音楽三昧+α

音楽三昧+α

2020.06.26
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テーマ: 歌曲(17)
カテゴリ: 声楽曲



 昭和30~40年代にかけて、音楽好きの若者を魅了したステファノのナポリ民謡集。甘美な力強いテノールで恋心を歌い上げた絶唱はまさに青春の賛歌。
 ぼく(黒田恭一)は、高校生のときに、デイ・ステファノのうたうナポリ民謡のレコードをはじめてきいた。それから後、海にいけない夏はあっても、ディ・ステファノのうたうナポリ民謡のレコードをきかずに過ごした夏は一度としてなかった。ディ・ステファノのうたうナポリ民謡の、ぼくが最初に買ったレコードは、とっくの昔に盤面が白くなり、まともな音をださなくなってしまった。やむをえず、ぼくは、何度かレコードを買いなおさなければならなかった。むろん、ぼくにも、ひとなみに、輝く夏もあったし、うつむいて過ごさなければならなかった翳りの濃い夏もあった。しかし、どんな夏であっても、ひとたび、ディ・ステフアノのうたうナポリ民謡のレコードに耳を傾けさえすれば、ぼくは、夏のはじける光のうちに生きているしあわせを感じないではいられなかった。情熱などという直球の感情は、お世辞にも今様とはいえないのかもしれない。しかし、ぼくには、情熱に身を焦がすこともなく、ぐたぐた生きていて、なにが人生だ、と思う古風な気持がある。そのことを教えてくれたのがディ・ステファノのうたうナポリ民謡のレコードだつた。もし、ぼくが今もなお、情熱といわれる、めらめらと燃えあがる感情の炎を信じることができて、さらに、自分の胸の奥で薪をつみあけて火種をたやさずにいられているとすれば、それは、おそらく、うむことなく、くりかえしディ・ステフアノのうたうナポリ民謡をききつづけてきたからである。南の国イタリアでとれたオレンジに南の国ならではの味と香りがあるように、イタリアの恋の歌にもまた、他の国のどのような歌ともちがう、ききての心を騒がさずにおかないものがある。そういうナポリ民謡の、あけすけといえば、あけすけな、しかし切々とききてに追る真っすぐな感情をもつともストレートにうたいあげられたのが往年のイタリアの名テノール、ジュゼッペ・ディ・ステフアノだった。太陽が燃える季節に、ディ・ステフアノのうたうナポリ民謡に耳をすますとき、男は、すべて、ぼくも、このように直球の感情を投げられればいいのに、と思いつつきく夏のロメオになり、女の人は、きっと、このようにうたわれたい、と思いつつきく夏のジュリエットになる。(黒田恭一)
 カルディルロ:カタリー(つれない心)
 ディ・カプア:オー・ソレ・ミオ
 ディ・カプア:あなたにくちづけを
 ディ・カプア:マリア・マリ
 E.A.マリオ:遥かなるサンタ・ルチア
 コットラウ採譜:サンタ・ルチア

 デ・クルティス:君を求めて
 デ・クルティス:孤独
 ベルリーニ:光りさす窓
 ファルヴォ:君に告げて
 ラーマ:静けさに歌う
 タッリアフェルリ~ヴァレンテ:情熱
  ジュゼッペ・ディ・ステファノ(テノール)
  ティノ・オリヴィエリ指揮/管弦楽団
 ペンニーノ:なぜ?
 トスティ:マレキアーレ
 トスティ:イデアーレ(理想の佳人)

 トスティ:かわいい口もと
 レオンカヴァルロ:朝の歌(マッティナータ)
 ガスタルドン:禁じられた音楽
 デンツァ:フニクリ・フニクラ
  ジュゼッペ・ディ・ステファノ(テノール)

 解説、歌詞対訳:河合秀朋
 ANGEL(東芝EMI) FECC-30231
 購入年月日:1993年7月12日(CDクラブ)


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Last updated  2020.06.26 10:51:40
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