東芝EMI移籍第1弾『エッセンシア』がリリースされた。小野リサには珍しい、ニューヨーク録音。プロデューサーに、リサとトロンボーンの村田陽一、コ・プロデューサーにニューヨーク在住のミネイロ、トニー二ョ・オルタ。そしてエディ・ゴメス、ランデイ・ブレツカー、ギル・ゴールドスタイン、マーク・イーガン、ダニー・ゴッドリーブといった現地で活躍するジャズ・ミュージシャンの顔ぶれも異色だ。確かにボサノヴァという音楽の戸籍は、ブラジル音楽とジャズの幸せな結婚の下にあるのだから、ニューヨークでジャズ・ミュージシャンとレコーデイングすることに納得こそすれ、何の不思議もない。しかしながら『エッセンシア』への期待感は音楽という生き物の、小野リサの音楽の、成長する姿を見守る上で緊張感を伴う。それは、このアルバムの要素の多さに起因するのかもしれない。トム・ジョビンの曲がある。ミルトン・ナシメントの曲がある。レノン&マッカートニーの「アクロス・ザ・ユニヴァース(Across the Universe)」、あのチャツプリンの作曲した「スマイル(Smile)」、そしてリサ作曲、宮沢和史作詞の「シ・ア・ワ・セ」。シングル・カットには「ムーン・リバー」が含まれている。だが、この曲の多様さが9枚目のアルバム『エツセンシア』の”本質”なのだ。(杉本進)