星の髪飾り

星の髪飾り

2007/10/04
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 令子の実家、大谷家の長男進二と妻の良子は、高血圧に悩む母の冴(さえ)の身を案じていた。
ところが令子の妊娠を知ってから、冴の血圧は安定し、隣町からの往診も減っていた。 冴は大谷家で一番見晴らしがいい十畳の和室に床を移した。 縁側に沿った掃き出し窓を開けると、さわさわと流れを止めない天竜川が見える。 緑の風は戯れ、村人の声が冴の耳に心地よく入ってくる。                         
底流に母の思いがあるとすれば、その法則に逆らう総てのものに、母はきっと立ち向う。 
「令子の赤ん坊は、桃の季節に生まれるなあ」                  
「そうだに。今年はきっと良い実が付くら・・・」    


 春が過ぎ、しなやかに膨れた令子のお腹を、茂夫が白い割烹着の上から優しく撫でた。
令子は大きな手の上に、自分の手を重ねて言った。
「もうじきだでねー」

 林家でも大谷家でも生まれてくる子を、それは楽しみに待っていた。


              次回 「多希子」





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最終更新日  2007/10/04 10:06:41 AM コメント(10) | コメントを書く


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