最近はウエアラブル端末(身につける腕輪型などの機器)のおかげで、自分の運動量や睡眠の質がよくわかるようになった。「ここ数日間は、1日1万歩がクリアできていないな」といったことばかりでなく、他人のデータが集められることで「同年代のグループ平均に比べたら、まだ運動している方だな」などといった事実もよく見えるようになった。
だが、今のところウエアラブルが示してくれるのは結果としての数字でしかない。ないよりはましだが「ステップ数が足りないから、もっと歩こう」くらいの考えしか浮かばないだろう。
一方、カナダのスタートアップ、キンダクトが開発しているスポーツと健康管理のプラットフォームは、もっとデータが手に入るようになると「ここまでできるのか」という究極を見せてくれるものだ。
プロのスポーツ選手向けのデータ分析ツールで、運動量、運動成績、心拍数、栄養、飲んだ水の量、ストレスの程度などから選手の状態を分析し、最適の食事やサプリメント、トレーニング方法などを導き出す。
ただ数字を眺めて一辺倒な対処しかできない現在の我々のウエアラブルと比べて、データを基にどんな行動を取ればいいのかといったところまでアドバイスしてくれるところが異なっている。
キンダクトが利用するデータは、ウエアラブルが検知できるものから、食事などの摂取記録、運動前後の心拍数、医師による筋肉などに関する検査結果、気分など多様なものだ。1台のウエアラブルだけでなく、身体に関して入手できる多くのデータを使うのだ。
さらに選手のトレーニング記録や成績などの数字も積み上げていく。データがたまればたまるほどに、より的確な行動アドバイスができるようになる。
このプラットフォームを利用すると、円グラフや棒グラフで選手の状態が一目で把握できるようになる。チーム管理者が個々の選手の様子を把握できるのが利点だ。ここから、選手とコミュニケートしたり、チーム全体の健康状態を管理したりすることができる。これまではコーチの経験や勘に頼ってきたことも、コンピューターが分析し整理してくれるのだ。
このツールは今、ドジャースを含めて、アメリカの野球やバスケットボールのプロチームが利用しているという。高校のスポーツ選手用に使われた例もある。さらに、一般企業でも社員の健康管理をするために利用することもできるという。
だが、これは個人の健康管理の将来像でもあるだろう。今はステップ数や運動量、睡眠時間しか測れないが、そのうちもっと多くのデータをわれわれは取得するようになっているはずだ。
あるいは家庭で、こんなプラットフォームを走らせて、家族それぞれに合った適切な栄養や運動のタイプなどがわかるようになるのではないだろうか。今、われわれが利用しているウエアラブルは、そんなデータによる健康管理の、ごく初歩的なものにすぎない。
考えてみれば、データは眺めるだけではなく、そこから行動を促してくれてこそ意味がある。ウエアラブルは「計測された自分(クォンティファイド・セルフ)」への自己意識を高めたが、これからはそれを「行動する自分」へとつなげてくれるのだろう。
出典:http://www.nikkei.com/article/DGXKZO09176010U6A101C1H56A00/
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