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神坂俊一郎

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Jul 18, 2023
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テーマ: 超能力(49)
カテゴリ: サヴァン症候群



まず、彼の予知が本当に外れないかです。
「あなたのサヴァン予知って、外れないの。」
すると、一郎は少し考えてから答えました。
「まず、その気があるかないかだ。」
その気と言われてもわかりません。
「何の気よ。」
「予知どおりに実現することを認める気だ。」
当然そうなるものと思っているものだと思っていましたが、違うようです。

「僕の予知は、高度な計算によるシミュレーション結果だと考えればよい。どんなに高性能のスーパーコンピューターでもできない演算をこの頭がやる。その結果だ。」
「じゃあ、変えられるの。」
「だから、その気があるかないかだと答えた。」
「どういう意味。」
美奈子には理解できませんでした。
「予知したとおりにする、いや、させる気があるかどうかだ。」
当然、そのとおりになってよいことと悪いことがあるはずです。
「そりゃ、いいことは実現させればいいし、そうなったら困ることはそうさせないでしょ。」
一郎うなりました。
「うーん、そう簡単には行かないのだよ。」
「て言うと。」

それなら、対策を講じたこともあるはずです。
「じゃあ、予知通りにさせなかったこともある。いや、だから、外れたこともあるのでしょう。」
一郎、もう一度考え込みました。
「美奈子は、運命って信じるか。」
これこそ、この夫といっしょにいれば、信じざるを得ないことが多すぎます。

「そう簡単に割り切れればいいが、絶対こうなって欲しくないと思ったことについては、さまざまな対策を講じた結果、その事態だけは避けられたものの、その後、余計ひどい結果となったこともある。」
それなら、下手に変えない方が良かったことになります。
「じゃあ、変えなかった方がいいわけ。」
「僕の経験から言えば、大したことでなければ、むしろ変えない方がいい。」
「運命には逆らわない方がいいってこと。」
「そうとも考えられるが、大したことでなければ下手に変えない方がいい。しかし、絶対変えたいこともあるだろう。」
そりゃあ、ひどいことなら何としてでも変えようとするはずです。
「当然よね。」
「変えることは、できないことはない。」
何か、持って回ったような言い方です。
「できるんでしょう。」
「できるが、変えたらどうなるか、そちらから考えて行かないと、とんでもないことになりかねないんだ。」
よくわかりません。
「どういうことなの。」
「よくSF小説なんかにあるが、タイムマシンで過去を変えたら、未来がめちゃくちゃになるって感じかな。」
「過去を変えるんじゃないでしょ。」
「そうだが、そうなると決まっている未来があったとしたら、僕が変えようとじたばたするのは、予知によってその未来を知ってしまったから、それを変えようとするのと同じことで、結果は、タイムマシンで過去を変えるのと同じことになるわけだ。」
考えるのが面倒になった美奈子は、あっさり降参しました。
「じゃ、どうすればいいか教えて。」
「そうだな。実例で説明しよう。当事者も居ることだし。」
当事者も居ると言われれば、一郎と美奈子しかいません。
「あなたか私しかいないじゃないの。」
「そりゃ、美奈子に決まっている。」
「えーっ、あなた私の運命書き換えたの。」
そうなります。
「そう。美奈子、下手したら32歳で死んでた。」
確かに、32歳の時に、子宮筋腫破裂で死にかけました。
「そうよね。あなたが救けてくれたのよね。」
お腹が痛くなって、わっと出血して、どうしよう、動けないとなった時に、仕事に行ったはずの彼がひょっこり戻って来て病院に運んでくれて命が助かったのでした。
「あれは、イギギ様がどうするって聞いてくれたからできたことなのだが、実は、美奈子が死ぬ可能性があることは最初から予知していた。」
それは初耳でした。
「えーっ、あなた妻が死ぬこと予知してたの。」
「誤解はしないだろうが、そうなって欲しいと思ったことはない。」
強いと言うのか、他人が不幸になることは許せない夫ですから。それは信じられます。
「そうよね。あなたには、悪意というものがないから。」
「イギギ様に聞かれた時、ああ、こりゃ美奈子の命が危ないなとピンと来た。」
「だから、仕事ほっぽり出して帰って来たのよね。」
近所だからできたことですが、普通なら妻から連絡もないのに、仕事を放り出して帰って来ることはありえないでしょう。
「そう。その時、イギギ様は最初、「お前は放っておいたら78歳まで元気に生きるだろうし、妻の美奈子が死んだら死んだで、再婚してそれなりに幸せに暮らせるだろうが、自分の命を削って妻を助ける覚悟はあるか。」と聞かれた。」
自分の選択で他人が不幸になるのは絶対我慢できない強さを持っている夫なら助けると答えるに決まっています。
「あると答えたのよね。」
「そう。それで、イギギ様がそんなことを聞くと言うことは、美奈子の命が危ないのだろうから、助けに行った。」
「そうよね。」
「うん。でも、その時に考えた。」
「何を。」
「78+32÷2はいくつだ。」
78と32から、寿命のことを意味していることはわかりました。
「55ね。」
「そう。まず、二人とも55歳で死んでも困らないようにしようと考えた。」
確かに夫は、その頃に二人とも死んでも子供たちが困らないように、保険だけでなく、不動産投資やいろいろな対策を講じていました。
「いろいろ考えていたのはわかるわ。」
「もう一つ考えた。むしろ、こちらの方が大切だ。」
「えっ、何を考えたの。」
「今現在の、つまり僕が66歳で、美奈子が64歳でも元気に暮らしている未来のビジョン。」
何故そちらの方がれが大切なのか、美奈子には理解不能でした。
「何故そちらの方が大切なのか、わからないわ。」
「これ、メンタルトレーニングの目標設定の原則でもあるのだが、遠くのあらまほしき未来をまず設定し、そこから今現在までの道筋を描いて行くんだよ。」
「それが何故大切なの。」
美奈子はまだ理解できませんでした。
「運命というか、僕の予知は、下手に変えるとかえって悪くなったって言っただろう。」
「そうね。」
「それって、目先の問題だけを解決してその後を考えなかったからなんだよ。」
でも、人間のレベルではそんなものではないでしょうか。
「それ以上って、考えられるのかしら。」
「だから、ずっと遠くの未来の理想像を先に描いてやれば、単純に目先の問題を回避するだけでなく、その先の道筋も何となくわかってくるってわけ。」
そう言われるとわかるような気はするのですが、そんなことが可能だったのか、そちらの方が疑わしいと思えました。
「できたの。」
「できたからやった。しかし、とりあえず66歳の今現在までだったな。流石にそれ以上は34歳の時には考えられなかった。」
夫が34歳、私が32歳で死にかけた時ですから、当時からすれば34年後の未来を描いたわけで、流石にそれ以上は無理だったということも理解はできました。
「よくできたわね、としか言いようがないわ。」
一郎、美奈子に確かめました。
「美奈子は、あの事件が起きる前に、僕が何と注意したか、憶えているかい。」
美奈子、ひどいことを考えていたことを思い出しました。
「もしかして、当時の私、人妻なのに何だかもてて、「そんなひどい母親がいる夫とは離婚して俺と結婚してくれ。」なんて真面目に頼む変な男も居たから、あなたと離婚して他の人に乗り換えたら、あの母親から逃れられるって考えたことかしら。」
当時の美奈子、年齢よりも若々しくて美女でしたから、本当にもてたのです。
「そう。その通り。まあ、そこまでは言わなかったが、考えていたことはわかったから、「悪いことは考えるな。」と注意した。」
「すると、私が死にかけた。これって、因果応報といえばそれまでだけど、あなたの鏡のスタンドと考えられないこともないわよね。」
夫は、他人の悪意をそのまま、いや、時として何倍にもして返すのです。
「鏡のスタンドは、僕自身はあずかり知らぬ超越した反撃能力だし、美奈子は、僕が死んだらよいと思ったわけではないから違うな。」
「そう、よね。」
確かに、離婚できたらどうかなとは考えたものの、夫自身をどうこうしようと考えたわけではありませんでした。
「美奈子は、自分自身ではわかっていないかもしれないが、悪いことを考えると、そんな自分自身を罰するように物事が動くんだよ。」
確かに美奈子には正義の味方と言うか、そんなところはあったのです。
「私って、確かにてんびん座そのもので、正義の審判みたいなことを、自他に課していたかもね。」
「元に戻ると、僕の予知は、変えられないことはないが、変えるのは大変だというわけだ。」
「ようやく理解できたわ。でも、あなたって、そんな私の不埒な考えまでわかっていたのに、よくそのまま私を妻にしていられたのね。」
普通の男なら、不貞を考えるような妻が死にかけたらこれ幸いと放置するか、助けても離婚するかを考えそうです。
「ああ、妻は美奈子しかいない。それも、サヴァンの予知だからね。」
美奈子、もう一つの疑問をぶつけてみました。
「今後はどうなの。」
「それだが、最近は全然予知しなくなった。脳が衰えたからかもな。物忘れもひどくなってきたし、目も少し見えにくくなってきたし。」
「私の方が見えないわよ。」
確かに夫は、66歳で仕事をリタイヤしてから特に、「何をしようとしてたんだっけ。」と言うようにはなってきましたが、老眼鏡がないと本も読めなくなってきた私と違って、彼は老眼鏡なしに読めますから、まだはるかに目がいいのです。
「目は、いや、目も、昔の物凄い視力の賜物で衰えてもまだ見えるのだろう。大体、眼科のお医者さん、僕の目の中見て、「ほんとに見えているのかい。信じられない。」っておだやかならぬことを言うんだよ。」
夫の場合、肉体的にも異常なぐらいの肺活量のお陰で、肋骨6本折れて右肺が死んでも平気でしたし、イギギ様のお陰の母の虐待で死なないで済む強靭な肉体以上にいろいろな点で超人的なのです。
それに、悪意がない、つまりは、人を恨むこともない。その分純粋に論理的、いや、合理的かつ功利的にものを考えるのです。
私なら、普通の幼児だったら絶対死んでいたぐらい散々虐待して、その上に、無駄遣いしまくって金がなくなったら3人の子供たちにたかりまくって、自分は全然悪くない、全部一郎が悪いなんていう母親を恨まないことの方ができません。
彼に聞くと、「そんな風に考えたことも無かったが、恨んで何かいいことあるかい。」って答えが返って来たのです。
そんな彼だからこそ、浮気じゃないものの、義母と縁を切りたいがためだけに離婚して、子供たちも放り出して、おさらばしようとした自分勝手な妻に対してもなんとも思わなかったのでしょう。
「あの時私と別れなかったというか、私を何も言わずに許してくれたのは、サヴァンの予知のお陰だったの。」
すると彼、変な顔をしました。
「僕と別れて、何かいいことあるかい。」
うーん、単純に、非常識を通り越して、やくざの佐々木氏をして、「俺のおふくろだったら、ぶっ殺してる。」と言わせたほどの義母との縁を切りたいと思っただけだったのです。
「うーん、お母様とは縁が切れる。そう思っただけだったかしら。」
すると、笑いながら彼は説明してくれました。
「さっきの話と同じなんだ。単に目先の問題から逃げようと考えると、さらにひどいことになる。僕がそこまで考えなかったと思うのかい。」
そういえば、あの時ちらっと、私と娘の命がかかっているって言ったような。
「どんな予知したのよ。」
「僕と離婚して、確かに母との縁は切れただろうが、子供たちとの縁は完全には切れないし、美奈子は由布だけは連れて行く気だっただろう。」
確かに、結婚してくれって言ってきた男は、娘一人は面倒見ると言ったので、次女の由布は連れて行くつもりだったのです。
「そうね。」
「あの男に、美奈子と由布の面倒を見られる甲斐性があると思ったか。いや、まず自分自身の面倒もだ。」
調子の良いことばかり言っていましたが、確かにできそうにはありませんでした。
「ないわよね。後から思えば、他の人妻3人をはしごして、詐欺師みたいな男だったもの。」
「僕は、離婚して彼と再婚したものの、どうしようもなくなって、由布も巻き添えにして無理心中するあの男の姿が見えた。だから、絶対これはだめだと思った。」
一郎は感情に欠陥のある人間ですが、大変合理的でもあり、何よりも命は大切にするのです。
ですから、私と由布の命がかかっているとなれば、いや、彼斎藤清喜の命もかかっているとなれば、絶対実現させないし、そこには彼自身の薄っぺらい気持ちなんて介在しないのです。
「そうよね。あなたは強いものね。」
「そういう決断には、僕自身の意思は存在しない。」
確かにそうなのですが、それって、人間業ではありません。
「まず、人間的ではないわよね。」
「そうだろうな。サヴァンの予知だって、人間的な事柄にしばられていてはできない演算なのだよ。」
そう言われて初めて彼のサヴァンの予知メカニズムが少し理解できた気がしました。
「そうか。あなたが予知する時には、あなた自身も存在しないわけね。」
「そうだな。そうともいえる。スーパーコンピューターが演算する時、この人間がどうとか、こうなって欲しいとか、こうなったら困るなんてことは一切関係ないのと同じだろう。」
なるほど、だから彼のことを、冷たい、非人間的、人情を解さない、KYを通り越して気分を読まない、なんていろいろな悪口を言う人間も出てくるのです。
しかし、そこで下手に彼の悪口言うと、彼自身とは一切関係なく神罰がくだるのですから、良くできています。
「今の説明で、ようやくあなたのことがわかってきた気がするわ。」
彼は呆れていました。
「44年一緒に居てようやくわかったか。」
私は、頭は悪くないし、彼よりもずっと気が付くけど、特別製ではありません。
「あなたみたいな超天才ではありませんからね。」
「いや、それでいいんだ。美奈子が僕みたいな人間だったら、結婚していない。」
私と結婚する時、いや、迷うことなく私を伴侶に選んだ時、彼は、それも予知だと言いましたが、彼の予知は高度な演算に基づくものなのであれば、物凄く合理的な決断だったはずです。
「私と交際する時、摩耶美紀子さんと別れたわよね。」
そのことは、思い切って交際イコールプロポーズとなるお願いを私がした時に、彼から聞いていました。
「そうだな。」
「美紀子さんって、あなた以上のサヴァンだったわよね。」
「そう。彼女には負ける。」
「しかし、幸せにはなれなかったのよね。」
私としてはそう解釈しましたし、夫もそう思っていたようでしたが、反対意見も出してきました。
「何を持って幸せと言うか、だろうな。彼女は、42歳の短い人生の中では、信じられないぐらいの業績を成し遂げた。それだけを考えれば、幸せだったとも言える。」
確かに夫の言うように、生物化学、薬学からスタートして、最後は何故かデベロッパーのようなことを本業にして、それぞれ成功を収めて行ったのですから、幸せだったとも言えるでしょう。
「でも、私なら夫と子供とのありふれた家庭生活の方がいいな。」
「僕は、変な両親のお陰で、最初からそう思うことができた。その上で、最初から最後まで現場で働いて、法律から、教育、電気工学、対外折衝と、大学での専攻とはほとんど関係ないてんでばらばらな仕事をすることができて、その傍ら、夫と父も不十分ながら務めることができた。だから、ささやかかもしれないけど、幸せな生活を選択できたわけだ。」
変人ですが、まあ、いい夫なのでしょう。
「結果オーライっていうか、私と子供たちも、あなたの予知のお陰で幸せだったって言えるかしら。」
「幸せとまでは言えないが、平穏な人生を送れるように配慮した。逆にそれができたのは、サヴァンの予知もあるが、両親の愚行の経験を繰り返さないようにしたことでもある。」
それを思えば、離婚してでも縁を切りたいと思った義母のお陰でもあったということです。
「お母様も、少しは役に立ったのかしら。」
「そうだな。「今晩食べるものないの。」の情けない話も、食べ物を感謝することにつながったし、「このフォークとスプーンがあれば、食べ物には困らないの。」って笑い話も提供してくれたし、自ら不幸な人生を実践して、息子一家の幸福な生活を導いたと考えて感謝しておけばいいだろう。」
人を恨まないこと、私には難しいことなのですが、夫には、人を恨むこと、の方が、できないし、信じられないと言います。
運命が導いたとしか言えない結婚でしたが、夫が言うには、最善の結果を導くきっかけとなった結婚ですから、あと何年続くかわかりませんが、平穏無事に過ごせるように、神様、イギギさま、座敷童さまにお願いすることにしましょう。

とりあえず、終わり。

画像は、庭に咲いているとてもいい匂いのするハーブのベルガモット。今年は私一人がおなかいっぱい食べられるぐらい実ったスモモ、種から育てたら開花した白花桔梗とシュウメイギクです。












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Last updated  Aug 15, 2023 01:23:15 PM
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Yoko@ Re:ヤマトタケル異聞1(09/21) ずうずうしくリクエストをしたYokoです。 …
Yoko@ Re:ヤマトタケル?2(04/19) 21日のご返信に気が付かず、ご返信せずに…
神坂俊一郎 @ Re[1]:ヤマトタケル?2(04/19) YOKOさんへ アメーバブログも確認したら全…
神坂俊一郎 @ Re[1]:ヤマトタケル?2(04/19) YOKOさんへ 既に発見されたかも知れません…

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