星の髪飾り

星の髪飾り

2007/12/18
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争いの雲に紛れて逝った人、悲劇の渦雲に泣いた人、未来の彼方へ旅立つ人。
 きしむ板張りの廊下。 尖がり頭の銀杏の木。 給食室のおばちゃんの大きな笑声。左右に揺れる福沢のお尻。 仕返しの手裏剣。 擦れた木のぎったんばっこん。 空を舞った縄のブランコ 。 遠足で転がしたまん丸おにぎり。 消毒臭いプールで沈んでいった下半身。 裏山を駆け下りた忍者ごっこ。 逆上がりで拵えた手のひらの豆。 答えを丸写しにした算数のドリル。 温かい広隆の背中。
 思い出が詰まった黄色いランドセルが、机に置かれた。

「多希子ちゃん・・・じゃあ、ご挨拶を」
 福沢がぽつりと空いた机を気にしながら、静かに言った。
「四年生になったみんな! 私は東京の学校へ転校することになりました。 東京はアルプスの背中。 やまびこが届くかもしれん。      
そ、それから・・・たくさん遊んでくれ、たくさんイジメてくれ、たくさん仕返した村の学校。 えーと・・・私はこの教室ごと東京へ持って行きたい!ふんとはみんなと一緒におりたい・・・」                 
 静まり返った教室で、福沢が上下する多希子の肩にそっと手を置いた。四十数人の仲間達は、ある日町からやってきた少女をぼんやり見つめていた。
【お友達になって下さい!・・・】

「タッコちゃ!元気でおってね!」
「うん」

 五月の風が広い校庭を突き抜けた。
僅かに揺れるブランコの傍で、拳を握った広隆が大空を見上げていた。






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最終更新日  2007/12/18 03:37:58 PM コメント(8) | コメントを書く


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