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October 9, 2005
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カテゴリ: 美術
やなぎみわ


太宰治 曰く
人間のうちで最も残酷なのは、えてして、このたちの女性である。
女性にはすべて、この無慈悲な兎が一匹住んでいる
  (『 お伽草子 』カチカチ山 より)



少女という存在は、いつでも美しくて、どこかちょっぴり残酷だったりする存在です。


少女 アリス は、不思議の国で、何気なくネズミに「猫のダイナ」の話をしますが、
そこに悪意はありません。でも、それはネズミにとって、とても残酷なお話。
こういう「 無垢な残酷さ 」を子供はみんな持っているのです。



さて、しかし、寓話の中の子供達は、親の意向を反映してか、何故か「 素直で良い子 」が多く、
一方、魔女は老婆と相場が決まっています。

==========
やなぎみわ さんの、 「寓話」
この「 少女=無垢 / 老婆=無慈悲 」の図式に揺さぶりを仕掛ける、挑戦的と言って良い作品。

寓話を下敷きに、「老醜の仮面」を被った少女が老婆役を演じて、
物語の1シーンがモノクロの写真によって切り取られます。


しなやかな手足を持つ「 魔女 」は、その仮面によって、
我々の意識下で「 残酷な老婆 」に変換されますが、
その過程で気付かされるのです。

老婆 」もまた、かっては「 少女 」だったことに。
残酷な少女 」の延長線上に「 老女 」が存在することに。



そして、それに気付き、写真を改めて見る時、我々の良く知っているはずの物語は、
別な意味を持って立ち現れてきます。
写真の美しさと裏腹に、「 封印された物語 」は、ゾッとするほど妖艶で、恐ろしい。



原作を知らない寓話がいくつかあったのが、残念でした。

こういうのは、元ネタのイメージがちゃんとあればあるほど、
そのギャップを楽しめる訳ですから、自らの無知を恥じるしかないですねぇ。

==========
「砂女」  シリーズは、一見、不気味でありながら、
どこか郷愁と親しみを感じさせる不思議な作品群。

写真が数点展示され、映画が2本上映されています。



1Fの映画はテントの中に入って、テントから外の光景を覗きみた映像を見る、というもの。
映し出される風景も示唆的で、自分が「 砂女 」になった気分を味わえます。



2Fで上映されている映画も、寓意に富んでいて、映像的にも結構面白い。

祖母が語る実体験の昔話、という体裁を取っているのですが、ラストの祖母のセリフがすごい。
そして、それに対する「私」の反応 -「 私は出会えるだろうか。私の砂女に。 」こそが、
今回の展覧会に流れるテーマを示唆しています。

すなわち、「 少女 」の「 」からの継承と自立。
そう、自らの「 砂女 」と出会って、少女は大人になっていくのです。

==========
階段の所に掲げられた、大きなカラー写真パネル作品「 AI 」は、
「My Grandmothers」  シリーズの1作。
パネル脇の詞書とセット。この詞書には、思わずにやりとさせられます。

こちらは、本人が本人の50年後を特殊メイクで演じているのだそうです。

==========
それにしても原美術館の居心地の良さは、すごいですね。
自転車で、いや、歩いてでも行ける ご近所美術館なのに、
今まで行っていなかったことが悔やまれました。

『やなぎみわ展
- 無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語』

  @ 原美術館 (品川)

2005.8/13(土)-11/6(日)

作者: やなぎみわ

◆◆◆◆◆





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Last updated  August 19, 2009 01:27:31 AM
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RonaldBus@ Transforming your landscape with gorgeous blue stone slabs. Understanding the Benefits of Choosing …
mrtk@jp @ Re[1]:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) >そらねこさん コメントありがとうござ…
そらねこ@ Re:本と共に~「ぼくらはそれでも肉を食う」(06/19) はじめまして。本の題名につられてお邪魔…
浅葱斑@ 心のハレっていいですよね? こんにちは。 誕生日の暦から今の自分、未…
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