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『南極越冬隊タロジロの真実』
著:北村泰一
「私は一歩前に出るが、犬たちは後ずさりする。私と犬との距離が狭まらない。
睨み合いが続き、今度は犬たちが前に進むと、私はその分下がってしまう…」
(本文より)
タロとジロの再会はかつて映画で描かれたようなシーンではなかった、
と著者・北村氏は明かす。
氏は南極第一次越冬隊の隊員にして「犬係」、さらに帰国一年後の、
第三次越冬隊にも参加し、タロジロと再会を果たした唯一の証人である。
無人の昭和基地に置き去りにされた十五頭のカラフト犬たちの中から、
二頭の犬の生存が確認された、という奇跡のニュースが日本を沸かせた、
昭和34年。
なぜ、カラフト犬は置き去りにされたのか。
そもそも日本初の南極観測事業とは、どのようなものだったのか。
あれから50年が経った今だからこそ、伝えたいことが山ほどある。
その真実を知る唯一の証人による、真実と感動のストーリー。
木村さん主演ドラマ 『南極大陸』
や、高倉健主演の映画 『南極物語』
の原作。
だが、事実はもっと厳しいものだった。
南極大陸での人間たちの生活や精神的なものも想像を絶する厳しさだけど、
犬たちの置かれた環境の厳しさも、映画やドラマ以上のものがあり。
ブリザード吹き荒れる中、エサも満足にもらえず、
氷で傷つけた足の裏から血を流して橇を引き続ける。
100メートル進んでは休み、50メートル進んでは休み。
小熊ほどもある大きな樺太犬がひとたび喧嘩でも始めようなら、
人間の手には負えず。
犬は単なる家畜であり、犬たちを制御するのは鞭しかない、
と思われていたけれど、犬たちと一緒に生活するうちに、犬にも心がある、
と気づく著者。
著者は、木村さんドラマの倉持と犬塚のキャラクターを合わせた人物。
突然元気がなくなったり逃亡しようとしたりする犬たちの原因が、
こっぴどく怒ったことや失恋が原因かもしれない、と思い至る。
犬たちも、大切な隊員。
その犬たちを置いていかなければいけなかった時の苦悩は、
筆舌に尽くしがたいものがあったろう。
南極大陸の厳しさ、美しさ、壮大さ、そして怖さ。
著者は淡々と語るけれど、余分な感情をそぎ落としたことがまた、
科学者の目で事実により迫るものがあるように感じた一冊でした。
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