<ファンドマネジャーがなぜパソコンは作るのか?>
ファンドマネジャーという職業上、常に最新の技術を取り入れたものに接し、何が変わって、どうなったからこの先に何が見えてくるのか、ということを肌で感じていたいと思っています。だから最低でも年に一回はパソコンのリニューアルをしています。その位の頻度で技術トレンドは変化しているからです。
ただ総てのパーツをその頻度で変えないとならないかといえば、答えはNOです。時にそれはMPUであり、時にそれはチップセット(マザー・ボードの交換となります)だったり、或いはグラフィック・ボードなどの主要パーツだったりしますが、時にBlue-rayなどの光メディア・ドライブのような周辺パーツだったりもするからです。メーカー製のパソコンの場合、特注マザー・ボードやコネクターを使っている場合が多く、とりわけMPUの換装という主要パーツの交換だと丸ごと買い換えることになります。それでは無駄な投資がかさむだけです。
<決してアキバ系ではない!......つもりですが>
私はアキバ系ではないつもりですが、家の間取りと比べても、家族数から考えても、どう考えても我が家のパソコン総数に経済合理性はありません。一見無駄に多いです。ただ自作ならば前述のように興味のあるパーツだけを取り換えることができ、また複数台のパソコンがあれば、その際のメインテナンスやバックアップも楽にできます。当然、取り換えないパーツもあるということは、その新パーツを交換したことによる限界的な変化をきちんと体感できるというメリットがありますし、横展開して使い回しができます。
簡単に言うならば、メモリーを増設した時を想像していただければ、なぜそうして頻繁に組み替えるかという意図は解り易いと思います。メモリーを増設すれば、恐らく「あ、なんか早くなった」ということを誰もが体感されるでしょう。ただもしパソコン丸ごとスペックが上がるように買い換えていたらば、何の効用(どのパーツの性能向上)によってそれが実現したのか解りません。他のパーツはそのままにして、特定のパーツだけを交換するからこそ、その効用がはっきりと特定できるわけです。
<副次効果もあります>
更に言えば、それら無駄な数のパソコンを有線と無線のLANで繋ぎ、NASやリモート・プリンターなど使っていますので、自宅のネットワーク環境はちょっとしたSOHO並みになっており、当然その保守メインテナンスは自分ですから、多少はネットワークに関する知識も身につくというものです。今現在はたまたまありませんが、以前はFedora Core5というLinuxベースのOSを利用したサーバーを立てていた時もあります。これも大変勉強になりました。
<今回組み替えたパソコンのマザー・ボード。ネットブック・パソコンのEee PCで一躍有名になった台湾企業のASUSですが、マザー・ボードのメーカーとしては古くからとても有名です。中央と、右上にロゴマークが見えます>
<Windows 7がやってきた>
さて、そんな我が家に、ようやく先週末(11月8日)、Windows 7をインストールしたPCが仲間入りをしました。というより、やっと私が新しいパーツを購入してきて、主要なパーツを入れ替えるつもりになったからなのですが、Windows Vista登場の時は、ネットで先行予約までして、更に発売日にはパソコン・ケースまで含めて総て新しくするという盛り上がりだったのと比べると隔世の感があります。今回は発売から2週間以上も間を空けてしまいました。
もちろん、仕事が忙しくてパソコンの自作なんかしている時間がなかったからという言い訳もありますが、残念ながら、私のような立場で、前述のようなモチベーションのある身でも、発売からこれだけ間を空けてしまうあたりに、今のパソコン業界のひとつの現実があり、「Windows 7はマイクロソフトを救えるか?」という当然の疑問につきあたるわけです。
<Core i7もやってきた>
とはいえ、今回の遅れた理由にはもうひとつ大きな理由があります。それはハードウェアの大きな世代交代があったからという理由もあります。"Pentium(ペンティアム)"というインテル製MPUのメジャー・ネームが脇役に回り、"Core(コア)"という名前が冠されたMPUが主役になってほぼ3年間が経過しましたが、同じ"Core"という名前を冠したMPUでも、"Core 2 Duo"と呼ばれる主力製品は読んで字のごとく、2つ(Duo)のコアがひとつのMPUパッケージの中に入っているもので、現時点では更に4つのコアをひとつのダイに載せた正真正銘の"Quad Core(クアッド・コア)"である"Core i7"が主力になりつつあるからです。
こうした話は是非「検索:intel ロードマップ」などとして、インターネットでご自分でもその流れを調べてみていただきたいのですが、今回の私がリニューアルの対象にしたパソコンは、正にWindows Vistaの登場に合わせて組み替えた当時の最新型"Core 2 Duo"搭載のパソコンです。これに当時と同じ程度の値段で買える"Core i7 860"という型番のMPUを搭載してみて、この3年間で何がどう変わったのかを体感しようというのが今回のリニューアルのコンセプトです。
<マザー・ボードも入れ替える>
本当はMPUだけを換装したかったのですが、今回の世代交代ではそれができません。実はあまり知られていないかも知れないのですが、今回はMPUの世代交代だけでなく、チップセットの世代交代も同時期にあり、これに伴ってかなり多くの基本仕様が変更になっています。インテルの7-9月期決算の発表とそのガイダンスの中で、プロダクト・ミックスの改善でASP(平均販売価格)が上がるという説明があるのですが、その意味するところは、この辺にもあるわけです。故に、今回はマザー・ボードも入れ替えざるを得ません。
<MPUが8つになった?>
詳細は次回に、というより、まだ組み替えてから殆ど使用時間もないため、だからどうだというコメントは今回はまだできませんが、下の写真をご覧いただくといかに今回のシステムに期待が寄せられるかということが分かります。それは、前述したとおり、MPUのコアは4つのはずなのですが、Windows上で認識されているコアの数はその2倍の8つです。
これは仮想的にOSから見てコアの数を倍に見せることのできるHyper-Threading Technologyというもののお陰で、これが実装されたがために、実際には4つのコアがOSからみると8つのコアを搭載したパソコンというように見えるわけです。そして前評判通りならば「重い、重い」と言われたWindows Vistaに比べて、今回のWindows 7は軽くなったと言われています。OSが軽くなって、MPUの数が増えたとするならば......。その期待値は嫌が上にも高まります。
次回は2週間使ってみた印象も含め、ネットブックPCとは違った、デスクトップ・パソコンの最新事情から見えてくる投資判断のヒント、のようなことをお伝えしたいと思います。
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CEO兼最高運用責任者 大島和隆
(楽天マネーニュース[株・投資]第62号 2009年11月13日発行より) ==========================================================