Mの部屋ブログ

Mの部屋ブログ

PR

×

バックナンバー

2026年10月
2026年09月
2026年08月
2026年07月
2026年06月
2026年05月
2026年04月
2026年03月
2026年02月
2026年01月

キーワードサーチ

▼キーワード検索

プロフィール

輝絽リスト

輝絽リスト

サイド自由欄

設定されていません。
2009年08月22日
XML
      6

「保持君、保持君のことをタモリンって呼んでいい」
「……あの、もう少し別な、呼び方を……」
 さすがにタモリンは恥ずかしい。
「じゃ、タモタモ?」
 このままでは変なあだ名がついてしまう。かといって「僕の事は**って呼んでくれ」と自分から言うようなキャラじゃない。おそらくそんな事を言うぐらいなら、タモリン呼ばわりを容認するだろう。
「う~ん、何かないかしら? アイちゃんが“たー君”じゃない? それに匹敵する愛称を見つけないと!」
 どうやら、対抗意識があるようだ。
「あ、あー、それより、ご飯を食べに行くんじゃないんですか?」

 保持はネリュートの「私と楽しい事、しにいきましょ?」という謎の言葉で拉致され、食堂に向かっていた。
 地球よりも技術が進んだ最新鋭の戦艦ということで、艦内の移動も転移装置によって一瞬で――ということも無く、移動は基本徒歩である。運動の為という意味もあるらしいが、ネリュートの説明では、個体単位の転移には、まだまだ技術的な問題が多いらしい。
(でも……確かにご飯を食べるのは基本的に楽しい事だけど、それならそれで別の言い方をしてくれた方が精神安定の為だよな……)
 超絶美人なネリュートに妖艶な言葉で迫られれば、変な気持ちになってしまうのはしょうがないのだ。
アイちゃんがいればこんな見え透いたネリュートの策謀など看破しただろうが、自動防御機構の宿命である稼働時間の問題から、普段はいざと言う時の為に具現化せず充電しているらしい。
「……何か暑くないですか?」
「そう? ほら、保持君厚着しているからじゃない?」
 確かに厚着をしているといえば、厚着をしているのかもしれない。しかしそれはまだまだ肌寒いこの季節、上にコートなどを着れば外も出歩ける、という程度の厚着であって、着膨れているわけではない。
(そうだ。他の星出身のネリュートさんとは感覚が違うのかもしれない)
 深く考える必要などない。暑ければ脱げばいい。寒ければ着ればいい。郷に入っては郷に従う。それが一番だ。
「ここが食堂よ」

「え? あ、あぁ、ちょっと早い時間だからでしょ。いいから入って入って」
「でも、電気が消えている早い時間なら、まだ準備中じゃ……」
「いいの、いいの。艦隊司令官たる私が許可しているの。問題なんて無いわよ」
 俺がルールだ的な自己中な発言ではあったが、艦隊司令官になるほどの人物で戦艦の中という閉鎖された密室空間という条件が揃えば、そういうことも有り得るのかもしれない。
 そのネリュートが入れと言っているのだ。従っておくに越した事は無いだろう。

 しかし冷凍マグロよろしく瞬間冷凍された保持の脳味噌では“ようこそ 棚加保持君(ハート)”という横断幕を見てもまだ、この状況を把握しきれていなかった。
「ようこそ~ 保持君~ッ! 私達サンクロバ第一艦隊旗艦メビルスの乗組員一同、大歓迎しちゃいま~す」
『しちゃいまぁ~すぅ』
 一斉に飛び出してきた水着の女性達に、保持は思わず後退りしてしまう。だが保持の後頭部になにやらひどく気持ちのいい、危険な柔らかさをもった物体に阻まれた。
「ほらほら、保持君、みんなが保持君の到着を歓迎してくれているのだから」
 ネリュートは胸の谷間に保持の頭を抱いたまま、水着美女軍団の中に突進を始める。
 十戒のモーゼよろしく道が開けていくのは壮観だったが、これだけの女性が一箇所にいるという緊張で、保持は頭の中心付近の何かが切れていくのが分かった。そして別の何かも切れた感覚が、眉間の奥あたりに感じられる。
「保持君、大丈夫?」
「ハイ、ナントカ……」
 手で押さえ込んでみても、相手は液体、わずかな隙間を縫って床に零れ落ちて行く。
(また、キモイとか言われるのだろうなぁ……)
 保持は普段の生活、いや存在がキモイと言われ続けてきた。しかも水着姿に興奮するかのような場面で鼻血だ。慣れているとはいえ、平気なわけではない。
だが、これもしょうがないと諦めるしかないのだ。
「いやぁ~ん 鼻血を出しているわぁ~ん!」
「かわい~い」
(か、かわいい?)
「あらあら。みんなの水着姿で興奮したのかな? ダメだぞ! そんなんじゃ、お風呂場は覗けないぞ!」
「ソンナ、コンナ バショ デ、ジョウダン ハ ヤメテ クダサイ」
 保持が慌てて止めたのは、それが火に油、いや核に中性子ぐらいの反応が返ってくるだろうからだ。
「じゃ、もっと免疫付けてあげなくちゃいけませんね、ネリュート司令」
「そうね。じゃ、みんなで保持君に生でおっぱいを――」
「司令?」
 ネリュートがなにやらいかがわしい命令を下そうとした刹那、ナーシャの押し殺した声が響いた。
「たしか、羽目ははずさないという条件で、水着の着用を許可したはずですが?」
「あ、うん。覚えています。ハイ」
 まるで蛇に睨まれた蛙のように、ネリュートは竦み上がった。
 司令官ということならば、この艦内で最も偉いのがネリュートのはずである。そして階級はナーシャのほうが低いはずである。だというのに、なんでネリュートはナーシャに怯えているのか? 鈍感な保持でもその疑問ぐらいは沸く。
「あの二人はね、幼馴染なんだよ」
「ハァ……」
際どい真っ赤なビキニの短髪の活発そうな女性が保持に説明してくれた。どうやら疑問が顔に出ていたらしい。
「あ、イリーアったらずるい!」
「こういうのは早い者勝ちだろ? 私はイリーア・コラムス。艦橋で通信技手をやっているんだ。よろしくな」
 と、イリーアの自己紹介を皮切りに、ほぼ全員の自己紹介合戦が始まった。
 しかしざっと見た所二百人近い女性に一般に名前を告げられても、覚えきれるものではない。
 とにかく保持は水着姿というだけでも、許容量オーバーであっぷあっぷ気味だったのだ。とにかく頭に入るわけが無い。
 そして女の子たちの自己紹介が一通り終わる頃には、ネリュートもナーシャから開放されていた。
「この食堂はちょっと狭いのだけどね。連携の基本は相互理解。そしてその為には食事を一緒にとるのが一番! ということで、これでも他の艦に比べれば、居住性を重視して、広めに作ったのよ?」
 確かに机と机の間は、両側に座れば一人通る余裕があるかどうか、という狭さだが致命的に狭いわけではない。
「あの、それより……」
「ん? なぁに? 胸の大きさを知りたいの? えっとね、胸は……」
「あ、いえ、そうじゃなくて……なんで女の人しか居ないんですか? 男の人は……」
「え? それは保持君のために、女の子だけで――というのは半分」
「はぁ」
「残りの半分というのが――ま、暗い話だし、話し出したら長くなるから、また今度ね。今は楽しみましょう!」
「司令はいつ何時もお楽しみのようですが?」
「保持く~ん、ナーシャがね、ナーシャがね、いじめるんだぉ~」

 こうして、保持の波乱に満ちた人生が始まったのだった。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年08月23日 20時55分11秒
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: