9.11のテロ事件でハイジャックされた4機の航空機のなかで、唯一、目標に到達することなく墜落したユナイテッド航空93便の物語
監督・脚本は、「ボーン・スプレマシー」のポール・グリーングラス。
ほとんど無名に近い俳優が選出され、主役のない映画、もしくは全員が主役と言って良いかもしれない映画です。
機長の役には、実際に民間機で航空機のパイロットであるJ・J・ジョンソン。
副操縦士には10年の飛行キャリアを持つゲイリー・コモック。 そして客室乗務員には、ユナイテッド航空の乗務員の経験を持つ、トリシュ・ゲイツ(客室乗務員サンドラー)とナンシー・マクダニエル(客室乗務員ロレイン)が選ばれ、機内での手順等に至るまでリアリティに徹底し、地上にいた関係者にも、俳優に混じって本物の管制官や軍関係者が出演し、実際に911の際に勤務中だった人も含まれ、連邦航空局(FAA)のベン・スライニーは当初顧問として参加していたものの、最終的には自分の役で出ています。
つまり映画で描かれている彼のシーンはすべて事実そのものが描かれているのです。
Story : 2001年9月11日。ニューアークの空港は、朝の喧騒に包まれていた。離陸の準備を整えたユナイテッド航空93便は、40名の乗客を乗せ、サンフランシスコへ飛び立つ。その直後、ワールド・トレード・センターに2機の民間機が激突した。その頃、ユナイテッド93便の機内でも、テロリストが爆弾を持って操縦室を制圧。機内は混乱に陥るが、地上で起こっている事態を知った乗客と乗員たちは、わずかな武器を手に立ち上がった…。
あの恐怖の911事件が起ってから既に5年の月日が流れようとしていますが、未だにあの衝撃の映像を目の当たりにした記憶は鮮明で、そしてなによりも多くの犠牲者の遺族の悲しみは癒えることはないのでしょう。
その中でもニュースとしてあまり大きく取り上げられてなかった、生存者のいない「ユナイテッド93」の墜落に至るまでの惨劇と恐怖の中の勇気の存在を、家族の証言や関係者の証言を緻密に集められ、忠実に再現することによって、映画の作品としてではなく、亡くなられた犠牲者の方々へ最大限の敬意を捧げる内容となりました。
こんな恐い映画を観たのは初めてです。
恐いと行ってもホラーなどの恐怖を楽しむための映画ではなく・・・その恐怖とは、観ている側が、あれよあれよという間に引き込まれる実際にあった事件を体感する思いに駆られ、襲って来るこのうえもない恐怖。
特別な演出を極力避け、あくまでもリアリティを追求して作り上げた映像はまるでその事件が、今、ここで起っているかのような錯覚さえ起こしそうな壮絶なドキュメンタリータッチの映像でした。
冒頭から一心に神に祈りを捧げ、家族へ愛を伝えるテロリストの人間としての姿を描くことによって、どちらに荷担するでもないテロ犯にも家族があり、同じ人間であるということへの配慮も、あの事件が起きてしまった背景と歴史に至るまで、あくまで事実として淡々と描こうとする意図は、リドリースコット監督が、あの「キングダム・オブ・ヘブン」でアラブの英雄を最大限に称える内容で、今も終わる事なく続けれて来た報復劇に問題を提起してきた例に習うものと感じました。
飛行機がハイジャックされたと知り、他のハイジャックされた飛行機が次ぎ次ぎとニューヨークの象徴に追突し破壊している事を知り、事件が次々と起こり始める臨場感とスピード感、そして、このまま黙っていればそこに待っているのは、テロ犯が目指す目的地の破壊と自分たちの道連れの死だけ、ここでなにかをしなければ・・
そんな生存者のいないこの事件が訴えかけてくる 叫び が、みごとに表現されていました。
さすが「ボーン・スプレマシー」のポール・グリーングラス監督のなせる技ですね。
もし、自分がその事件に巻き込まれていたら・・・
自分になにができただろうか、あるいは、最後に誰になにを伝えたいと思うだろうか・・・・
戦争や報復劇のもたらす無益この上もない殺戮を今すぐやめさせなければならない。 そのためには、何が出来るのだろうか・・・・
そんなことを一人でも多くの人に考えてほしい。
極限の恐怖の中で立ち上がった勇気に心から賞賛を送ると共に、亡くなった方々の、未だにさまよっている魂があったとしたら、せめて少しでも早く安らかに・・・っと願うばかりです。
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~おしまい~
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