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2009年08月22日
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 ネリュートは保持と沙理菜を自分の部屋に通すと「本来なら、いち下士官が知るべき内容じゃないのだけど」と前置き、九十九についての説明を始めた。
「アルバールとの戦争が七十年以上続いているのは知っているわね?」
「あ、はい」
 さすがに当事者の一人である沙理菜は知っていて当然なのだろう。しかし保持は簡単に聞かされただけで、詳しくは知らない。
「まぁ、ここまで戦争が長引くと、お互い辛いわけ。そこで停戦に向けての折衝が始まってはいるのだけど、ね。でも、正直あまり上手くいっているとは言えないわ。サンクロバにもどれだけ疲弊しようとも徹底抗戦を貫きそうな輩は多いし、アルバールにしてみれば、あと少しで勝利が見えているものね。でもアルバールにも反戦主義の人間は多いわ。それは軍部の中にも」
「つまり、彼はその反戦派で、彼らとの連絡要員である……と? しかし――
 沙理菜の深読みにネリュートは満足そうに頷いた。
「そういうこと。いくら友好的とはいっても、手の内全てを晒すわけにはいかない。だから誰かつなぎが必要なわけね。それが彼」

「彼はアルバールの猛将ベルソード元帥の四男だから?」
「えぇ。ベルソード提督といえば、アルバールの左翼大隊の要、その息子がサンクロバに亡命したなどあっては……」
(九十九も何かあるとは思っていたけど……)
 どうやら、保持の知らない所で、色々あるようだ。いや、今現在の保持の周囲の状況からして、保持時真意は分からない事だらけなのだ。
――それは保持自身の事についても。
「う~ん、大丈夫なんじゃない? ほら、四男だし、長男よりははるかに自由に出来るでしょう」
「何を根拠に……まぁ、私が関知すべき事柄ではないのでしょうが……」
「またまた……王族会議じゃ、アルバールとの和平の人質として、彼との婚約という議題もあがっているんだから」
「……誰がです?」
「誰って、サリーに決まっているでしょ? 彼女達からしてみれば、あなたは体の良い駒だもの」
 これには保持も衝撃を受けた。そんな微妙な立場の沙理菜に告白などして、彼女を困らせてしまった事が恨めしい。

「あら? 顔はいいじゃない? 結構うちの乗組員の間でも人気よ?」
「顔とか、そういうことじゃないんです。彼の人柄が問題なんです!」
「じゃ、保持君。親友として彼はどう?」
「えっと、どうといわれましても……そりゃ、僕なんかと友達になってくれるんだから、悪い人じゃないと思いますけど」
 その事については、感謝しきれない――と言うのが保持の正直な感想だった。

「サリー? それはアナタもでしょ?」
「う……」
「彼にそういう疑いを向けるのなら、あなたも同じ思惑で保持君に接していた、という疑念にも繋がる事になるのよ?」
「私は! そんな……」
「そうよね。見事に任務放棄はするわ、作戦妨害はするわ……謹慎までもらってね」
「……クッ……」
 沙理菜は言い返す言葉が無いのか、そのまま俯いてしまった。
「彼もそうでしょう? 彼が保持君を懐柔し、アルバールの益につなげようとするのなら、その機会はいくらでもあったわけでしょ? 保持君との距離を取っていたあなたより、親友という地位を得ていた彼ならね。でもそうしなかった。そして今度はわざわざ脱走まで手伝って……」
「……はい……」
「わかったら、早速謹慎ね。ちょうどいいわ。あなたはここで謹慎なさい。あなたとは少し難しいお話をしなくちゃいけないしね。保持君の方は、もうじき九十九君が解放されるはずだから、そっちで謹慎ね」
「な! それでは――」
「慌てないの! そこで保持君、君に極秘任務よ」
「は、はい、なんでしょうか?」
「九十九君の監視任務。なにか不穏な動きをしたらすぐに通報すること。いいわね?」
「は、はい……」
「それと、サリーと九十九君の婚約話だけど、あれは私と母上で議題をつぶしておいたから。でもそんな力技で黙る方々じゃないから、たぶん後で直接何か言ってくるとは思うけど、いちいち相手にしない事。いいわね?」
「……了解しました」
「じゃ、解散。といってもサリーはこのままここで謹慎ね」





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最終更新日  2009年08月23日 20時53分49秒
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