mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2008年02月11日
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【漆黒の世界と赤石物語】
(Blackworld and Redstonestory)

『外伝』

・第一章

あれから、半年以上の歳月が過ぎていった。
あの信じられない光景が目蓋の裏に焼きついたまま時は過ぎ
脳内でセピア色となった記憶はそれ自体が本当にあったものなのかさえ判別がつかなくなっている。
・・・・・・んなわけない!
明らかにオカシイ、あの後俺は未空の家に行ったそして昔からよく可愛がってくれた

扉を開け数十秒で違和感を覚えた俺はその数分後には彼女の家だったはずの場所を逃げるように走り去った。
それから半年の間に彼女がこの世から存在を消し去られた現実に馴染むように俺の生活は
過ぎ去っていった。
今はそう、明日から始まる冬休み前の教室。
明日から暫くの間、この学校という空間から解き放たれる開放感に満ちた空気が教室に
溢れている。
そして世の中は会ったことの無い奴の誕生日を祝うために交尾時期の源氏蛍のように
無理やり光り輝いている。
そもそも、そいつの誕生日など定かでないのは誰もが知っているはずだし神道国家の
この日本で海外の宗教を祝うなど本当に適当な民族だとこのイベントに関係ない俺は
心の中で叫び続けている。

つい頬は緩んでしまって仕方ないが、今までひがみ続けてゴメンねモテル男達よ。
どうやら俺も君達と同じ世界の住人となるべく日が来たのだフフ。
俺は鞄から一通の手紙を取り出した。
なんの飾り気も無い真っ白な封筒。それを手に入れたのは昨日の夜。

いつもながら地球に優しくない電気の無駄使いをしている街路樹に囲まれた繁華街での事だった。

に彼女は突然飛び込んできた。
ついさっきまでいた気配はなかった、いや今も本当にそこにいるのかと思える程
透き通った気配を持つ彼女は、フード付のコートをかぶりショウウインドウを眺めながら
この寒さの中キャンディーを舐めている。
ウインドウショッピングをしながら食事など、古い映画に出てくる女優位にしか似合わない
と思っていたが、ここにも実在した。銀幕の妖精といった感じではないが、深く被るフード
からのぞく横顔は透き通るような白い肌を僅かに露出し、アンティークドールを想像させた。
俺は彼女に目を奪われたまま、一歩一歩彼女に近づくにつれ身体の内部から押し出される
血液の量がいつもの数倍に膨れ上がるのを感じた。
俺は彼女とすれ違う時にはいったいどうなってしまうのかと心配しつつ彼女の横を通り過ぎよう
としたとき、彼女が不意に首を90度こちらに回した。
音も無く、唐突に首を回したアンティークドールは白い肌に似合うショートカットで
無機質な表情で黒真珠のような瞳をフードの中から俺を観察するように見つめていた。
やべぇ、ガン見してごめんなさい。視姦してごめんなさい。生きていてごめんなさい。
心の中で反省文を50ページ程書き込んだ俺は一瞬足を止めたが、思い切って彼女の横を
通り抜けようとした。
その時、俺の人生の新たなページが始まった。
もちろん、そのページは桃色の俺の頭の中と同じ色に染まった素敵なページである。
そう、透き通る氷の妖精は粉雪の舞い振る中舞い降りてきて、「気をつけて」と俺を気遣い
差し伸べた手にこの一通の手紙を差し出した。
手紙を受け取る俺を確認するとその小さな雪の精は表情を変えないまま雪の街へ溶けるように
俺の前から消えていった。

「で、それがその妖精の手紙ですか」
「うわぁ!突然現れるな、気持ち悪い」
こいつはいつの間にか同級生となっている正体不明の友人、里場だ。
高校生の癖に大人びた口調と長髪がトレードマークの嫌味な奴だ。
「いったい誰に紹介してるのですか?」
まぁはっきり言っていつものこの時期ならこいつが意味も無く腹がたって仕方ないのだが
何故か今日は機嫌がいい。
「そんな事より、変わった恋文ですね」
「うん?そうか、今時古風な妖精さんなのだよ。お前でも羨ましいのか?」
「いやぁ、いろは歌ですよねそれ」
「ああ」
そうなんだ、妖精のくれた手紙にはこう書いてあった。

い ろ は に ほ へ と
ち り ぬ る を わ か
よ た れ そ つ ね な
ら む う ゐ の お く
や ま け ふ こ え て
あ さ き ゆ め み し
ゑ ひ も せ す

それっきりだ、自分の名前すら載っていない。
「ふむ、どうやら彼方に危険が迫っているようですね」
里場はまったく悪びれもせずに俺を不愉快にさせる言葉を吐いた。





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最終更新日  2008年02月11日 21時08分31秒
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