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僕の住む町に、小さな池がある。
どこかへ出かけた帰り道、ちょっと遠回りになるけどその池を半周して帰るその道を車で帰る。
今日も池の周りに差し掛かるとスピードをグッと落とす。
(あ、いた!)車を止めて窓を開けると話しかける。
「おおい、アオサギくん。久しぶりだねー」
「あ、おじさん。久しぶりですね」
「そうだよねえ、元気にしてた?」
「はい、元気でしたよ」
「ふーん、元気にしてたのに随分と久しぶりじゃないか、何処か遠くに行ってたのかい?」
「いいえ、あの山の中のいつもの所にいましたよ」
「えー、なら何で姿を見せてくれなかったんだい、最近はカラスくんや鴨くんたちばかりでアオサギくんの姿が見えなかったから心配してたんだよ」
「おじさん心配していてくれたんですかあ、嬉しいです。実は僕、ジャンケンに負けっぱなしだったんです」
「ジャンケン?」
「はい、この池は小魚が沢山いるので皆ここに来たがるんです。だから公平にするためにジャンケンで一番勝った者がここに来ることになっているんですが、ここのところ僕は運が悪くてずっと負けてばかりだったんです」
「へえ、そうだったのか、それで最近はカラスくんや鴨くんばかりやって来てたんだね」
「はい、そうなんです」
アオサギくんは少しだけ恥ずかしそうに羽根の先で頭をかいた。
「そうかー、じゃあ今日は沢山小魚を食べてお腹が一杯なんだね」
「ところが今日は小魚があまりいなくて・・昨日大雨が降ったせいでしょうか?」
「ああ、なるほど。せっかくジャンケンに勝ったっていうのに、残念なことだねえ」
「はい、もうお腹が空いて目が回りそうです」
「それは可哀そうに・・・じゃあオジサンの家に来てご飯を食べるかい?」
「え、本当ですか!」
「ああ、でも生の魚は無いから・・・メザシでいいかい?」
「はい、ぼくメザシ大好物です!」
「そうか・・・でもタダでってのもあれだから、なんか芸を見せてもらおうか
その方がアオサギくんも遠慮なく食べれるだろ?」
「ええ!ぼくが芸をするんですかー」
「いやならいいんだよ、鴨くんなら直ぐに芸を見せてくれるのに」
「ええー、あの鴨くんが芸を・・・どんな芸をするんです?」
「彼はね・・・えーっと、そうだ彼は人間が酔っぱらったときの歩き方、千鳥足の真似が上手だね」
「そ、そうなんですか、意外だなあ」
「どうする?やるの、やらないの、どっち」
「や、やります。なんでもいいですか?」
「いいよ、何でも、僕は親切なおじさんだからね」
「・・・・・わかりました。じゃあ『鶴の恩返し』をやります」
「え、『鶴の恩返し』!?アオサギくんが?」
「だめですか?」
「そうじゃなくて、笑えるだろアオサギくんが『鶴の恩返し』だなんて!ああ、苦しい!!」
そう言ってオジサンは腹を抱えて笑い転げました。
「車の中で、よくそんなに笑い転げていられますよね・・・」
「あ、ごめんごめん、悪気はないんだよ、でも君の発想が、プップフフー!」
ただでさえ鋭いアオサギくんの目が怒りに燃えた。
「あ、すまんすまん、じゃあ行こうか」
「あ、オジサン待ってください」
走り始めた車を追ってアオサギくんは大慌てで池から飛び出た!
おじさんの家は直ぐ近くです
「はいはいアオサギくん、入って、遠慮しなくていいから」
「はい、じゃあお邪魔します」
「うん、いいよ」
とオジサンは居間の端に座る
「はい、どうぞ見せて見せて」
「じゃあ、やります」
オジサンの拍手が家中に鳴り響く中アオサギくんの演技が始まった。
アオサギくんは、首をうんと細く長く伸ばして見せた。
「これが鶴くんの擬態です」
「ほう、なかなかじゃないか、それで『恩返し』は?
「これからやりますから、良く見ててください」
そう言うとアオサギくんは
その場でぴょんと飛んでバク転して奇麗に着地した。
アオサギくんは得意げにオジサンを見た。
オジサンは精一杯の拍手をしてアオサギくんを褒めたたえた。
「いや、見事!・・・まあ、正式に言えば、『鶴の宙返り』だけどな、上手だったから良しとしよう」
そう言うとオジサンはメザシを沢山レンチンしてアオサギくんに食べさせてくれたとさ。
おしまい。
初のメルヘン、どうでしたか?(^^♪