実際、ホンダは04年に初めてタカタ製インフレ―ターの異常破裂を認識していました。「吸湿過多」(インフレーターの製造工程でガス発生剤への吸湿過多)による不具合が存在することを07年につかみ、08年11月に4200台という少量の01年モデルの「アコード」と「シビック」をリコールしています。
しかし、「パーハム事故」を契機に新たな原因が疑われ始めます。この段階ではホンダは原因特定できませんでしたが、想定しうる範囲の段階的なリコールを実施し始めます。その後、生産設備の「加圧不足」(ガス発生剤の製造工程でプレス圧力不足)と原因が特定でき、11年までに米国を中心に合計270万セットの運転席エアバッグリコール実施にうつりますが、不幸なことに、この段階での異常破裂による米国死亡者数は合計3人に拡大していました。
13年に入り、製造工程の問題が拡大し、「誤組」(ガス発生剤の装着不足)、「吸湿過多」、「加圧不足」を理由に助手席側エアバッグの大量リコールへ発展します。13年4月に約500万セット、14年6月に520万セットとホンダ、トヨタ自動車、日産自動車なども巻き込んだ大規模なリコールに発展しました。ただし、ここまでの問題は一定期間の製造工程に原因が特定されていたのです。
しかし、問題は複雑化し始めます。14年になって、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、多湿地域での不具合が複数の自動車メーカーで発生していることを問題視し、原因の特定はできないがリスクの高い4地域(フロリダ南部、ハワイ、プエルトリコ、バージンアイランド等)での原因追及を目的とした調査リコール(米国固有のリコールシステムで、メーカーが自主的に車両を回収し不具合の原因を突き止める措置)をホンダ、トヨタなど7メーカーへ要請します。12月3日の米下院公聴会では、タカタは自動車メーカーが実施する調査リコールへ協力するものの、自社による全米規模のリコールは拒否し、「欠陥調査が未終了の段階での要請に当惑する」と科学的な原則論を貫きました。米国メディア論調を見る限り、タカタの企業としての信頼性は失墜しているように映ります。原則論としてタカタの主張には一理ありますが、クルマは移動する製品であるうえ、実際、多湿でないノースカロライナ州で問題が発生している以上、科学的に原因がわからない段階でも、積極的な対応を示さなければ、「後ろ向きだ」との批判はあるでしょう。
国内では、既に279万台のリコールが届け出されています。国土交通省は、米国公聴会の結果を踏まえ、国内でも米国と同様な調査リコールの措置を指示しています。各社はそれに対応する方針であり、今後もリコール対応が続く公算が大きいでしょう。加えて、解体中のカローラに搭載したタカタ製エアバッグが破裂したことを受けて、トヨタが予防処置としてリコールを追加公表しました。問題は一段と複雑化してきました。
インフレーターの不具合の原因は、(1)「誤組」(ガス発生剤の装着不足)、(2)「吸湿過多」(インフレーターの製造工程でのガス発生剤への吸湿過多を原因とする)、(3)「加圧不足」(ガス発生剤の製造工程でプレス圧力不足)、(4)「多湿地域」(原因究明中の多湿地域での破裂頻度の高さ)の大きく4点に整理できます。
タカタのインフレーター問題は、もはや一部品メーカーの問題ではなく日本の自動車産業の危機にも等しいのです。国内産業全体の問題として早期に解決策を見出すことが求められます。日本車の「安心」と「高品質」というブランド価値は著しく毀損を受けています。安全の最終的な責任を問われるのは自動車メーカーなのですから。
トヨタは公聴会に立ち、第三者機関の調査を通じ、修理の必要なインフレーターを正確に特定し、迅速に修理する体制を提案しました。業界リーダーのトヨタがようやく重い腰を上げた格好ですが、やはり、頼りになる存在です。経験もあります。
クルマは先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システムのようなエレクトロニクスとITを駆使した新たな安全装置の時代に向かっています。緊急ブレーキなどはエアバッグと同様、急速な普及が予測されます。サプライヤーと自動車会社がいかに協調しながらクルマの安全性能を確立していくのか。タカタのインフレーター問題は、今後のシステム開発とクルマのトータルな安全のバランスをどのように維持すべきかという重大な議論を生むことになるでしょう。
出典: http://www.nikkei.com/article/DGXMZO80641690Y4A201C1000000/?dg=1
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