防衛庁が「島しょ防衛」について検討する部内協議で「南西諸島有事」を想定、海上での侵攻阻止などの対処方針をまとめていたことが15日、防衛庁の内部資料で分かった。南西諸島有事に対する防衛庁の方針が明らかになったのは初めて。
方針では本土から戦闘機、護衛艦の派遣のほか、侵攻への直接対処要員9000人を含め5万5000人の陸自部隊、特殊部隊の動員を定めており、尖閣諸島の領有権で対立する中国への警戒感が背景にあるとみられる。
防衛庁幹部は「南西諸島は大半の島に自衛隊部隊がなく、防衛面で空白地域が多い。中国は昨年11月に領海侵犯するなど活動範囲を広げており、動向に注目する必要がある」と話している。
防衛庁が「南西諸島有事」を想定した侵攻阻止などの対処方針をまとめたことに対し、先島の首長や平和団体などからは「危険な兆候」「宮古、八重山へ自衛隊を駐屯させる布石」と警戒感が出ている。一方で、万一の事態を否定的にとらえつつも、備えは必要との考えを示す首長もあった。
宮古市町村会会長の伊志嶺亮平良市長は「最近の防衛庁は、われわれが守ってきた平和憲法の理念に逆行する考え方を持っており、今回のことも危険な兆候だと思う」と指摘。 「アジアの国々と平和に共存できる関係をつくるべきで、仮想敵国を想定した政策を展開するのはおかしい。このような動きには断固として反対だ」 と語気を強めた。
昨年石垣市で行われた県主催の防災訓練で自衛隊の大規模参加に「戦時体制への地ならしだ」と抗議した八重山地区労働組合協議会の大浜明彦議長は「予想していたが、戦時体制への流れがすごい勢いで進んでいる。占領を想定しているようだが、最終的には占領されないために宮古、八重山へ自衛隊を駐屯させるための布石だ」と、将来的に石垣への自衛隊配備に危機感を募らせた。
これらに対し与那国町の尾辻吉兼町長は「有事への対応を考えるのは当然のこと。いくら与那国町の人口が少ないからといっても国民なのだから国として国民を守る義務がある。実際にはそのような有事が起こるとは思わないが、転ばぬ先の杖(つえ)として必要なことだと思う」と話した。
沖縄平和運動センターの崎山嗣幸議長は 「有事体制そのものが戦争を前提にしているので、防衛庁のこのような動きは予想できたが、沖縄戦を経験した県民の心情としては到底容認できない。平和憲法を形がい化させ、改正への動きも模索されているが、軍隊による統制ではなく、平和外交、話し合いによる国家間の問題解決が必要だ」 と訴えた。
違憲共闘会議の有銘政夫議長は「国民は自衛隊の動きにもっと敏感にならなければ。60年前の戦争の原因が、軍部の独走にあったことを忘れてはならない」と指摘した。
◇国民の監視が必要
前田哲男・東京国際大学教授の話 昨年12月、政府が閣議決定した新防衛大綱は、警戒対象として初めて北朝鮮と中国の国名を明記した。今回の、中国を想定敵国としているという自衛隊の「南西諸島有事の対処方針」は、新防衛大綱の内容に沿って、自衛隊が作成したのだろうと推察できる。
日本は、冷戦の終了で旧ソ連の軍事的脅威が消えると、新ガイドライン策定、周辺事態法の制定などを通じて、軍事的脅威を「北方から西方へ」と移し、北朝鮮、中国を想定敵国とみなしている。自衛隊は任務に従い、その「軍事的脅威」に対処方針を作成したということだろう。
しかし、わたしたちは、イラク派遣など自衛隊が次々と憲法を逸脱する活動を展開したことを忘れてはならない。文民統制の上からも、国民の監視が必要となる。
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