mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2007年12月31日
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【漆黒の世界と赤石物語】


『外伝』

・プロローグ

 今年もソロソロ終わりに近づく12月、毎年のように規則正しくやってくる年末は俺の生活を大きく変化させるような物を持ってきたりやしない。地球はあいも変わらずそれが仕事かというように太陽の周りを回っている。たまには有給休暇でも取ったらどうだい。それとも気づかないうちにたまにはサボっているか?
そんなどうでもいい妄想にふけりながら退屈な授業を聞きもせず、3階窓際の席から何気なしに校庭でハシャグ下級生達の太ももを眺めつつ大切な時間を無駄に過ごしていた。喜ばしいことに、窓から眺める枯葉に生と時間の大切さを心に刻むほどの状況ではないからな。
 下らないと感じる時間の積み重ねが今日も過ぎ去ろうとしている。よくよく考えてみると70年の人生の中で25550分の1を無闇に何もせずに過ごしているのではと虚無感が自分を襲うような時もたまにはあるのだが、そこは健全なる男子高校生。無意味な時間を過ごすのは特権であり、政府官僚が賄賂を受け取るのと同じくらい必然である。ああ、先程の数字はうるう年など考慮していないのであしからず。
 終業の鐘の音と共に俺は今日も体育館脇を通り下校する。それは平安期に陰陽師に指示された牛車のように毎日欠かさずそのルートで帰宅する。理由はただ一ついるはずの無い彼女を探すためだ。

 春先のとある日曜日、陽光がまばゆい光を放ちなんだか虫なみな俺にも春の到来を感じさせる穏やかな一日だった。きっと光孝天皇なら春の歌でも詠んだに違いない春らしい一日だった。

って思いっきり雪降ってるじゃん。思わず太陽暦の採用と地球温暖化をバリューパックにして脳内で文句を言いつつ先日の古文の点数が親にばれていないか恐れつつも回想は続く。
今日俺は休みの貴重な時間を割いて週に5日以上頼まれても来たくもない学校とやらに三顧の礼を誰に尽くされた訳でもないのに朝っぱら来てしまった。もちろん帝の血を引く傑物に春眠を妨げられた訳でもなく、軍師として雇われたからでもない。単なる運動部の応援だ。
 その応援を頼まれた相手は所詮、単なる幼馴染でありとりたてて青春漫画にありがちな恋愛感情などさらさら感じていないのはお互いの共通認識であっているはずだ。もちろん俺は甲子園を目指している訳もなく、当たり前だがまったく同じ顔をした同い年の兄弟など持ち合わせてもいない。単なる幼馴染である。
 その幼馴染がキャプテンを勤めるバスケットの試合はどうやらこの先にある体育館で行われているらしい。と言っても俺たちの通う県立のありふれた高校の体育館には観客席などと気の利いた設備などありやしない。全席アリーナS席のみただし指定席は存在しないがな。当然のことながらそのアリーナには先客がいるため卒業式か合唱コンクール以外では上がることがない舞台に腰を下ろし、健康的とは程遠い有酸素運動に集中するクラスメートと幼馴染に目をやった。

「やぁ、本当に来てくれたんだ」

青い空に喧嘩を売るように黄色の自己主張をする向日葵のような笑顔で俺を迎えた荊州城主は不審な顔をしたチームメイトなど気にもせずこちらに歩み寄る。やはり来るんじゃなかった。どうせまた子供を遊ばせながら井戸端会議する主婦達のごとく暇な女子生徒に明日の弁当の時間の話題を提供してしまったに違いない。

「どうせ直ぐに飽きるわよ、ネタなんてどうでもいいんだからあの子達。それにテスト勉強を教える代わり応援してくれると言ったのはそっちだぞ」
専用のガムを目にしたマルチーズのごとく丸々とした目を大きく輝かせ屈託の無い笑みを零しながら腰に手をやるクラス委員にそんなに目を見開くと目玉が落ちやしないかと心配してしまう。
 確かにそう言った。先週行われた小テストの結果如何によっては親による予備校という名の強制収容所行きが弁護人無しの家庭内軍事法廷で結審されていたからだ。当然のことながら溺れた俺は藁よりも確実に頼りがいのある真面目で有名なクラス委員の幼馴染にすがりついた。そしてなんとか泥舟は沈没することなく岸にたどり着いた。まぁ背中に背負った撒きには火がついたままであることは明白であるがこの時点では最高の結果であろう。

 試合は予想に反して白熱した展開であった。どちらも譲らない気迫を前面に出しぶつかり合っていた。既に部活など等の昔に帰宅専門へとフリーエージェントした俺の中でもなにやら熱いふつふつとした感覚が蘇り、思わず顧問の女教師の前で「先生バスケがしたいんです」などと口に出しそうになる位の衝動が俺を突き動かしそうになるが、残念ながら女教師は白髪鬼などというあだ名を持っていそうにないし、MVPなど小学校のドッチボール以来取ったことのない俺に言われても「とりあえず日本一の高校生になりなさい」などと言うはずもないことは予備校強制収容一歩手前の俺にも理解できる。

試合の結果はどうやら負けちまったようだ。これは結構な問題だ、苦やし涙を隠しながら精一杯の笑顔で顔の前で手を縦にしてこちらを見る幼馴染になんと言って声をかけるべきだろう。少ない経験と知識で5パターン位のシミュレーションをしてみたがどれもうまく行くとは言いがたかった。そもそも少ない経験というのが嘘であった。つまりは涙がこぼれる割に笑顔を振りまくという器用な表情の女との会話など少ない人生の中では遭遇していなかった。しかも、鼻をたらしながら砂場でお団子を作っていた時代から一緒にいたあいつが、俺の作った砂の居城を15センチに満たないピンクの靴で神々の雷がバベルの塔を崩すかのように破壊しても一度も誤ったことの無いあいつが初めて俺に謝ったのである。そんなことは今の今まで一度も無かった。ええーい何とかしろ俺。とにかく何かを俺はあいつに言うべきだ、出たとこ勝負で構うもんか。しかし、部室の前で待つのは構うことにしよう。無闇に明日の昼食の話題を放課後まで続く2時間スペシャルにすることはあいつも流石に喜ばないだろう。春の番組改編は終わったばかりだしな。俺は校門前のコンビニで幼馴染が着替えて帰宅するのを待つことにした。あいつが何時も一人で帰ることは知っている。そして家の近い俺が同じ道で帰る幼馴染と偶然一緒になっても不自然じゃないはずだ。いくらネタに困った新聞部であっても、イギリス大衆紙のようにゴシップネタで発行部数を増やそうなどとは考えないだろう。いい加減立ち読みをする漫画雑誌が尽きてきた頃あいつはやってきた。ところで、日曜日の立ち読みなんて見るものが無くて困る。大抵俺の愛読書は週の前半に発売されてしまう。もちろん全て漫画雑誌であるのは隠しようも無い事実であるのだが。さてどうしたものかと考えていると俺より先に先客がいたようだ。なんと間の悪い俺。まるで冷蔵庫のような極悪宇宙人を待ち構えて戦々恐々としていたがどこからとも無く現れた新キャラに出番を奪われた戦闘民族の王子のような心境で見守っていた俺に更なる驚愕が訪れた。

そう、校門前に意味不明な黒い影が突然現れSFXよろしくと言わんばかりに戦闘をおっぱじめやがった。呆然とする幼馴染と俺。シンクロしたように目を見開き目の前に起こっている現象を理解しようとお互いに脳内CPUをフル稼働させている。残念なことは俺のCPUはいいとこCELERONであり幼馴染はクアッドコアクラスであることだが、この時の俺たちは出来ることならこの信じられない事象を処理分散してしまいたかったはずだ。そして、なんとかこの馬鹿げたSFXもどきな現象が収まりつつあったその最後に俺は一生後悔するような場面と遭遇した。あいつが、あいつを乗せた猛獣もどきが俺の前から一瞬のうちに消えてしまったからだ。俺は箪笥の中の国で悪い魔女に弟を連れ去られたような気持ちのまま時を忘れて立ち尽くしていた。

 俺は今まで見ていたものが何かの間違いであること、いや白昼夢でもいいあいつがまた月に喧嘩を売る明けの明星のような満面の笑みで「何夢見たいなこといってのよ」と笑い飛ばしてくれることを願った。今なら青い甘党猫型未来ロボットの漫画の落ちがメガネ少年の夢落ちでもまったく問題ないとさえ思った。しかし結果はもっと最悪なことであった。

俺のメモリーリーク頻発な脳味噌の永久キャッシュに存在する幼馴染の存在がこの世のから全て無くなっていた。

「いったい何が起きた?」

<あとがき>

本編が進まないにもかかわらず、外伝的な物を書き始めてしまいしかもそれが思った以上に長編になりそうで脳味噌が痙攣をおこしているmikusukeです。
まぁ一人称が書きたかっただけなんですがw
面白くなかったら途中で放り投げてもいいかなと無責任な外伝ですごめんなさい><;





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最終更新日  2007年12月31日 17時56分43秒
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