1.ベンチャー企業の上場準備
(2) 変わっていく資本政策の優先度と証券会社選び
VCからの投資に限らず、業務提携先となる大企業の出資などを受けることによって、ベンチャー企業の経営者の持株比率は大幅に低下することになります。安定株主対策や創業者利潤対策といった古典的な資本政策の観点からは悩ましいところなのですが、安定株主対策という古い価値観は捨て、創業者利潤の確保とインセンティブ・プランの実施を優先すべきでしょう。VCが投資審査をする際に最も重視するのが経営者の資質であるように、投資家からみたベンチャー企業の最大の企業価値は経営者の能力ですから、消極的な安定株主対策にこだわる必要はありません。
創業者利潤対策は、平成十四年四月一日から施行された旧商法の改正によって、設立後なるべく早い時期に新株予約権を発行することによって、比較的簡単な手続きで、量的な制約もなく実施できるようになりました。ただし、発行した新株予約権は、会計上の潜在株式となるだけでなく、VCから投資を受ける際や、証券会社が公開引受を検討する際には発行済株式と同じ扱いを受けますので、楽観的ではない中期経営計画に基づく資本政策の一環として実施されなければなりません。 また、資本政策型の新株予約権の課税上の留意点については、後日の説明を参照してください。
もう一つ忘れてならないのは、創業メンバーやその後に入社した社員に対するインセンティブ・プランの実施です。インセンティブ・プランには、従業員持株会の設立なども含まれますが、ベンチャー企業においては社員数の少なさの面からも、新株予約権を使ったストックオプションが活用されています。「新株予約権方式のストックオプション」の留意点については後日記事の説明を参照して下さい。
ベンチャー育成の建前とは裏腹に、現実の公開市場はベンチャー企業にも高い利益を要求しています。また、ベンチャー企業が実際に上場できるか否かは、主幹事証券として引受契約する証券会社が出るか否かにかかっています。その際の主な判断基準が、証券会社としての引受メリットであることや、過去3~4年の公開市場が証券会社サイドの買い手市場化していたことは否定することのできない事実です。その一方で、三大証券と準大手が寡占化していた感のあった主幹事証券市場にも大きな変化が起こっています。大手都市銀行が親会社である銀行系証券会社の活躍は当然のこととしても、多数の中堅証券、ネット系証券、外資系証券が主幹事証券会社としての公開実績をあげるようになってきました。公募・売出し総額があまり大きくはないベンチャー企業の主幹事証券としては、それらのすべてが適格であり、公募・売出しの実績面でも不利はありません。自社の株式公開に最も熱意のある証券会社を、広い選択肢の中から早めに決定することが成功の秘訣といってよいでしょう。
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