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2009年08月22日
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「頭がクラクラする……」
「あら? 大丈夫? 酔った? 薬飲む? それとも私の胸でパフパフしてあげる?」
「あ、いえ、酔ったわけじゃなくて、ちょっと、お話についていけなくて……」
 だが話についていけなくても、それを現実と認めるしかない状況にあったのも確かで、だからこそ保持は意識が揺らぐのを自覚せざるを得ない状況になっていたのだ。
「そりゃぁ、まぁ、地球人にいきなり私達は地球外人類で~す。って言っても、信じられないわよね」
「えぇ、まぁ」
「でも事実よ」
「信じるしかないじゃないですか……」

 保持とネリュート、そしてSP達を乗せたリムジンは、最初は山の方角に走っていたのだが、軽い振動と共に宙に浮いたのだ。
 その異常事態を含む、様々な事をネリュートに聞こうとした矢先に、ネリュートの告白があったのだ。「私達は宇宙人なの」と……
「でも、まぁ、地球人独特の認識言語よね。宇宙人。宇宙に住む知的生命体を指すのなら、地球人だって宇宙人なのにね」
「はぁ、そう言われればそうですね」
「こう、差別的というか、俺様はお前とは違うゼ! という感じよね」
「ごめんなさい」
「何で謝るの? 非難されるべきはそういう認識を作り広めた地球の人間であって、その認識の理の利点を有効活用することは、客観的に見ればあまり好ましくないとはいえ、絶対悪ではないわ。それとも保持君は過去に干渉して、そういう認識を作って地球全土に植えつけたのかな? もしそうなら、今度過去に干渉した時は是非、ネリュート・N・シュガーミは宇宙一の美少女だって認識を受け付けてきて頂戴ね」
「は、はぁ……」
 この手の冗談は、どう対応していいのか分からず、保持は愛想笑いとともに適当な返事を返すしかなかった。それ以上に「もし真剣だったらどうしよう……」と馬鹿正直に疑ってしまうのだ。
「まぁ、冗談はさておき、ま、しょうがないわよねぇ。公式的には未だ地球以外の惑星に生命体が存在しているという事実は発見されてはいない事になっているものね。それに連盟ですら、最近まで地球を軽視していたぐらいだもの」
「そうなのですか?」

「原始……これでもかなり発展していたつもりなのですが……原始……そうですか……」
「まぁ、連盟各国も一足飛びで高度文明を手に入れたわけじゃないわ。誰もが通る道よ。ただそれが早いか遅いかの差ね」
「あと何年ぐらいで追いつけそうですか?」
「あぁ……連盟の計算ではあと三千年は無理ね」
「そんなに、ですか?」

 ネリュートの曇った表情で、さすがの保持も察しがついた。
「――戦争、ですか」
「そう、今のままの地球人だと、恒星間航行の技術も、ただの戦争の道具になってしまう……」
「……」
「でも、まぁ、そう悲観する事ないわ。人なんてどこも同じだから。な~んて偉そうな事言っていても、私達自身が戦争をやっている最中だしね~」
「え?」
「我がサンクロバ帝国率いる連盟軍は、アルバール共和国とその賛同国で組織される解放軍との慢性的な戦争状態にありま~す」
「……」
 お気楽な口調で言われても、その重みが変わる事は無い。むしろ不意に突きつけられた分だけ、ショックは大きい。
「サンクロバ帝国は連盟最古の文明の流れを組む最後の国家でね、その関係から連盟の盟主国家だったのだけど、連盟憲章や各種連盟条約に異議を唱え、実質的な力がある国が支配するべきと、圧倒的な軍事力を背景にしたアルバールと、その主張に賛同、もしくは脅迫された連盟の約三分の一の離反した国家と連盟に参加していない国家群、別連盟の一部勢力などとの寄せ集め解放軍と戦闘状態に入ったのが七十年程前。そしてその戦いは今も続いているわ……一応ね」
「で、でも、僕が、じゃない、僕は……えっと……」
「何でわざわざ保持君を連れ出したのか? ってこと?」
「は、はい。そうです」
「連盟には一定文明レベルに満たない惑星および国家には干渉しないという決まりがあったのだけど、どうやらアルバールが地球のある国家と今でもつながりがあるんじゃないかという疑惑があってね、まぁ内定とかしていたの。二十年程前のことになるけど、サンクロバ本国の方でもちょっと困った事が起きてね……ちょっと切羽詰ってきているのよ。そんな時に連盟管轄のある部門が、君に固執しているみたいということが分かったの。そこでさっきの内定という話につながるのだけど、アルバールもその事を嗅ぎ付けたみたいでね。アルバールに拉致される前に、本人の承諾の上で周囲には明かさない、という特例処置として、こうして今に至るわけ」
「僕自身は同意した記憶は無いのですが……」
「あらら、結構痛い所付くわね。うん、強引だった事は認めるわ。でもね……アルバールを出し抜くにはこれしかなかったの。あなたの周囲にはアルバールの密偵――なのかどうかは今では疑問だけど――が張り付いていたしね」
「そ、そうなのですか?」
「そうなのよ」
「で、僕が、僕を……えっとそれが僕だという理由は……一体……」
「それが現段階では未知数でね、ごめんね。でもひとつ確実に言えることがあるわ」
「そ、それは」
「私達にはあなたの力が必要って事よ」
 保持の心の中に何かが芽生えた。九十九以外の人間に必要とされた事があっただろうか?
 小さな希望、喜びが保持の中に芽生える。
――と同時に九十九の事を思い出し、しばらく会えないどころか、もしかしたら今生の別れになるかもしれない喪失感を覚え、気持ちが落ち込んでいく。
(最後に別れの挨拶ぐらい出来ればよかったのに……)
「さ、保持君着いたわよ。アレが私たちの艦。サンクロバ帝国軍第一艦隊旗艦真空迎撃艦メビルス」
 彼女の指差す方向には――

……何も無かった……





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最終更新日  2009年08月23日 20時55分35秒
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