけ。

幕臣だった勝海舟も、
会津藩だった捨松も、
家老だったりんの父も、
戊辰戦争で負傷した平蔵も、
たぶんみんな旧幕側の人達なのですが、

今回の朝ドラは、
戊辰戦争で没落した人たちが
女郎や看病婦のような蔑まれた立場から
誇り高いトレインドナースにたどりついて
こんどは日清・日露戦争の犠牲者を看護する

…という循環的な構造の物語になってる。

寛太はニセ軍人で、
吾朗や虎太郎は日清戦争で傷ついた犠牲者。
最後にりんと直美が向かった日比谷の群衆事故は、
日露戦争中の大惨事でした。

朝ドラ『風、薫る』原案者が語る看護師という職業の誕生ヒストリー
▶ https://neo.islib.jp/article/696


こうして考えると、
物語の構造はよく出来てて、
かなり立体的に組み立てられてたと思う。

ただし、その物語構造を、
実際の作話としてさばけてたかは別問題で、
視聴者に伝わってたとは言いがたいのも事実です。


◇

ってことで、
ここからは少々苦言を…(^^;

今回の朝ドラは、
男性との恋愛〜結婚が物語の主軸じゃなく、
事実上の同性婚を基礎にした一家団欒こそが、
すごろくの「あがり」だったので、

男性陣はあくまでも脇役でした。


傘と風呂敷までブルー&レッドハート

一家団欒がすごろくのあがり。


実際、
大関和さんも鈴木雅さんも、
未亡人のまま再婚しなかったわけだから、
これはまあ予想通りだったのだけど…

男性陣が誰ひとり結婚できないのは可哀想!!

りんにフラれた、
虎太郎&チュウ&シマケンも独身のままだし、
直美とニアミスした、
寛太&藤田先生&柳生も独身のままだし、

横沢はどこへ行ったか分からないし…(T_T)

さすがに気の毒すぎる。
彼らにも家庭を作らせてあげてほしかった。

◇

ドラマ的にも、
男性陣の役割はかなり散らかった印象でした。

りんと直美は同性婚に着地するわけだから、
結局、本命の男性は一人もいなかったわけで、
シマケンと吾朗ですら、
じつは本命のようで本命じゃないのよね。

これが視聴者をおおいに惑わせたと思います。

ドラマの構造上、
中途半端な本命に見えるシマケンや吾朗よりも、
潔く去って行く横沢や寛太のほうが、
よっぽど魅力的に見えてしまったのも事実…(^^;

朝ドラはヒロインの恋愛・結婚を描くのが王道!
…みたいな発想に引っ張られたのかもしれませんが、
むだに2人を本命っぽく描いたことで、
かえって視聴者にはノイズと思われてしまった。

◇

どうせ本命っぽく見せるなら、
シマケンと吾朗をもっと魅力的にすべきだったし、
俳優陣にもその前提で演技させるべきだったとは思う。

ただ、
あまり魅力的にしすぎると、
「なぜシマケンと結婚しないの?」
「なぜ吾朗を死なせてしまうの?」
…みたいな不満が出かねないし、

かといって、
魅力の乏しい男性にすると、
「なぜ吾朗と結婚?」
「なぜシマケンが本命?」
…みたいな不満が噴出するし、

その塩梅は難しかったでしょうね。
結果としても上手くいってませんでした。

◇

いちおう男性陣には、
恋愛以外の社会的な役割もあって、

横沢は社会運動に取り組む新聞記者、
虎太郎は薬を提供する会社員、
チュウは憩いの場を提供するパン屋でしたが、

ぶっちゃけ、
いてもいなくても大差なかった感じ…(^^;

恋愛においては、
横沢がシマケンの噛ませ犬でしたが、
虎太郎とチュウは、
噛ませ犬にすらなっておらず、

ただ散らかってるだけに見えたのよね…(^^;

◇

ついでにいうと、

吾朗と吉江先生を九州に結びつけたり、
お文さんとシマケンを静岡に結びつけたのも、
いまいち意図がよく分からなかったし、

吉江先生との今生の別れをしたと思ったら、
すぐに結婚式のときに帰ってきたりしたのも、
なんだかチグハグした感じでした。


野見祐二のサントラpart2もよかった!




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最終更新日  2026.09.25 21:17:29


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