星の髪飾り

星の髪飾り

2007/12/19
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類



 夕方遅くまで庭仕事をしていた進二は、頭を上げて腰を伸ばし夕映え色の空を見上げた。 多希子は縁側からそんな進二のうしろ姿を暫く見ていた。                                


 翌日、雲をかき消して太陽が顔を出した。 特別な日はこれまで何度もあったけれど、多希子は今日こそが金メダルの日だと思った。
多希子が車に乗り込むと、エプロンで目頭を拭う良子の後ろにいた進二が「たのむで・・・」と行ってくるりと背を向けた。
真沙と養父になる英冶は、大谷家に向かって深く頭を下げた。 新しい父になるの「その人」の背中は、丸くて山のように大きかった。


 砂利道をゆっくり車が走り出すと、車窓に額を付けた多希子は、家畜小屋の向こうに見える弘子の家の屋根、竹薮、石垣、と眼に焼付け、井戸の方へ消えた進二を想った。
「おじさーん、おばさーん!元気でおってね。 育ててくれてありがとう!」           石垣の上で手を振る良子が視界から消えた。                               

 車が国道に出て短いトンネルを抜けると、左手に探険の場所となった小田切の集落が見えてきた。
「多希子!」
 真沙がそういうと、英治はゆっくりブレーキを踏んだ。
寺の方から、国道に向かって少年が走って来る。 
「広隆君?」
 国道と田んぼの間で止まった広隆が、息を切らして車を見た。
「タッコ!・・・東京へ行ったらもう、もう負ぶってやらんぞー」
 太陽が広隆の顔を照らしていた。
「タッコを、タッコを忘れんでね!」                            「・・・聞こえんぞー!」       

 英治はハンドルを握り締め、ゆっくりアクセルを踏んだ。
多希子はちょうちん袖のブラウスにかかった吊りスカートの紐を掴み、俯いた。
「多希子!見てごらん、アルプス・・・」
「光っとる・・・」
 バトンを受けた英治も、少女の未来の為に覚悟を呑んだ。                                                                         
                      明日「永遠に」 最終章 





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2007/12/19 08:13:11 PM コメント(10) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: