mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2007年07月11日
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ひやりとした感覚を背中に感じ、意識が戻る。
閉ざされた暗闇にから解放されようと、目蓋が少しずつ明かりを取り入れる。
ぼやけた視界がやがて鮮明となり、ゲルニカの顔を浮き上がらせる。それと同時に記憶がはっきりと
脳裏に戻ってきた。

「うぅぅ、私はどれだけ気を失っていた?他の人達はどうした?」

「大した回復力だな。あれからまだ5分程度だ」

ゲルニカはアルテミスの受けた傷が既に跡形も無く消え去っているのに驚愕の表情を隠さない。
その隣では、人の形に戻ったメタルビートルがケラケラと陽気な表情でアルテミスを伺っている。

「マスタ・・・」


「確かに、先ほどの闘い方や槍のさばき方は俺の流派と酷似していたな」

「ケケケ、まぁいいじゃん。私はこの子を気に入った、弟子にしてやれゲル」
「私はメタルビートル。こいつはゲルニカ、一応私のパートナーだ」

メタルビートルが微笑みながらゲルニカを指差し、片目を閉じた。

「私は・・・アルテミス。それ以外は訳あって話せない」

「いいだろう、ここにいる奴らは皆訳ありばかりさ。名前が知ればそれ以上は必要ない」
「他の奴らは上を目指して行ってしまった。感じるだろこの異様なオーラを」
「どうやらザードフィルの儀式とやらが始まったようだ」

「ならば我らも」

急いで立ち上がるアルテミスの肩を押さえつけ、言葉をさえぎるようにゲルニカの手が制止した。

「そう焦るな。俺達はこれから外へ向かう、出来ればお前にも来てほしい」



ゲルニカの言葉にアルテミスは不可解な表情を見せる。

「お前はどうやら俺達地上界の者にとって切り札となりそうだからな」


ゲルニカ、メタルビートル、アルテミスの3人は塔の中腹にあるテラスのような所へ出て外の様子を伺った。
その眼前に視界の全てを覆い隠すかのように巨大な黒い塊が現れていた。
その塊の周りには更にどす黒いオーラが立ちこめ、見る者の生気を奪う。

良く見ると、そのオーラの中には無数の魔獣達が飛び回り、地面を覆い、群がっている。

「あ、あれは何なんだ?」アルテミスが洩らす。

黒い物体に注意を注ぐアルテミスの横にうっすらと一人の魔導師が姿を現す。

「あれは、ゲートキーパーさ」

「誰だお前は?」

「アルテミス、彼はこの塔の主さ。正確には彼のエイリアス(分身)でも飛ばしてきたんだろう」

「流石に察しがいいねゲルニカは」
「上で少しお祭りをしていてね、この世界を守る宝玉の欠片から彼らを呼び出したのさ」
「それに釣られて、地下界の者達も大勢やってきたみたいだけどね」

「何故そんなことを?」

アルテミスの問いに少し微笑みを返すザードフィル。

「さぁ、僕にも全ては解らないな彼の思惑は」
「ただ、彼が一度封印した赤い悪魔を呼び出すのに必要なんだよ。ゲートキーパーは異界の門番なのさ」
「この塔を中心として今、巨大な魔方陣が完成している。上を見てごらん」

ザードフィルが指差した頭上には紅玉のような赤い月が大きく揺らめき、その中心に黒点が浮き上がりその点は
次第に赤い月を侵食し始めていた。

「さぁもう直ぐ赤い悪魔が復活する。君達はどうする?」
「赤い悪魔の復活を阻止するなら上、ゲートキーパーを倒すなら下だ」

暗い夜の砂漠の街、唯一地上を照らす赤い月は光を失いかけ、地上には巨大な魔物とおびただしい程の数の魔獣。
アルテミスの心と身体を縛り付ける無常の風が通り抜ける。

赤石物語
(Blackworld and Redstonestory)

~古都の南風 傭兵の詩~



ザードフィルの両手が大きく広げられ、天に輝く月を抱く。
うっすらと赤い光に照らされた夜の空は急激に雷雲が立ち込め稲光が大地を襲う。

空に浮かび上がった宝玉はそれぞれ光を放ちながら、大地へと降下し地表に突き刺さる。
光の宝玉達はお互いの色の光で結びつき、塔を中心に魔方陣を浮かび上がらせる。
そして地表は隆起し、巨大な黒い山を形成する。隆起した周りは獣の口のように裂け、その奥深くから黒い霧のように
魔獣達が鳥肌の立つような泣き声と共に湧き出てくる。
塔を中心に重く、不気味なオーラが充満する。
やがて、黒い巨大な山は小さく震えだしそれが山などではなく、一つの大きな魔獣である事を誇示するかのように
立ち上がった。
その巨大な魔物は雄叫びを上げ、その強烈な咆哮は天空を貫き大気を震撼させる。

「ゲートキーパーが召喚されたな、これで異界の門が開かれる」

ザードフィルがにやりと笑う。

「さて、僕ちんの仕事はこれで終りやね。ほなさいならや」

ザッザッ!

sakezukiが一同に背を向けるとロウ・ヴァイオレットが立ちふさがる。

「悪いが少し付き合ってもらおう」

背中に担いだ大剣をsakezukiに向け、じわりと間合いを詰める。他の者達も逃がしはしないとばかりにsakezukiを囲み
sakezukiは遂に、塔の隅に追いやられた。稲光がロウの大剣に反射し、その狂気に満ちた顔を浮かび上がらせる。

「さぁ、もう逃げ場は無いぞ。我が剣と交えるか、恐れをなして塔から身を投げるか」
「どちらがお好みだ?無敵の剣聖様よ」

ロウが更に間合いを詰め、剣先をsakezukiの喉元へ差し出す。

「フフ、おいらは勝てない勝負はしないから無敵なのさ」

捨て台詞を放つとsakezukiは振り返り、塔から身を投げ出した。

「馬鹿な!この高さでは生き延びる事は不可能だぞ」ロウは驚愕の表情を隠さない。

宙に投げ出された体をひねり、sakezukiは背中の巨大な斧を塔に向かい振り下ろす。

カン!キン!

金属と石がぶつかり合い、火花が飛び散る。一度弾かれた斧を更に振り下ろし塔に一文字の傷を残し、
巨大な斧が食い込む。sakezukiの鎧に包まれた重い体は巨大な斧と石の火花を散らす抵抗で落下速度が落ちる。
塔の上からは苦虫を噛み潰した顔で伺うロウの横から、無表情な顔でルジェが弓を構え、矢を打ち下ろす。

「ちょぉおおおおおおお」

sakezukiは予想していなかった攻撃に驚き、思わず奇声と共に塔の壁を蹴り再び宙の身を投げ出した。
当然の如く、ルジェの矢は空中のsakezukiを再び襲う。
その時であった。sakezukiの真下から突風が舞い上がり、sakezukiの体をふわりと持ち上げ矢の攻撃から守った。

「ナイス!タケちん」

sakezukiの真下、塔のテラス部分にはタケウマが巨大な盾を回し、竜巻を作りsakezukiの体を浮き上がらせていた。
竜巻を作り出す巨大な盾に着地したsakezukiは風に乗り、体の上体を使いルジェの矢の追撃をかわす。
円を書くように、風に舞う落ち葉のようにゆらゆらと風に乗り落下して行くsakezukiにルジェの矢が当たらない。

「うりゃー1440やぁ!」

きりもみ上体で体を捻り無数の矢を避けるsakezuki。更に旋回中の上空から襲う無数の矢に対し、足元の盾に手をかけ
頭と足を入れ替えて、天地逆さまの上体で体を更に捻り今では足の上にある盾をプロペラのように回し迫る矢を弾く。

「よし、僕ちん3Dも完璧やね」

グキ、グワギャバボンーーーーーーーー!
ブチッ!

「首がぁあああああああ」

「そりゃね、あの体制から無理に縦回転加えると方向感覚なくなりますよ」
「普通に矢に当たった方が頭から落ちるより痛くなかったんでは?」

石のテラスに頭から突っ込み、大きな穴を開けたsakezukiの足をひっぱりながらタケウマが呆れ声を出す。

「はひはとぉーはへひん(ありがとうタケちん)」

「うん?なんでそんな口調?」
「うぇええええ!口から血っーーーー!」
「てか、舌がここに落ちてますよーーー!!」

タケウマの足元には無残にも自らの歯で噛み千切られた舌の断片が悲しく落ちていた。

「ぎゃぁああああ、おいらの舌がぁあああああ」
「でも、おいら二枚舌だからいいか」

「復活はやっ、妖怪ですかあなたは!」
「さぁさぁ、こっちですよ」

タケウマに引きずられ、二人はテラスを駆け抜けて行った。
塔の上ではルジェとロウが苦虫を噛み潰した表情で二人の方向を目で追っていた。

<あとがき>

RS隠居中のため、執筆活動も停滞しております。
楽しみにしている数少ない読者様には大変迷惑をお掛けしておりますm(_ _)m
更新頻度は下がりますが、続けて行くつもりですので今後ともよろしくお願いします。






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最終更新日  2007年07月11日 15時26分35秒
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