M-BLstory

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February 2, 2025
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テーマ: 自作BL小説(22)
カテゴリ: BL小説
第八章:逃れられぬ鎖

九条と柊は、闇の中を駆け抜けた。

敵の銃弾が背後を掠め、建物の壁に穴を穿つ。

「クソが……!」

九条は舌打ちしながら、すぐ近くの倉庫に飛び込んだ。柊もすぐに後を追い、息を荒げながら戸を閉める。

「……まさか、ここまで本格的な抗争になるとはな」

柊は苦笑いを浮かべたが、九条は険しい顔のまま、窓の外を睨んでいた。

「今回の襲撃は、ただの偶然じゃねぇ。誰かが、俺たちの動きを事前に漏らしていた」

「つまり、辰巳会の中に裏切り者がいるってことか?」



九条は深く息をつく。

そのとき、背後で足音が響いた。

九条が素早く銃を構える。

しかし、現れたのは——辰巳会の幹部、相馬だった。

「九条、無事か」

「……ああ」

相馬は鋭い目で柊を一瞥し、少し顔をしかめた。

「こいつをここに連れてくるのは、さすがにまずいんじゃねえのか?」

「……分かってる」

九条は柊をちらりと見たが、柊は堂々とした態度を崩さなかった。

「俺のことなら気にしないでくれ。九条さんの邪魔はしない」



相馬はそう言い捨てると、九条に向き直った。

「本家からの指示だ。今夜のうちに、奴らの幹部を仕留める。やれるか?」

「……やるしかねぇだろ」

九条は無表情のまま答えたが、柊は驚いて九条を見た。

「アンタ、本当に行くのか?」



「……」

柊は拳を握りしめた。

彼は、九条をこの世界から連れ出したいと願っていた。

だが、九条は未だに“闇の中”で生きようとしている——。

(このままじゃ、九条さんは……)

***

数時間後。

九条は静かに拳銃の安全装置を外した。

敵のアジトの前。夜の闇に溶けるように立つ彼の隣で、柊は息を呑んでいた。

「……柊、お前はここで待ってろ」

「……」

柊は迷った。

もし、九条がこのまま相手の幹部を殺せば——もう完全に、後戻りできなくなる。

(俺は……どうすればいい?)

柊は、今ここで九条を止めるべきなのか、それとも——。

そのとき——九条が、静かに言った。

「……もし、俺がこの世界を捨てるとしたら……お前は、俺を受け入れてくれるのか?」

柊は驚いて九条を見た。

「……九条さん?」

「……お前と話してると、時々考えちまうんだよ。もし、俺が普通の人生を歩んでいたらってな……」

「……」

「でも、俺は……こんな生き方しか知らねぇ。だから——」

柊は、一歩九条に近づき、静かに言った。

「アンタが“こっち”に来るなら……俺は、何があってもアンタを守る」

九条は少し目を見開き、そして——静かに笑った。

「……変な奴だな、お前は」

「よく言われる」

二人の距離が、静かに縮まる。

そして——九条は柊の頬に手を添えた。

「……俺は、お前に救われるのか?」

「それは——アンタ次第だよ」

柊はそう答えた。

銃声が響く。

運命の選択の時が、迫っていた——。





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Last updated  February 2, 2025 11:30:12 PM
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