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悠真が祖母に届けたみかんジャムは、彼の家族の間で静かな波紋を広げた。長年の付き合いの中で慣れてしまった家族同士の関係に、新たな温かさをもたらしたのだ。
悠真の祖母、山下和子は、久しぶりに訪れた孫との時間を何よりも喜んでいた。夕飯の準備を手伝いながら、ふと彼に問いかけた。
「悠真、こんなに忙しいのに時間を作ってくれてありがとうね。昔からあなたは優しい子だったけれど、こうやって成長した姿を見られるのが本当に嬉しいよ。」
悠真は少し照れくさそうに笑った。
「いや、最近全然顔を出せてなかったからさ。先生にもらったジャムがきっかけで、おばあちゃんに会いたくなったんだ。」
食卓に並んだ料理の中心には、そのみかんジャムを使った煮込み料理があった。和子は料理好きで、贈られたものを上手にアレンジするのが得意だった。家族みんながその新しい味を楽しむ中、久しぶりの団らんが広がった。
その晩、和子はふと考えた。
「贈り物って、人の心をこんなにも動かすものなんだわ。」
そして、翌日。和子は近所に住む妹、松井玲子を訪ねることにした。玲子は数年前に夫を亡くし、一人暮らしをしている。忙しい日々の中で連絡を取る機会が減り、距離ができつつあることを和子は気にしていた。
和子は瓶詰めのみかんジャムを小さな籠に入れ、手土産として玲子の家を訪れた。
「お姉ちゃん、どうしたの?急に来るなんて珍しいわね。」
玲子は驚きながらも嬉しそうに笑顔を見せ、和子を中に招き入れた。
和子は、悠真との再会やみかんジャムの話をしながら、最近の自分の気持ちを率直に語った。
「贈り物を通じて、誰かを思いやる気持ちって、改めて大切だと思ったのよ。玲子も、たまにはこうして誰かと一緒に時間を過ごしてほしいなと思ってね。」
玲子は少し考え込みながら、そっとジャムの瓶を手に取った。
「ありがとう、お姉ちゃん。確かに最近は、一人でいることが多かったから、こういう時間が嬉しいわ。」
玲子はその後、和子から贈られたジャムを近所の子どもたちに手作りのお菓子として配ることを思いついた。お菓子を手にした子どもたちは喜び、さらにそれが地域の若い親たちへと広がっていく。
地域全体が、玲子を中心に新しい交流の場を築くようになった。
ある日、玲子は和子にこんなことを言った。
「お姉ちゃん、贈り物の輪って本当に不思議ね。誰かを思いやる気持ちが、次々に別の人へ伝わっていくのを感じるわ。」
和子は深く頷き、心の中で悠真への感謝を改めて思った。贈り物のきっかけが、こうして家族や地域全体を包み込む温かさになっていることに気付いたのだ。