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2017年最初の展覧会は、天保山で開かれていた『恐竜博2016』へ。数年前に友人宅で子供の持っている「恐竜図鑑」を見せてもらった時、恐竜にはそれなりに詳しかったつもりだったのに、知らない恐竜ばかりでびっくりしたのを覚えています。講談社の動く図鑑MOVE 恐竜 新訂版それもそのはず。2015年だけでも、何十種類もの新種の恐竜が発見され、その中には、今までにない特徴が認められる、あるいは新学説に寄与するような恐竜が含まれているのです。会場内には、今回の目玉である、ティラノサウルス&スピノサウルスの化石はもちろん、赤ちゃん恐竜の化石や福島応援のチンタオサウルス、恐竜化石に触れる企画、復元ムービーなど、盛りだくさん。(恐竜で福島応援のプロジェクトについてはこちら)この展覧会、一部を除いて撮影・拡散可、となっています。これは素晴らしい宣伝だなぁ、と思います。見て、触って得られる実物の迫力は、写真では得られませんから。恐竜に関して、様々な新しい知見を得ることが出来、何より、実物の化石に圧倒されました。そして、島田荘司先生が『アルカトラズ幻想』で提示された「あの仮説」がこういった展覧会で日の目を見る日が来れば、また違った学説の進化を見ることが出来るのにと思ったりしながら、会場を後にしたのでした。アルカトラズ幻想(上) [ 島田荘司 ]アルカトラズ幻想(下) [ 島田荘司 ]========== 『恐竜博2016』 @大阪文化館・天保山 https://www.osaka-c-t.jp/[会期]2016.09/17~2017.01/09 [休館]なし [料金]一般 1,500円 / 大高生 1,000円 / 中学・小学生 800円恐竜博2016公式サイト :http://dino2016.jp/関西テレビ特設サイト :http://www.ktv.jp/event/kyouryu/index.html
January 6, 2017
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バングラディシュでイタリア人や日本人が犠牲になるテロが起こり、フランスのニースで無差別テロが起こるという現実を目の当たりにして、『文明の衝突』を思い出した。あの本が出たのは、私が学生だった20世紀の頃なので、20年くらい前になる。当時から「むしろ、この分析をする、この分析に基づいて政策を立ててることで、対立を煽る」という批判はあったが、9.11が起こり、作者がブッシュ政権のブレインを務めたことで、先見の明があった本として扱われた。文明が衝突するのは歴史の必然なのか、人類の不断の努力によって避けることが出来るのか。生まれてしまった憎悪の連鎖は、断ち切ることが出来るのか。本棚から引っ張り出したのは、加藤陽子先生の『戦争の日本近現代史』と、『文明の衝突』以前に書かれた中島嶺雄先生の『国際関係論』。何故、何があれば人は人を殺せるのか。世界中で奪われている命の重さに、心からの哀悼を捧げつつ、私はその答えを少しでも知りたいと思う。題名は本田勝一氏の本のタイトルから。賛否、言い方はどうあれ、日本も「人を殺せる国へ」向かっている今だからこそ、人を殺す意味を、殺さないための論理を学ぶべき時代だと思う。 『文明の衝突』 『戦争の日本近現代史』
July 16, 2016
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立命館大学茨木キャンパスで藤村正宏さんのお話をお伺いしました。非常に面白くてためになるお話でした。モノではなく、コトを売る、というのはよく聞く話ですが、例が分かりやすかったのが良かったです。snsはお客様を「友達」に出来るツールだ、という視点は、言われればその通りですが、なかったなぁ。「つながり」で売る!7つの法則 [ 藤村正宏 ]
July 9, 2016
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久しぶりの茶会記。加古川青年会議所さんの例会事業の一環という形でお茶を頂いてきました。場所は国宝鶴林寺の一角。この設え自体が、非常に贅沢です。お軸の「滝三千丈」の「滝」の縦の線がすーっと流れて、涼しげ。お花もシンプルに活けられています。お菓子は亀屋さんの「清流」。鮮やかな色の上に鮎の絵が押されていて、また、「清流」の名が加古川に相応しい。大人数で頂戴するにも関わらず、数茶碗ではなく、様々な茶碗で出して頂きました。私が頂いたのはシンプルなお茶椀でしたが、ガラスの茶碗や夏野菜を描いた茶碗もあり、夏らしい設えでした。何より、お茶が甘くてまるく、美味しかったです。お茶から離れて久しくはありますが、落ち着いたら、またお稽古を再開したいものです。
August 18, 2015
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こんな本を読んだ。麻耶雄嵩 『神様ゲーム』島田荘司 『アルカトラズ幻想』 ==========麻耶雄嵩『神様ゲーム』麻耶雄嵩氏の小説を普通の人に勧めることは怖くて出来ませんが、私自身は文庫化された氏の小説は全部読んでいるので、どんな驚きの結末が待っていようと、世界が壊れる気分を味わおうと、覚悟はしていたつもりでしたが、それでも、この小説のラストでは、疑問と混乱の渦に巻き込まれました。「神様」は正しいとするのか、間違いもあると考えるのか、「真実はいつも一つ」なんて無邪気に言える探偵が羨ましい。殺された猫はシュレディンガーを意図しているのか。開けた先に、背徳と混沌が詰まっているという悪夢のびっくり箱。読んで、決して幸せな気分になどさせてはくれませんが、小説を読むという行為だけで、自分の持っている世界観をガラガラと壊してくれる麻耶雄嵩体験は、他の小説では得られない唯一無二のものです。とりあえず、何が間違いかと言えば、この作品が子供向けのミステリーレーベルで刊行されたということ。『神様ゲーム』で初めてこの作者に出会った読者は、どこへ放り出されるのだろうと心配になります。ちなみに、氏の数ある作品の中で勧める本を選ぶなら、ノンシリーズの『螢』か『隻眼の少女』。どちらも、もちろん、幸せな気分なんかにはさせてくれない、その代わりに、世界が崩壊する気分が味わえる、素晴らしい作品です。 『螢』 『隻眼の少女』==========島田荘司『アルカトラズ幻想』解説の伊坂幸太郎氏をして、「僕には書けない」と言わしめる快作。冒頭の酸鼻極まりない残虐な事件の発生から、恐竜の存在についてあっと言わされる「重力論文」、難攻不落のアルカトラズをめぐる脱走劇、そしてファンタジーとしか思えない「パンプキン王国」での生活、何を読んでいたか分からなくなるほど急な展開を見せる物語を、最後のエピローグでまとめ上げる鮮やかな手腕は、さすがの一言。それにしても、どうなんだろう「重力論文」。説得力がありすぎて、古生物学にこのまま一石を投じて欲しい程なのですが。「恐竜」に興味のある人は、この章だけでも読む価値十分あり。かって、松本清張氏や高木彬光氏が、古代史学に投じた一石、いや、哲学者の梅原猛氏の古代史学に対する業績に匹敵するぐらい、あと数年後には、古生物学のスタンダード学説になって、図鑑から何から書き換えてしまう可能性のある「論文」です。「宇宙」に興味がある人も読む価値があります。文字通り、宇宙規模で考えての、地球をはじめとする太陽系各惑星の自転周期の謎について、こんなに分かりやすく語られている本はありません。「人類の進化」に興味がある人も、読むと面白いでしょう。何故、どのような進化があって、哺乳類の中で人間は単独で子供を産むことが難しくなったのか。納得のいく答えがここにはあります。もちろん、他の章もそれぞれ魅力に満ちた展開を見せ、まさに「巻を措く能わず」。とにかく、とんでもない作品であることは間違いなく、これぞエンターテインメント。島田先生の作品力に改めて脱帽させられた読書体験でした。
August 18, 2015
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こんな本を読んだ。いとうせいこう 『想像ラジオ』又吉直樹 『火花』京極夏彦×柳田國男 『遠野物語拾遺 retold』 ==========いとうせいこう『想像ラジオ』前から気になっていた本。死者への弔いの仕方は、国によっても、時代によっても、人によっても全然違いますが、最も重要なポイントは、残された生者がいかに「納得」するか、ということです。この小説は、「小説」という形を借りた、死者への弔い。そして、読むこともまた、弔いに加わることなのだと思います。決して重い小説ではなく、清冽なイメージが貫かれ、読みやすく、読んで心に沁みる、そんな作品。==========又吉直樹『火花』基本、本は文庫化待ちなのですが、父が買ってきたので借りて読みました。「お笑い」という舞台を背景に、理詰めで引っ込み思案な主人公と、所属事務所も違う先輩との関係が描かれた作品。表現も文学的だし、ネットニュースのシーンとか、終盤の漫才のシーン、いわゆる「消えていった芸人」にも光を当てる筆致、最後の花火のシーンと合わせての「生きている限り、バッドエンドはない。」というメッセージなどは、とても良いと思うのですが、期待が大きかった分、少し肩すかしかな、と。「文学的であらねば」という縛りで、面白さを削いでしまっている感じがするのは、まさに作中の主人公のジレンマと同じ。「純文学」の定義が僕には分からないのですけれど、結果面白くなくなるなら、意味なくない?と思うのです。==========京極夏彦×柳田國男 『遠野物語拾遺 retold』京極夏彦×柳田國男 『遠野物語 remix』を読んだのは昨年のこと。前作に引き続き、なかなか原文で読むのがつらい原著を、リミックスし、語りなおすことで、読みやすく「編集」する手腕はさすが。そして、やはり、この物語群も怖さと不思議さに満ちています。ミステリーとは違い、解決なんてない、純粋なる不思議さ、奇妙さ。それは怖さの一方で、なぜか郷愁をかきたてるのです。
August 6, 2015
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それは、20年前の1月17日、僕はちょうど受験生で、センター試験の自己採点が終わった翌日の早朝に起こった。電車が不通で学校が休みになったと聞かされて、皆で観た寮生共同のテレビに映し出されたのは、知っているはずの街の一変した姿。高校生が携帯なんてもたない時代、関西出身の寮生は、家族の安否を確かめるべく、2台しかない寮の公衆電話に列をなしていた…。上手く文章には出来ないけれど、思い出せばきりがなく、また、いろいろ思うことはある。当時、受験生を言い訳に、やらなかったこと、出来なかったこと。切ない、やるせない、言葉に出来ない思いが去来する。あれから20年、今、観光客や震災を知らない若い世代が神戸の街並みを歩いても、震災の傷跡を見つけることは難しいだろう。この月日の間にも、東日本大震災をはじめ、日本の各地で様々な災害があった。あわせて、心から哀悼の意を表すとともに、復旧・復興に尽力されているたくさんの方々に敬意を表したい。痛ましい記憶は消えないかも知れないけれど、願わくば、それぞれの地で、将来を見据えた復興が行われんことを。
January 17, 2015
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あけましておめでとうございます。新年のご挨拶がすっかり遅くなってしまいました。昨年は、FBを始めたり、アメブロを書いたりと、色々な試みを行いましたが、どれも更新に波が…(笑)定期更新を自分に義務付けるようにしなければなりませんね。さて、今年のテーマは「全力疾走(たのしくかけぬける)!」年を取り、環境も変わって、「出来ないこと」も増えましたが、今年は様々な機会を頂いて、「出来ること」を増やす年でもあります。何事にも前向きに取り組んで、自分の「出来てないこと」を克服して、自分自身の成長の機会としていきたいと思います。というわけで、今年もよろしくお願いいたします!
January 7, 2015
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私は、姫路市立美術館友の会の会員で年会費を払っているので、行けば何回でも展覧会を観ることが出来ます。でも、正直、「スズキコージ」さんって言われても名前知らないし、チラシが頭蓋骨をあしらっていて、絵本作家と言われても少し怖い感じもするし、今回はパスでも良いかなぁ、と思っていました。しかし、ボランティアにお伺いした時にちらりと見えた作品のエネルギーに圧倒され、子供を連れて観に行くことを決めました。というか、むしろ、子供に観せたい、と思ったのです。==========展覧会場は、エネルギーと色彩が渦巻く色彩空間と化していました。----------いつもなら通路として使われている廊下も展示に使われ、「ほね・ホネ・がいこつ!」の特大絵本が置いてあったり、表と裏で全く色調の違う顔出しパネルがあったり。すごいぞ!ぼくらのからだシリーズ ほね・ホネ・がいこつ!中川ひろたか/スズキコージ----------会場に入ると、ガラスケース自体が取っ払われ、絵本とその原画が展示されると共に、原色系の色彩で派手に描かれた特大級の絵が所狭しと並べられ、さらにはパティック(インドネシアのろうけつ染め)から、巨大段ボール彫刻、仮面、ペインティングされまくった服、何がなんだか、おもちゃ箱をひっくり返したような、姫路美術館では見たことのない展示空間が広がっていました。とにかく、エネルギーが凄まじい。----------画風が好きだとか、嫌いだとか、そんな「評価」なんてお構いなしに、「絵が好きだ」というほとばしるエネルギーを次々に形にしていったかのような、とにかく、圧倒されること間違いなしの「スズキコージ」ワールドがそこにはありました。 エンソくんきしゃにのる ヤッホー ホイホー やまのディスコ----------本人は「魔法画家」になりたかった、ということだそうですが、確かにこの空間に何かの「魔法」がかかっていることは間違いありません。そして、その「魔法」は、頭でっかちな大人より、子供たちにこそ、ダイレクトにかかるのでしょう。「わけわかんないけど、とにかく楽しい!」そうとしか言いようのない、とんでもない美術展でした。==========『スズキコージの絵本原始力展~聖コージの誘惑~ 』 @姫路市立美術館 http://www.city.himeji.hyogo.jp/art/※インターネット・ミュージアムでも公開! こちらから[会期]2014.06/21~08/31[休館]月曜日[料金]一般 900円/大高生 600円/中学・小学生 100円作者:スズキコージ(公認サイト:http://www.zuking.com/)
August 27, 2014
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中学生の頃、英語の先生から授業中に「好きな画家は?」と聞かれ、絶句したことがあります。本当はエッシャーの名を挙げたかったのですが、いわゆる美術の時間で習う「絵画」とは何か根本的に違う気がしていたので、エッシャーが「画家」かどうか、自信を持てなかったからです。今ならはっきり答えられます。「 好きな画家はエッシャーです」と。エッシャーの描く絵は、いわゆる「騙し絵」的な作品から、肖像画、風景画に至るまで、どれも理性的で精緻、そして何より不思議な魅力に溢れています。「エッシャー100選」展が、明石市立文化博物館で開かれていると聞き、行ってきました。==========導入は、イタリア時代の風景画から。この頃の作品は、「精緻でリアルな風景画」の印象が強いですが、それでも、細かいところまで見る目に、後の作品の片鱗を感じることが出来ます。今回見た中では、ヴァチカンの広場を描いた作品が印象的でした。----------そして、ここから彼の作品は、平面の正則分割、極大極小表現、立体図形の絵画等を経て、不可能立体の絵画へと進んでいくのです。有名な「昼と夜」(左に行くと昼間に黒鳥が、右に行くと夜空に白鳥が飛んでいるように見える作品)、「空と水」(下に行くに従って鳥が魚に変わっていく作品)などが平面の正則分割の作品。これの集大成とも言えるのが「メタモルフォーゼ」。この作品は何度見ても飽きることがありません。有名な「ベルベデーレ(物見の塔)」では、空間のねじれをそれと感じさせずにさらりと描き、「滝」や「上昇と下降」では永久機関とも言うべき無限に続く水の流れ、人の流れを描いて見せます。 「空と水」 「物見の塔」 「滝」(図版は展覧会チラシより引用)やはり、エッシャーの作品は、何度見ても面白い。==========私の好きな作品は、「3つの世界」という池の鯉を描いた作品。この作品では、池に写る立木、池に浮かぶ木葉、池の下にいる鯉が同時に違和感なく描かれています。一見、普通の絵画のように見えます。いや、騙し絵を期待していると、ただの絵画です。しかし、実際は全然違う次元にある「3つの世界」を2次元世界にさらりと落とし込んでしまっている「違和感のなさ」こそが、エッシャーの凄さであり、真骨頂。不思議な造形に慣れてきた時に提示されると、「どこが騙し絵なの?」となります。そこまで含めて、この作品は見事に鑑賞者を「騙す」企みに満ちていると言えます。==========さて、これらのコレクション、ハウステンボス所蔵です。何年も前、Bunkamuraで観た時も、天保山のエッシャー展でも、ハウステンボスから来ていました。ハウステンボス内には「エッシャー館」があり、3D映像でも作品を楽しむことが出来ます。(ハウステンボス内「ミステリアスエッシャー」)----------また、エッシャーの父が建設にかかわった関係から、福井県坂井市三国町の「みくに龍翔館」では展望室内に「トリックアート・ワールド」があり、1993-2001年にかけて行われた「みくにトリックアートコンペ」の入賞作品を見ることが出来るそうです。福田繁雄さんの著書で、いくつか作品が紹介されていますが、これもまた超絶技巧の作品ばかり。世の中に天才ってたくさんいらっしゃるんだなぁ、と思わされます。----------さらには、兵庫県立美術館さんでも2014.10/15-12/28の日程で「だまし絵II」が開かれます。これも楽しみ。(巡回:2014.08/09-10/15@Bunkamura ザ・ミュージアム ・ 2015.01/10-03/22@名古屋市美術館)どれもいつか時間を作って足をのばしたいものです。==========『明石市制95周年記念 夏休み特別展 エッシャー100選 だまし絵の奇才が創る無限の世界』 @明石市立文化博物館 http://www.akashibunpaku.com/[会期]2014.07/19~08/31[休館]会期中無休[料金]一般 1,000円/大高生 700円/中学生以下 無料作者:M.C.エッシャー(公式サイト:http://www.mcescher.com/)
August 23, 2014
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「新宿梁山泊」さんの芝居が面白いと聞いていながら、行きそびれて早幾星霜。当時の座付作家、鄭義信さんの新作のお芝居が神戸で観られると聞き、楽しみにお伺いしました。しかも、このお芝居、兵庫県下12劇団によって構成される兵庫県劇団協議会の45周年記念合同公演。即ち、兵庫県下の精鋭の役者さん達による夢の競演。正に梁山泊!==========舞台は、少しばかり寂れた小さな結婚式場。今日は三組の挙式が予定されています。。しかし、それぞれの家族には、それぞれの「事情」があり…。結婚式という人生の「ハレ」の舞台で交錯する様々な思い。謎の登場人物、物語を盛り上げる音楽隊、真面目ながらも個性的な従業員達。バタバタとお話が同時進行で進んでいく中、題名通り、それぞれの「物語」が「ピビンパ(かき混ぜ)」され、蛍が物語に明かりを灯します。==========笑って、泣けて、感動できる、お芝居の王道のような作品でした。観客も含めて、同時に同じ舞台空間を共有しているからこそ生まれる独特の空気感の中で、生身の役者さん達が、台詞に、動きに、命を吹き込むことで、テレビとも、映画とも違う、お芝居でないと得られない笑いと感動が生まれるのです。==========緩急自在に場の空気を変え、しっかり笑わせ、しっかり泣かせ、かつ、多くの出演者それぞれに、しっかりと存在感を持たせる脚本の妙。この脚本の要請に応え、脚本を活かしきる、役者さん達それぞれの素晴らしい存在感。演技の上手下手を言葉で説明することは難しいのですが、どの方も間違いなく上手い。さらには、自然な形で入る、韓国楽器の生演奏。音楽だけでなく、その演奏技法、演出もエキゾチック。開演前の演奏も素晴らしく、劇中の登場の仕方も面白い。久しぶりに「良いお芝居を観た」という充実感を味わうことが出来ました。==========兵庫県劇団協議会 45周年記念合同公演 『ピビンパ ウェディング』 @神戸アートビレッジセンター (兵庫・神戸)2014/08/07-10 作・演出;鄭義信 出演:兵庫県劇団協議会 所属劇団 劇団員 神戸ドラマ館ボレロ 劇団四紀会 劇団自由人会 劇団神戸自由劇場 劇団ここから 劇団プロデュース・F 神戸ドラマ倶楽部 劇団風斜 劇団どろ 兵庫県立ピッコロ劇団 劇団道化座 神戸職演連 演奏:鄭慎二・閔俊泓
August 10, 2014
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「日本」から連想されるイメージの一つに「侍」があります。西洋のものとは違う兜・甲冑を身に着け、戦場を駆け抜ける「侍」。その兜・甲冑には、不思議で奇妙なものが見受けられることがあります。2014年現在、大河ドラマで放映されている「軍師 黒田官兵衛」の有名な兜にしても、赤い盃を逆さにした不思議な造形ですし、「愛」の漢字をかたどった直江兼続の兜、兎耳型の兜等を思い浮かべる方も多いでしょう。また、甲冑にしても、井伊の赤備えや伊達家の等、大量生産ではない時代に、質・量を揃えるということが、どれ程の贅沢であったことか。戦場で如何に目立つかを基準としたようなその造形。そこにはアート作家の想像力を刺激する何かがあるようで。侍達ノ居ル処。 [ 野口哲哉 ]大山崎山荘美術館で、『野口哲哉の武者分類図鑑』を観てきました。姫路美術館ボランティアの方に「好きだと思うよ」と勧めて頂いて、「確かに面白そうですね」と答えて以来、ずっと気になっていたのです。==========大山崎山荘のガラスケースの中に佇む、甲冑姿の小柄な「武士」達。時に無表情に、時に現代風の顔付で、甲冑を身に纏った姿は、甲冑の格好よさとのギャップで、どこか滑稽さを感じさせてくれます。そして、まるでそのような甲冑が本当にあったかのように騙られる、「偽史」に基づいた造形物達は、面白くて愛おしい。猫に着せるために作られたという甲冑、自転車に乗った武士、空を飛ぶ武士、シャネルのマークをあしらった甲冑を纏う「紗練家」の武士達。単に甲冑のみならず、解説書や当時の絵画まで作り込んで説得力を持たせる技法は、緻密にして周到。何だかワクワクする時間を過ごさせて頂きました。==========一般的には、氏の作品を見て思い浮かべるのは、やはり、同世代の作家、山口晃氏や天明屋尚氏の作品でしょう。少し趣は違いますが、"天才"会田誠氏の作品も近いものがあります。 山口晃作品集 傾奇者 会田誠 天才でごめんなさいしかし、この「偽書」にまつわるディテールの扱い、ないものをあらしめる手腕には、このBlogでも何度か紹介している「クラフトエヴィング商會」さんの作品と、感性の方向性こそ違えど、凝り方に相通じるものを感じました。「クラフトエヴィング商會」さんについては、また頁を改めて。==========まぁ、今回、何が驚きだったかと言えば、偶然、紺洲堂主人さんと、それと知らず同じ日、同じ時間に展覧会場にいたことです。アートの起こす奇跡について、思いをめぐらす一日となりました。==========『野口哲哉の武者分類図鑑』 @大山崎山荘美術館 (京都・大山崎) http://www.asahibeer-oyamazaki.com/index.html[会期]2014.04/19~07/27 [休館]祝日を除く月曜休館[料金]一般:900円 / 高・大学生:500円 / 小・中学生:無料作者:野口哲哉
July 28, 2014
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「夏には怪談」という方もいらっしゃいますが、私自身は「怖い話」って苦手で、絶叫系マシーンには乗れても、お化け屋敷の類にお金を払って入る気はございません。とは言え、怖いもの見たさ、というのはあるわけでございまして。作者がミステリー系だから大丈夫だろうということで、京極夏彦先生の『遠野物語remix』、柳広司先生の『怪談』を購入しました。…怖かった。----------『遠野物語remix』は、柳田國男先生の『遠野物語』を口語体にして、順番を分かりやすく差し替えたという作品なのですが、合理的解決を有さない、不条理で不合理な物語は、日常の中にぽっかり空いた真っ暗な深淵を覗き込むようで、背筋が凍る思いがします。角川ソフィア版には、柳田國男先生の原版も収録。 遠野物語remix 遠野物語remix 付 遠野物語----------一方の『怪談』。 怪談 [ 柳広司 ] 怪談 [ ラフカディオ・ハーン ]こちらは小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)先生の『怪談』を下敷きにして、現代を舞台に、「合理的」な「怪談」が語られる短編集。柳先生の作品は、本当に良く練られているなぁと、いつも感心しますが、今回はこの知性的・理性的な合理性と、それだけでは割り切れない「怖さ」のバランスが素晴らしい。所収の「雪女」や「むじな」を代表として、やはり人間の心の闇が一番怖い、ということを思い起こさせてくれます。==========「日常に潜む不条理の怖さ」という言葉にすると、どちらも同じなのですが、異形の者の怖さを取るか、人間の心の怖さを取るか、いわゆるホラー的な怖さはありませんが、それ以上に怖い両作品でした。
July 3, 2014
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思えば、ディズニーアニメは、ミュージカル映画としての側面を持っているわけで。有名な曲、それと知らずに知っている曲はたくさんあります。「アナと雪の女王」を観ました。(C)2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.映画「アナと雪の女王」この作品情報を楽天エンタメナビで見るディズニー伝統の、と言って良い、ミュージカル映画。----------氷の魔法の力を持つ姉、姉の力を忘れさせられて育った妹。魔法の力を表に出さないため、閉ざされた城の中で二人は成長します。そして、姉の戴冠式の日。久しぶりに開け放たれた城に、期待いっぱいの妹と、不安いっぱいの姉。そんな中、事件は起こり、国は氷に閉ざされてしまうことになります。果たして、二人はこの危機を乗り越えられるのか。----------何と言っても、途中出てくるスーパーキャラクター、雪だるまオラフの存在が素晴らしい。「夏に憧れる雪だるま」という、緊張感あふれるキャラクター設定はさておき、二人の楽しかった思い出の象徴である「雪だるま」が、文字通り、二人の「雪解け」のきっかけを担うという構成はさすがです。----------それに何より、主人公たちのハッピーエンドは疑いませんでしたが、「夏に憧れる雪だるま」の幸せがどう実現されるのか、正直、私にはそれがハラハラドキドキでした。----------前向きで楽しくて、ハッピーエンドが約束されていて、印象に残る素敵な音楽が散りばめられていて、美しい映像を安心のクオリティのCGが彩り、家族で安心して観ることの出来る、素晴らしいファンタジー。楽しませて頂きました。
July 2, 2014
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「奇妙な味」としか表現のしようのない映画でした。絵画的な、どこか懐かしい雰囲気を背景に描かれる、先の読めない緊張感あるストーリー展開。ミニシアター系の映画が好きな方には、たまらない作品です。(C)2013 Twentieth Century Fox映画「グランド・ブダペスト・ホテル」この作品情報を楽天エンタメナビで見る現代。墓地にある作家の碑の前に佇む一人の女性。彼女の手には「グランド・ブダペスト・ホテル」という本が。1980年代。その作家が、テレビカメラに向かって語りかける。「自分は、架空の物語ではなく、語られた物語を書いているのだ」と。1960年代。作家が滞在していた「グランド・ブダペスト・ホテル」に奇妙な客がやってくる。その客と親しくなった作家は、ホテルにまつわる、その男の思い出話を聞くことになる。1930年代。「グランド・ブダペスト・ホテル」は名門ホテルとして、活気に溢れていた。その中心にいるのは伝説のコンシェルジュ、グスタフ・H。----------この2重3重構造の中で、物語が動き始めます。グスタフ・Hが巻き込まれる事件とは。そして、絶体絶命の状況におかれた彼の取る行動とは。----------先の読めない展開に、独特のリズム感のある映像美、緊張感の漂う脚本。何かしらの社会風刺も込められながら、それを嫌味に感じさせず、物語のリフレインが爽やかな余韻を残します。==========ウェス・アンダーソン監督の作品は、これまでも『ライフ・アクアティック』『ダージリン急行』を観ているのですが、どれも不思議な浮遊感とほんわりとした温かさに包まれた作品です。なかなか機会はないですが『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』も観たいですねぇ。 ライフ・アクアティック ダージリン急行 ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
July 1, 2014
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「命を大切にしよう」という考え方に反対する人は、ほどんどいないと思います。しかし、この「命」の中身をどう考えるか、どのように大切にするか、というのは人それぞれです。さて、この本の帯には、こう書かれています。「イルカ殺しはかわいそう、でも焼肉もマグロ丼も大好き。 この矛盾、いったいどうしたらいい?」ぼくらはそれでも肉を食う [ ハロルド・A.ハーツォグ ]残念ながら、この本にその「答え」は書かれていません。でも、世の中に様々な考え方があり、それぞれそう思う根拠、背景があることを知ることが出来ます。==========序章で出される「問題」から、とても衝撃的です。曰く「どうせ殺処分されてしまう猫なら、ペットとして飼われているヘビの餌にしても良いのではなかろうか?」この質問自体に対して、ほとんどの方が、不快感を覚えるのではないでしょうか?(特に猫好きの方は、怒りすら覚えられたかと思います。)実際にこういうことが行われている、というわけではありません。作者の主眼は、ではなぜこの不快感が生まれるのか、というところにあります。----------ユダヤ人を虐殺しながら、一方で動物愛護を推進したナチスの話。菜食主義者と健康の話。狩猟と性差の話。闘鶏(残酷としてアメリカでは禁止)の鶏と、食肉となる鶏では、どちらが「幸福」かという話。動物実験のために遺伝子操作されて生まれてくるネズミの話。----------倫理的・文化的な非常に難しい問題を、丁寧かつ出来る限り公正に取り扱うことで、人間と動物の関係性について論じています。----------久しぶりに、知的好奇心を刺激され、自分の頭で考えさせられる、スリリングな読書体験でした。==========ちなみにこの表紙の絵を描かれたのは、ムツゴロウ先生。なかなかに柏書房さん、良い仕事をされてます。
June 19, 2014
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先日、伊勢へ参拝旅行に行ってきました。初日は二見興玉神社に参拝。先日、神社は、自分の私利私欲をお願いするところではなく、他人の幸せを願う場所なのだ、と教わりましたが、あわせて、今の幸せへの感謝を申し述べる場所でもあります。----------なので。これまでの様々な「出会い」に感謝。妻との出会いに感謝。夫婦円満に感謝。素晴らしい子宝を授かったことに感謝。子らの健やかな成長に感謝。----------そして。友人たちの「良縁」を祈願。==========翌日は、伊勢の内宮へ。何より、人の多さにびっくり。前回来たときは、もっと静かで、凛としていて、森閑とした中、神々しさを感じつつ、参拝させて頂いた覚えがあるのですが…。それでも、ほとんどの方が正装され、きちんと鳥居の前で一礼しながら、整然と参拝していく様は、見ていて気持ち良いものがありました。日本国民の総氏神でもある伊勢神宮では、今、こうして、ここにあることに感謝。----------駐車場への帰りは、人通りの多い「おはらい町通り」「おかげ横丁」を避け、五十鈴川沿いをのんびり散策。最初に来た時は、両親に連れられて家族で。次には、小学校の修学旅行で。その次は、大学時代の友人たちと。そして今回は、自分の妻子と。人生の節目節目に、こうして参拝させて頂けるのは、本当に有難いことなのだと思います。さて、次に参拝するのは、いつになるのやら。
March 15, 2014
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3/8は「国際女性デー」です。なんて話をすると、アンチフェミニズムの諸氏から突っ込まれそうですが、日本でこそあまりメジャーではないものの、国連で1975年に定められた、由緒正しい記念日です。と言いつつ、私がこの記念日を知ったのは、ドイツ滞在中。女性にミモザの花を贈ったりする日なんだよ、と教えられました。まぁ、ミモザは花粉症の原因になる場合もあるそうなので、うかつに贈ると、えらいことになりかねませんが。余談ですが、ホワイトデーをこの日にしておけば、国際的にも説明しやすいし、意義深い感じもするし、良かったのではなかろうか、と私は思うのですが…。これだけメジャーになっちゃうと、今更、なんだろうな。
March 8, 2014
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以前、ラジオでこの本が紹介されていて以来、ずっと気になっていました。「OED」すなわち、「Oxford English Dictionary」。wikiより引用すると、「1989年刊行の第二版は、本体20巻 (累計21,730頁) と補遺3巻 (累計1,022頁) から構成され、主要な見出し語数は291,500、定義または図説のある小見出し語やその他の項目を含めると615,100。」という「オックスフォード大学出版局が刊行する最大かつ最高の英語辞典」。この辞書を通じて、「英語の森」に分け入った冒険者の旅の記録が、この本です。そして、僕はOEDを読んだ[ アモン・シェイ ]1,890円私自身、読書は嫌いではありませんが、辞書を「読む」経験をしたことはありませんし、今まで読んできた本を積み重ねても、このページ数に行き着くかどうか。そして、「OED」は、「最大かつ最高」であるが故に、英語圏の人でさえ知らないような単語まで、網羅されているのです。作者の読書の歩みに沿って、「A」から「Z」まで26章のエッセイがあり、これだけでも十分に面白い「冒険記」なのですが、作者が面白く感じた単語の紹介と、作者による単語への突っ込みがあり、それらの言葉から垣間見える昔の風習の紹介、「悪魔の辞典」的な言葉に対する考察、言葉を生み出してきた人間社会に対する皮肉、等々入り混じって、面白い「読み物」になっています。==========ちなみに、この本、出版社が「三省堂」さんというのも気が利いています。日本には、辞書編纂者の方々はもちろん、「辞書を読む」方もたくさんいらっしゃるようで、私も少しだけ、その仲間入りをしたくなりました。読むんだったら何が良いかな?まず三省堂さんの「新明解国語辞典」かしら?新明解国語辞典小型版第7版[山田忠雄]2,940円____新解さんの謎[ 赤瀬川原平 ]540円 ____新解さんの読み方[ 夏石鈴子 ]660円辞書編纂関連の本も話題になりましたね。____舟を編む[ 三浦しをん ]1,575円____辞書を編む[ 飯間浩明 ]840円英語辞書、せっかくならこちらも、三省堂さんの…と思っていましたが、こちらのHP(編纂者:山岸勝栄先生のページ)を拝見して、「スーパー・アンカー英和辞典」を読みたくなりました。スーパー・アンカー英和辞典第4版[ 山岸勝栄 ]3,045円==========本書でも度々言及されていますが、辞書には、編纂者の並々ならぬ熱意と努力が込められているわけで、それを「読む」というのは、「編む」苦労に比べたら、たいしたことはありません。私みたいな凡人読書家は、小説の作家さんや研究者の方々に対しても、そう思うこと多いですけどね。携帯やPCで手軽に意味を調べられ、電子辞書も安価に手に入る時代になりましたが、それでも、紙媒体で辞書に触れられる楽しみを、改めて思い出させてくれ、また、作家や編集者の方々に対する敬意を、改めて呼び覚ましてくれる、そんな一冊でした。
March 7, 2014
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「麦わらの一味と星空の航海へ!」というわけで、まぁ、正直、「コブクロ 流れ星に願いを」の方が見たいなぁ、とか思いつつ、久々のプラネタリウムだったのですが、素直にわかりやすく面白かったです。子供も、ワンピースのストーリーもキャラクターもよく知らないはずなのに惹き込まれていました。----------(以下、ストーリーをご存じない方には意味不明になろうかと思いますが…)「くじら座」から、ラブーンのことに思いを馳せ、「わし座」からハヤブサ→アラバスタでの別れを連想して涙を流し、バラバラになってしまった「アルゴ座」から、ゴーイングメリー号を思い出し、オーロラの立体投影から、チョッパーの引く橇に乗って、Dr.クレハとの別れを回想する。他の小ネタも、笑いと感動を誘ってくれます。----------私自身は、ワンピースにあまり詳しいわけではありませんが、それでも涙腺を刺激される内容でした。ファンの方は、かなり泣けるのではないでしょうか。----------肝心の星の解説も、春の星座から冬の星座まで、ナミとロビンが一通りわかりやすく説明してくれるので、知っているようで知らない星座の世界を知ることが出来て、大満足。===========上映前には、加古川総合文化センター宇宙科学館の方が、加古川の「今」の星空の解説を行ってくれます。正直、知らないこと、忘れてしまっていることでいっぱいで、感心しっぱなしでした。これで、大人400円は安いと思います。===========うーん、88の星座、今からでも覚えられるかなぁ?せっかくだから、英語名でも覚えれたら格好いいなぁ。まぁ、私自身の知的興味はさておき、子供たちが星空に興味を持ってくれたら嬉しいな、とは思います。環境系出身としては、綺麗な空気を守ることへの意識とか、キャンドルナイトへの興味とか持ってくれたら、さらに良いんだけどなぁ(笑)==========「ワンピース・ザ・プラネタリウム」 @加古川総合文化センター http://www.kakogawa-bunka.jp/ ※上映館に関しては、コニカミノルタのこちらのページから確認できます。 兵庫県では、今現在、加古川でしか見られないようですね。[会期]土・日・祝日・冬休み(12/21~1/6)・春休み(3/25~31) 各日11:00~[料金]おとな(高校生以上)400円 / こども(4歳~中学生)100円 作者:コニカミノルタ(http://www.konicaminolta.jp/planetarium/index.html)
February 13, 2014
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先日、雪が降りました。温暖な瀬戸内に生まれ育った身としては、雪が降るとテンションが上がります。ご近所の子供たちもそうだったようで、妻が「雪が降った日は、子供のいる家がすぐ分かる。子供のいる家の前には雪だるまが出来ているから。」と言っていました。さて、雪の日ということで、本棚から引っ張り出してきたのはこの本。雪わたり [ 宮沢賢治 作 ・いもとようこ 絵 ]宮沢賢治さんの書く、日本語の美しさももちろんですが、いもとようこさんの描く、かわいらしいキツネの絵がとても素敵な一冊です。お話自体、教訓めいたことも、難しい話もなく、子供たちがキツネの幻燈会に誘われて、楽しんで帰るというとても素直なストーリー。テキストだけなら、もう少し深く読むことも出来るのでしょうが、いもとようこさんの絵が、楽しい物語の世界に、難しいこと抜きで誘ってくれます。「キックキックトントン キックキックトントン キックキックキックトントントン」「かた雪かんかん、しみ雪しんしん。」なんてリズミカルな文章が、音読していて とても気持ち良く響く、「声に出して読みたい日本語」な一冊でもあります。冬の雪国の大変さに思いを馳せつつ、少し幻想的な物語世界の雪国で楽しんでみるのも良いかもしれません。
February 12, 2014
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久々のお芝居は、日岡神社の参集殿にて。『播磨國風土記』より、景行天皇の話。題して『アユを食べないミカドのお話』。前段が講演会で、『播磨國風土記』の資料を頂いていたので、それと照らし合わせながら拝見したのですが、「原作」に忠実に、かつ大胆にアレンジしてあって、非常に面白く楽しいお芝居でした。正直、高校演劇は、気恥ずかしい気分もあり、あまり観る機会を得ることはなかったのですが、さすが東播磨支部大会最優秀校にして兵庫県大会優良賞受賞校、お客さんを上手に巻き込んでのパフォーマンス、同世代受けしそうなネタ振り、息を合わせてのセリフ回し、人数の多さをうまく生かした構成、難しいセリフも難なくこなし、役者それぞれが生き生きと演技していて、本当に素晴らしいお芝居に仕上がっていました。==========播磨の国に、妻を求めて旅に出る景行天皇。ところが、目指す「印南別嬢」(いなみのわきいらつめ)は、姿を隠してしまいます。彼女を見つけるきっかけとなったのは、彼女の飼っている白犬でした。探すうちに行った景行天皇の行為が、地元の地名の由来となっていきます。出会った二人は結ばれ、幸せな家庭を築きました。時代は流れ、彼女が亡くなった時、日岡の地に墓が作られました。しかし、その身体は川に流されてしまい、櫛箱と肩掛けだけが埋葬されることになったのでした。==========『播磨國風土記』で淡々と語られる「歴史」に光を当てると、こんな面白い物語が立ち上がるのか、と感心しました。----------「印南別嬢」は、『古事記』では「針間之伊那毘能大郎女」「伊那毘能大郎女」、『日本書紀』では「播磨稲日大郎姫」「稲日稚郎姫」と表記され、大碓命(おおうすのみこと)・小碓命(おうすのみこと)の母とされます。小碓命(おうすのみこと)は、後の「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」。日本古代史のスーパーヒーローです。----------日岡神社は、この大碓命・小碓命の双子の出産の際に、天伊佐佐比古命が安産祈願を行ったとされ、安産の神様として、今でも厚い信仰を集めています。==========所縁の地で、それにふさわしい物語を見る。なかなかに素晴らしい体験をさせて頂きました。============東播磨高校演劇部「ヒガハリMAX!」 『播磨國風土記 アユを食べないミカドのお話』 @日岡神社参集殿 (兵庫・加古川)2014/02/02(日) 作;東播磨高校演劇部 演出;東播磨高校演劇部 出演;東播磨高校演劇部東播磨高校演劇部 :http://www.hyogo-c.ed.jp/~higashiharima-hs/club/Drama/Drama.html日岡神社:http://www.hiokajinja.or.jp/
February 4, 2014
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あらためて新年が明けました。私は、数年前から「月と季節の暦」を愛用しているのですが、このいわゆる「月暦(旧暦)」での新年が明けたことになります。----------アジアの各国では、これで新年を祝う国も多く、中華街の「春節祭」はこれにあたります。旧暦の世界では、1~3月が「春」なので、暦の上ではちょうど「春」が始まったわけですね。梅の花もほころび始め、正に「迎春」です。----------さて、今年は「太陽暦」とちょうど一か月違いなので、「月暦(旧暦)」と「太陽暦」の日付が一致します。つまり、今月3日には「三日月」が見えますし、15日には「十五夜」の月が、16日には「十六夜(いざよい)」の月が見えるのです。なかなか古典の世界を実感することって出来ませんが、この機会に、今月は少し古典気分を楽しんでみてはいかがでしょうか。
February 1, 2014
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だそうです。 なるほど、1(アイ)31(サイ)ね。 しばらくセンター試験国語をネタにしたせいで、不倫だ、夫婦喧嘩だ、なんて話題ばかりだったので、ほっとします(笑) え? 愛妻エピソード? のろけ話は長くなるのでやりません(笑) でも、正直、愛妻と恐妻って紙一…何でもありません。ありませんよ。
January 31, 2014
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妻のことは大事だけど、不倫相手に心惹かれる夕霧(夫)。妻は、大きい子を家に残し、小さい子らを連れて実家に帰ります。妻は夫と顔を合わせようとすらしません。==========センター試験の古文は、なかなか難儀なこのシチュエーションの中で、夫婦間のやり取りを、どちらの発言か考えながら訳していく、という問題を問5として出します。----------選択肢を整理すると、このような感じになります。※わかりやすくするために、選択肢にだいぶ手を加えています。==========(1)A:夫「お前は年甲斐がない。多くの子供をなすほど深い仲なのに、少しの出来心くらいで実家に帰るなんて」B:妻「恋のやりとりを楽しいと思っている人間の気が知れない。あなたの心が離れた自分は変わりようもないから何をしようと勝手です。子供たちのことは、後はよろしく」(2)A:夫「子供たちをほったらかしで女御のもとに入り浸るなんて軽率だ。子育ての苦労くらいで実家に帰るなんて無責任だ」B:妻「浮気者との間の子を育てるのは飽き飽きです。子供たちはそちらで世話してください」(3)A:妻「年甲斐もなく、恋にうつつを抜かして、子供たちのことを忘れるなんて親として無責任でしょう」B:夫「私の気持ちはもはやもとに戻りそうにもないが、子供たちだけは見捨てずにいてくれれば嬉しい」(4)B:妻「あなたに愛想をつかされた自分だし、今更性格を直すつもりはない。私のことはともかく、子供たちだけは面倒を見てほしい」C:夫「言いたいことは分かったが、私の名誉も考えてほしいね」(5)B:妻「私に飽きたあなたの気持ちがもとに戻るはずもなく、お好きになさればよいが、子供たちへの責任は負って頂きたい」C:夫「穏やかなお言葉ですね。でも、このままだと、名誉が傷つくのはあなたの方ですよ」==========…怖いよぅ。なんか、どれもトゲトゲしているよぅ。----------(2)は妻が女性のもとに通ってる感じになるので、「?」な会話になっていますが、(1)の男性主義的な発言、(3)の開き直り、(4)(5)の妻に対する挑発…。(5)の「穏やかなお言葉ですね。」とか嫌味発言だし。----------いや、まぁ、浮気の結果、妻が実家に帰って顔も合わせてくれない、というシチュエーションですからね。----------古典の本当の面白さは、こういう男女の機微的な部分にあって、中高生にその面白さを伝えるのは難しい、という話をよく聞きますが、まさか、その部分が(まぁ、もっとハードだったり、あからさまだったりのシーンではないにせよ)センター試験に出るとは。一人で読み解く分には楽しいですけど、このシチュエーションを高校生に説明するのは難しいなぁ(笑)
January 30, 2014
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古典の世界の倫理観は、今とは違うもののはずです。だから、我々の感覚からすると突飛な内容であっても、それがテキストに書いてあったら「正しい」のです。もっと言えば、現代国語でも、感情移入できるかどうかは別問題で、テキスト通りに登場人物の心情を読むことが基本です。さて、前回からの続きで、2013年度センター試験から、古文の問4の選択肢を見ていきましょう。「「雲居雁(くもいのかり)」の夫である「夕霧(ゆうぎり)」は、妻子を愛する実直な人物で知られていたが、別の女性(「落葉宮(おちばのみや)」に心奪われ、落葉宮の意に反して、深い仲となってしまった。以下は、これまでにない夫の振る舞いに衝撃を受けた妻が、子供たちのうち姫君たちと幼い弟妹たちを連れて、実家へ帰る場面から始まる。これを読んで、次の問いに答えよ。」こんなシチュエーションを前提に、夫の心情について選ぶのですが、===========(1)妻をずっと実家に居座らせるわけにもいかず、 一方でおとなしく自宅に戻りそうにもないので、 どうしてこんな女を良いと思ったのかと、 妻をいまいましく思っている。(2)妻には出ていかれ、落葉宮は落葉宮で傷ついているだろうと想像され 心労ばかりがまさるため、 恋のやりとりを楽しいと思っている人間の気が知れないと、 嫌気がさしかけている。(3)眠っている我が子の愛らしさに、 この子を残して家を出ていった妻の苦悩を思いやって心が痛み、 自分はつくづく恋愛には向いていないのだと悟り、 自分の行動を反省している。 (※ 妻が連れて行ったのは小さい子らで、大きい子たちは家に残っています。)(4)落葉宮と深い仲になったものの、 不思議と落葉宮と妻との間で心が揺れ、 妻の乱れる心の内を思うと、気持ちが落ち着かず、 自分の行動を後悔して、死にそうなほど苦悩している。(5)落葉宮を愛していても、妻がいる限り先が見えず、 落葉宮も現状に悩んでいるかと思うと心穏やかではなく、 世間の目も気になって、 妻との生活が嫌になり、別れたいと望んでいる。----------まずからもって、(1)の選択肢。自分が不倫しておいて、「いまいましく思う」ってどうなのよ、って話ですが、世の中、自分勝手な人はこんなことを思ったりしなくはないのでしょう。でも、それを高校生に選ばせるの?って思います。(2)も、「恋のやりとりを楽しいと思っている人間の気が知れない」って、ただの八つ当たりですし、自分が不倫愛にうつつを抜かしておいて、何を言っているんだ、と思います。(3)(4)は、まぁ、身勝手は身勝手ですが、現代でも通じる反省かな、と思います。(5)は、なんか、この先、犯罪小説に発展しそうな展開ですね。答えは、前後の文脈と、傍線部の訳からして、(2)なんですけどね。心労の種を蒔いたのはお前だろ、って話です。==========しかも、この夕霧(夫)、落葉宮は会うことすら拒否していたのに、無理やり押し入って、不倫に及ぶ、という非道っぷり。その後も拒否する落葉宮に、「もう噂になっているから、僕を拒否したら、余計に世間体が悪いよ」と言ってのけます。そんな野郎に「恋のやりとりを楽しいと思っている人間の気が知れない」って言われてもね。===========『源氏物語』を書いた紫式部はもちろん女性ですが、当時の倫理観がどうであったのか、誰にどんな感情移入をしながら書いたのか。また、当時読んでいた女性がどう感じたのか、「このクズ」なのか、「私もこんな人に言い寄られたい」なのか。まぁ、現代の倫理観に照らすのは、古典の理解の仕方としては、良くないこと、なんですけどね。このお話は、問5に続きます。※前回と同じく、わかりやすくするために、選択肢に少し手を加えています。
January 27, 2014
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不倫について、高校生に聞いてみたいと思います。というと、問題がある気がするのですが、それが問題になっているのです。今年のセンター試験の古典は、『源氏物語』より「夕霧の巻」でした。ええ、まぁ、『源氏物語』というチョイスはありだと思うのですけどね。問題文から省略引用します。「雲居雁(くもいのかり)」の夫である「夕霧(ゆうぎり)」は、妻子を愛する実直な人物で知られていたが、別の女性(「落葉宮(おちばのみや)」に心奪われ、落葉宮の意に反して、深い仲となってしまった。以下は、これまでにない夫の振る舞いに衝撃を受けた妻が、子供たちのうち姫君たちと幼い弟妹たちを連れて、実家へ帰る場面から始まる。これを読んで、次の問いに答えよ。」…現代語の説明からなかなか衝撃的ですが、本文も、問題文もすごいことになっています。===========「心苦し」の説明としてふさわしいのは?(1)妻は、子供たちを実家に連れてきたものの、 両親の不和に動揺する子供たちを目にして、 愚かなことをしたと思っている。(2)妻は、我が子を家に置いて出てきてしまったものの、 子ども達が母を恋い慕って泣いていると耳にして、 すまないことをしたと思っている。(3)夫は、妻に取り残されてしまった我が子の、父の姿を見つけて喜んだり、 母を求めて泣いたりする様子に心を痛め、かわいそうだと思っている。(4)夫は、置き去りにされた子たちが、 妻に連れていかれた子たちをうらやんで泣く姿を見て、 我が子の扱いに差をつける妻をひどいと思っている。(5)姫君(子ども)達が、父母の仲違いをどうすることも出来ないまま 母の実家に連れてこられ、 父のもとに残された兄弟たちを気の毒だと思っている。----------正解は(3)なのですが、(4)とか、夫、非道すぎ。(5)では、子供に気を遣わせすぎ。(1)にしても、(2)にしても、妻が責任を感じてる感じ、なんだかなぁ、です。===========この後の問4、問5もなかなかえげつない選択肢が並んでいるわけですが、それはまた明日にでもお話ししましょう。てか、改めて問いたい。高校生にこんな問題出しちゃいますか?
January 23, 2014
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親讓りの国語得意で小供の時から得をして居る。なぜそんな得意だったのかと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。==========理由あって、「国語」を勉強中です。「国語」を教えて欲しい、と言われ、どうすれば良いか思案中なのです。古文や漢文については、教えたこともありますし、説明も出来ますが、現代文は何をどう教えたら良いのか難しい。正直な話、国語は、小学生の時から得意だったので、基本的に勉強したことがないのです。もちろん、漢字や熟語の勉強はしましたし、授業はしっかり聞いていましたが、定期考査で試験勉強をしたことはないですし、大学入試対策も、あまり勉強をした覚えがありません。それでも、センター試験では200点満点中192点。嫌味でも自慢でもなく、本当に得意だったんです。==========しかし、教えるとなると話は別。自分の思考プロセスを説明することは、とても難しいのです。そこで、本屋で各予備校の出している参考書をパラパラ確認してみたのですが…絶句。「本文をよく読みなさい」「前後の文章をしっかりチェック」「段落の前半に下線部があったら後半を、後半に下線部があったら前半を確認」えっと…そこから?てか、その程度の話で良いの?てか、その程度も出来てないってこと?確かに、基本的過ぎて、学校では教えてもらえないのかも知れない。それにしても、お金を取って教えるほどの内容ではないと思ってしまいます。もちろん、実際に受ける授業の内容は、本文に即して、これを実践していくことで読みを深める、というような形式なのでしょう。==========うーん。まぁ、そうやって理解を確認していって、思考プロセスを整理してあげる、という他ないか。できる限り面白い文章を提供して、試験のための勉強にならないように導いていくのが、せめてもの務めでしょう。==========テクニックに走ればつまらない。成績につなげにゃ意味がない。とかく国語は難しい。
January 22, 2014
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先日、FBで発音の話になった。国内でも「訛り」というのはあるし、それが法則化されていることもある。しかし、これが海外となると、法則を知らないと読めないことがある。例えば、ドイツ語では「J」を「Y」、「V」を「F」、「W」を「V」と発音する。なので「Japan」は「ヤーパン」と発音するし、「Wien(ウィーン)」のことを「ヴィエナ」と呼ぶ。==========ドレスデンの美術館に、とても綺麗な人物画があった。作者名のところに「Vermer」とあったので、「このヴァーマーって画家は、フェルメールに似た感じの綺麗な絵を描くなぁ。」と思いながら見ていた。そこから去る時に、日本人観光客の団体とすれ違った。添乗員さんが「フェルメールの絵はこちらです」と案内していた。その時に気付いたのだ。「V」は「F」発音をするから、「Vermer」は「フェルメール」と読むということに。人知れず赤面してしまったことは、心の奥に仕舞った秘密の一つである。==========さて、題名の「Jordan」である。英語読みだと「ジョーダン」となろう。家にあった民芸品に「Made in Jordan」のシールがあったので、少し首を傾げた。冗談にしては、手が込んでいる。この国の公用語が何かは知らないが、ドイツ語読みで謎は解ける。簡単なので、答えは書かない。==========スペイン語ではニンニクのことを「アホ」と言い、「AJO」と綴るそうである。ということは、「J」を「H」発音するわけだ。そうか、だから「Japan」は「ハポン」なのだな、と分かった次第。「ヤーパン」「ハポン」、同じ綴りなのに、「日本」も忙しいことである。
January 15, 2014
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年年歳歳花相似歳歳年年人不同(ねんねんさいさいはなあいにたり さいさいねんねんひとおなじからず)小学校の卒業メッセージで恩師が書いて下さった言葉。自然は大きく変わらねど、人間は毎年成長できるはずだ、という意味で送って頂いた。==========さて、今日は子供の誕生日だった。あっという間の3年間だった気がする。寝返りをうち、発声をするだけでもすごいと感じたのに、歩き、走り、喋るようになった。誕生日の概念も理解している。まさに、「人不同(ひとおなじからず)」である。==========翻って、自分はいかほどに成長できたか。ただ流されるだけの毎日を送ってきたのではないか。安易に堕しているのではないか。子供の誕生日を祝いながら、心の中でそんなことを思ってみる。今年一年、自分はどれだけのものを得、どれだけのものを返すことが出来るだろう。「Restart!」を今年のテーマとしたのは、目標の再設定の意図もある。子供の成長以上に、様々な立場それぞれで成長を遂げねば、「親父の背中」とは言えなかろう。誇れる背中で向き合えるように。まずは一歩ずつ。==========※冒頭の漢文は、劉希夷作の「代悲白頭翁」という詩の一節であり、全文を読むと、違う意味に取れるが、それについては割愛。
January 15, 2014
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夏目漱石先生の『夢十夜』の中に、木を彫刻するのではなく、木から仏像を彫り起こす仏師の話がありますが、円空の仏像を見る度に、私はこの話を思い出し、この話を読む度に、脳裏に円空の仏像が浮かぶのです。東京国立博物館の第5室という比較的狭い空間の中は、円空の仏像に満ちていました。力強い鉈と鑿の彫跡を残しながらも、繊細で優しい造形の神仏たち。 私はワタリウム美術館さん主催の「飛騨に円空仏を訪ねる」という旅行に参加して、千光寺さんにも2度ほど訪れていますが、何度見ても円空仏の「ありがたさ」に圧倒されてばかりです。しかも今回は、秘仏である「歓喜天」が、全身を観られる形で出展されていました。ご開帳の時ですら、厨子を開けるだけだというのに。小さくて見過ごしてしまいそうな像ですが、本当に必見の仏様です。(象頭の仏様2体が抱き合っている姿だということを知らないと、何を彫っているか分かりにくいかもしれません。)円空仏を観てしまうと、「現代」美術家の木彫など、木を弄(もてあそ)んでいるだけにしか見えなくなります。(『シュテファン・バルケンホール展』感想 参照)「山川草木悉有仏性」の思想を背景とした、木に対する敬意、多くの人を自らの手で救おうとする心、単なる美術品ではなく、民衆の心に寄り添う「仏」であるからこそ、美しく、人を感動させるのだと思います。「飛騨に円空仏を訪ねる」の旅行の際、先生から教えて頂いたのは、どの仏様にしても、今でもずっと信仰の対象として大切に祀られているものだから、単なる美術として鑑賞してはいけないよ、ということでした。なので、今回も、心を込めて、手を合わせながら、拝見させて頂きました。昨年、円空・白隠と、民衆の心に寄り添ってきた仏様を年始から拝見できたのは、本当にありがたいことでした。さて、今年は何に出会えるだろう。==========「飛騨の円空」 @東京国立博物館 http://www.tnm.jp[会期]2013.1/12~2013.4/7[休館]月曜日[料金]一般 900円 / 大学 700円 / 高校生 400円 / 中学生以下無料 作者:円空※今回の画像は、公式HPより引用させて頂いています。
January 11, 2014
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昨年の今頃は、東京で美術館を半日で6館回るという無茶をしました。ちょうど行きたい美術展が目白押しで、自由時間は東京到着から夜までの半日だったのです。その頃はまだこのblogも休止中だったので、感想など、美術館ボランティアの冊子にまとめて書かせて頂きました。先日の「会田誠」「坂口恭平」の記事は、そこからのブラッシュアップ転載。で、今回は、少し新年らしくありがたい展覧会の感想を転載。----------渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで行われていたのは、民衆に寄り添った禅僧、白隠禅師の展覧会でした。円空は、生涯に十二万体の仏像を彫ったと言われますが、白隠もまた生涯に書画を数万点描いたそうです。しかも、僧でありながら、当時の幕府・大名の奢侈を批判し、書物が発禁処分にされるなど、その反骨精神は、独特の諧謔とユーモアと相まって、唯一無二の力強さを発揮しています。この展覧会の見どころというべき作品は、何と言っても観る者を圧倒する「達磨」達。それぞれ、大きさと言い、筆の勢いと言い、ド迫力と形容するほかありません。中には80代の作品もあるのですから驚きます。こういう迫力ある作品の一方で、ユーモアあふれる、観る者の心をなごませる作品が多数あります。禅僧として、与える相手に応じ、分かりやすいメッセージを託したり、厳しい叱責の言葉を与えたりしていたのでしょう。----------宗教が、人の心に寄り添うものであるならば、そのアプローチの仕方が音楽であれ、美術であれ、人の心に伝われば「正解」なのだと思います。昨年、加古川青年会議所の例会で、加古川にある名刹、教信寺の和尚によるコントラバスの演奏と法語を聴かせて頂く機会がありましたが、これもまた、「分かりやすいメッセージ」の一形態なのだろうな、と。ともあれ、迫力ある達磨の絵に睨まれるだけで、背中を警策(きょうさく)で叩かれた気になれる、見応えのある展覧会でした。==========「白隠 HAKUIN」 @Bunkamura ザ・ミュージアム http://www.bunkamura.co.jp/museum/index.html[会期]2012.12/22~2013.2/24[休館]1/1のみ[料金]一般 1400円 / 大学・高校生 1000円 / 中学・小学生 700円作者:白隠※今回の画像は、公式HPより引用させて頂いています
January 10, 2014
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「かぐや姫」のお話を知らない方はいらっしゃらないでしょう。では、その元となっている「竹取物語」のストーリーの概要を説明できますか?大抵の方は、月に帰る話、とイメージするのではないでしょうか。しかし、この物語のハイライトは、「求婚譚」にあります。やってきた5人の求婚者に、それぞれ出される難題。それぞれの求婚者は、それぞれ知恵を出して、その難題を切り抜けようとします。誰がこの難題をクリア出来るのか?かぐや姫の恋の物語の行く末は?というお話。もちろん、最後はかぐや姫が月に帰るわけですが、求婚譚の部分における、それぞれの解決の方法や結末は、意外と現実に即していて、実はSFよりも、ミステリ寄りだったりします。この「竹取物語」の面白さを知ったのは、小学生の時。星新一先生訳の「竹取物語」で、でした。竹取物語 [ 星新一 ]リズミカルな文体で、独自の解釈も交えつつ、無駄なく語られるストーリーは、さすが星新一先生。豊富な言葉遊びに彩られる原作の面白さを教えられたのもこの本です。文語の原文がついているのも有難い。ちなみに、私の持っている本のカバーは、角川映画「竹取物語」公開当時のもの。竹取物語 [市川崑 沢口靖子]てことは、私の持っているこのカバーのかぐや姫は沢口靖子さんなんだ。映画情報を見ると、市川崑監督作品だし、えらく豪華なキャスト陣ですが…あまりにSF過ぎて、小学生ながらに違和感覚えまくりだった覚えが。今見たら、また違う感想を持てるかもですねぇ。---------最近、ジブリ映画「かぐや姫の物語」の関連で本屋さんに平積みされているのを見て、懐かしく思い出しました。(C)2013 畑事務所・GNDHDDTK映画「かぐや姫の物語」この作品情報を楽天エンタメナビで見る映画も見たいですけど…その余裕はないかな?いつか子供とビデオで、ということになりそうです。
January 8, 2014
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『土佐日記』を読みました。とは言え、原文のみで読めるわけもなく、林望先生の『すらすら読める土佐日記』という解説付きの本で、ですが。(念のため「今でしょ!」の人ではないですよ。)すらすら読める土佐日記 [ 林望 ]いやぁ、面白い。実に面白い。林望先生の解説が、非常にあたたかく、分かりやすい。解説というより、もはやツッコミの域ですが。「男もすなる日記というものを 女もしてみんとてするなり」この有名な書き出しから、紀貫之の意図した「面白ポイント」を、丁寧に拾いながら説明が進むので、当時の読者の気分を追体験しながら読むことが出来ます。今なら日本国内、ほぼどこからでも1日で移動は可能なわけですが、当時の「土佐」から「京都」までの実に遠いこと!距離的な遠さだけでなく、足止めを食らい続ける時間的な長さが、不安と焦燥を掻き立てます。軽妙な文章で、皮肉、諧謔を織り交ぜながら、その「時間」を活写し、共に旅する気分に浸ることが出来る、というのは、正に「紀行文学」だなぁと思います。そして垣間見える任地先で失った自分の娘に対する思い。あくまで書き手は「女」なので、自分の仕える主人夫婦の娘、という「設定」になるわけですが、時折顔を見せる、この「あはれ」が、全体の雰囲気を引き締め、「おもろうてやがてかなしき」世界を作り出しています。----------受験生の頃は、文法やら文字面を追うことだけで、「古典は得意」と言いながら、本当の意味で楽しめてはなかったのだなぁ、と感じた読書体験でした。
January 7, 2014
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あけましておめでとうございます。新年のご挨拶がすっかり遅くなってしまいました。とはいえ、振り返ってみると、このblog自体、長らく更新が滞っていたわけで…。毎年恒例にしていた、一年の振り返りも長らくやっていませんでしたし、年頭の「今年のテーマ」も数年放置したまま。(2011年・2010年・2009年・それ以前はリンク割愛)昨年最後の記事が、11月に書いた「カブトエビ」の話だ、ってのも頂けません。というわけで、今年のテーマは「Restart!」新年、心改めて、仕事に趣味に子育てに、懸念事項に蹴りを入れて、新しいことにも積極的に楽しく取り組んで参りたいと思います。
January 6, 2014
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「カブトエビ」という生き物をご存じだろうか。田んぼなどにいる、形は「カブトガニ」に似た、小さな生き物である。(wikiでの説明はこちら下記写真もwikiより)小学生の頃、学校からの帰り道、田んぼを覗いては、飽かず眺めたりしていたことを思い出す。捕まえて飼おうとかは思わなかったけれど。----------さて、先日のことである。台所にレシピカードが置いてあった。目に留まったのは、何か違和感を感じたからだ。そう、そこには、こう書いてあったのだ。「かぶとえびのあっさり煮」…絶句した。食べるところはなさそうなのに、いや、干しエビやちりめんみたいに使うのだろうか、つまり一部の地方では食べる風習があるのか、それにしても旬は冬ではないだろう…一瞬の間にそんなことを考えて、はたと気づいた。そう、これは「蕪と海老のあっさり煮」なのだと。これならば、普通に美味しそうである。材料もシンプルで、料理としても簡単そうだし、体も温まりそうだ。----------なお、うちの食卓には、まだどちらの料理ものぼっていない。
November 27, 2013
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11月1日、たまたまお昼についていた「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングで、会田誠氏が登場していました。文章で書けば、さらっと一言ですが、正直「お昼の番組に、この人を出してはいかんだろう」と目を丸くしてしまいました。一般的な「いいとも」視聴者層への認知度が高いとは思えないし、展覧会はとっくに終わっているし、何が目的の、どんなアートテロなのか。番組自体はタモリさんが上手く転がして、放送事故になることもなく無事に終了していましたが、(最後の会場アンケートで、微乳フェチを公言した挙句「ノーブラの人」の人数を聞き、それにタモリさんが悪乗りをして「ノーパンの人」の人数を聞いたのは、お昼の番組としてはギリギリな感じでしたが)、見ているこちらが妙な緊張感を味わいました。==========会田誠氏は、現代の美術のアカデミズムに対して、鋭く容赦ない批判を作品で投げかけている一人です。5年以上も前、「ぴあ」に載っていた、「美味ちゃん」シリーズの展覧会紹介記事を見た時の衝撃、「雪月花」シリーズをパルコで見た時の衝撃は忘れられません。会田誠氏が「現代日本美術」を語る上で、無視できない作家であることに間違いはないでしょう。紺洲堂主人さんは、彼の画集(私も持ってますが)を本屋で買って、サインをもらったと仰ってました。会田誠天才でごめんなさい [ 会田誠 ](画集がなかったので展覧会関連の書籍リンクです)=========さて、過去の話になりますが、会田誠氏の展覧会が森美術館で行われているというので観てきました。そもそも、「天才でごめんなさい」という題名からして、拒否感を覚える人も多いことだろうと思いますし、そして、その拒否感に違わず、良識のある美術好きには、苦痛でしかないだろう作品が、これでもかと展示されている展覧会でした。という書き方をすると、まるで会田誠氏の作品を嫌悪しているかのようですが、しかし、これは決してマイナスの批判ではありません。----------「美しい絵」が描けてしまうからこそ、テーマ性とのギャップによる「毒」が生まれます。そして、その「毒」は、我々の「良識」をあざ笑い、揺さぶります。それこそが会田誠氏の作品の真骨頂であり、我々自身の「下劣さ」、社会が蓋をしている「臭いモノ」を鮮やかにえぐり出すことで、見事な現代批評となっているのです。=========一面の金屏風に、精緻なタッチで実物大のゴキブリを一匹だけ描いた作品。----------日頃、金屏風の作品を有難がって見ている自分がいます。その作品に対する評価を決めるのは自分自身であって良い、という美術を楽しむ上での根本をどこかに置いて、権威主義的な見方をしている部分は、決してゼロではありません。----------だからこそ、超絶技巧で描かれるゴキブリが、凝り固まったモノの見方をほぐしてくれるのです。=========巨大で美しい瀧の絵を背景に、スクール水着姿の女子高生が何十人と水と戯れる姿が描かれるかと思えば、一見、数人の女子高生をテンポ良く画面に配しただけに見えて、良く見るとエグい「腹切女子高生」という、題名通りの作品もあります。=========また、小学生が学校で描かされるいわゆる「標語絵画」に大人として、子供風のタッチで挑んだ連作は、その偽善性を容赦なく暴きます。----------無批判に、「標語絵画」を微笑ましく見ていた自分がいます。しかし、関西に帰ってきた時に見て、ぞっとさせられた関西電力による、少女を起用した原発礼賛のCMと、「標語絵画」にいかほどの差異があるのか。----------福島以降なくなりましたが、原発CM自体を否定するつもりはありません。大人が自己責任で原発を礼賛し、推進することについては、議論の余地こそあれ、表現の自由、思想の自由の範囲内でしょう。CMへの出演についても然りです。自分で納得して、推進のCMに出ることに問題はないでしょう。しかし、大人がお金を貰って、納得した上で作られるものと、知識もない少女に「CO2を出しません!」と礼賛させるものとは、根本的に意味が違います。次世代(=少女自身)に禍根を残す可能性があるものに対して、その是非の判断も出来ないいたいけな子供に礼賛させるその無神経ぶりに、吐き気すら覚える悪夢のようなCMでした。----------そんな「思想の押しつけ」が「標語絵画」には潜んでいるのです。もちろん、その多くは、清らかな善意で成り立ってはいるのでしょう。しかし、一歩間違えると「中学生によるヘイトスピーチ」のような歪んだ何かに結びついてしまいかねない、ということを忘れてはなりません。=========さらに18禁指定されている部屋に展示されているのは、「雪月花」をはじめ、残虐性と反社会性を感じさせるとんでもない作品群。----------「雪月花」や「美味ちゃん」を見た時、美しいと思ってしまった自分がいます。そして、美しいと思った後に気付かされるのです。それを美しいと思ってしまう感性の中に秘められた自分自身の中にある残虐性や下劣な気持ちに。これは、本当に嫌な体験ですし、あまりしたくもない告白でもあります。=========これら「考えさせられる」ことを通じて、自分自身を、社会を見つめなおすきっかけを得られる、それが会田誠氏の作品の凄さなのです。観に行った甲斐のある、素晴らしい展覧会でした。「いいとも」の次は「徹子の部屋」ですかね?黒柳さん相手に下ネタってありなのかなぁ?どう考えてもアートテロだよなぁ。==========『会田誠展:天才でごめんなさい』 @森美術館 http://www.mori.art.museum/jp/index.html[会期]2012.11/17~2013.3/31[休館]会期中無休[料金]一般 1,500円/学生 1,000円/子供(4歳-中学生) 500円作者:会田誠
November 8, 2013
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blogの更新を怠っていた間、アート的な世界から少し遠ざかっていたとは言え、何も見ざる言わざる聞かざるだったわけではもちろんなく。先日、文庫化された坂口恭平氏の『TOKYO一坪遺産』を読みました。(この本の感想については後日。)TOKYO一坪遺産 [ 坂口恭平 ]世の中の音を聞く耳を持っているかどうかが一流アーティストの証ならば、会田誠氏や、坂口恭平氏は、間違いなくそれを聞き、作品にする力を持っています。----------この本を手に取ったのは、氏の名前を知っていたこともありますが、何よりもこの1月にワタリウム美術館で行われていた「坂口恭平 新政府展」に行ったからです。それにしても、この1月のタイミングで、坂口氏をアーティストとして呼んでアートさせる、ワタリウム美術館のキュレーション能力の高さには、心から脱帽です。==========さて、展覧会のお話。坂口恭平氏は『独立国家の作り方』の作者として、ご存知の方も多いかと思います。独立国家のつくりかた [ 坂口恭平 ]坂口氏は福島の原発事故を受けて、故郷熊本にゼロ円で避難所を作り、たくさんの人を受入れ、その過程で、「政府」の在り方に疑問を持ち、「独立国家」宣言をしたわけですが、この展覧会では、その思想の根底を垣間見ることが出来、更にはその思想が展開していく過程、未来の一端に触れることが出来る、そんな展覧会でした。----------ドローイングについては、この展覧会の関連出版である『思考都市』を参照ください。思想家としてではなく、アーティストとしての坂口氏の作品を覗き見ることが出来ます。思考都市 [ 坂口恭平 ]絶妙なバランスで聳え立つ、脳から飛び出してきたかのような、「思考都市」の数々。(上の本の表紙のイメージです)妹尾河童先生の絵を思い出させる、細密で精密な記録画群。ラフな筆致で描かれたスケッチも、そのテーマ性、切り取り方に個性が表れています。----------そして、4階に「展示」されているのは、坂口氏の思考をそのままマッピングしたイメージマップ。横溢する言葉とイメージが、線でつながれ、次の関連を呼び、さらに展開されていく過程を見ることで、我々は坂口氏の思考をトレースし、思考の一端を追体験することが出来ます。同時に、このトレース作業によって、自分自身の考えも新たに呼び覚まされ、このマップは無限の展開を見せていくことになるのです。----------さらに、今回の展覧会で秀逸なのは、ワタリウム美術館の裏手(青山の一等地!)にゼロ円で住宅改装して共同生活を営んでいること。もちろん訪問可能です(参加も可能)。私が行った時はちょうど鍋をしている最中で、食べていけと勧めて頂きました。なんだか、何かが温かい。そして、この温かさこそが、経済成長の過程で我々の失ってしまったものだったのではないかと考えさせられます。==========教育の方向は捻じ曲げられ、マネーゲームを基準に経済が騙られ、「人を殺せる国へ」の政治が罷り通り、奇しくも大臣の仰った通り「ナチスに学ぶ」五輪の開催発表が行われ、庶民の幸福感とも経世済民とも程遠い所で政治が行われる、そんなとてもステキな現在に対する、強烈なアンチテーゼと言える展覧会。頭の中に「返り咲き」のお花を咲かして、勝手に国民から白紙委任状を取り付けた気で好き勝手している思い上がった政治家どもよりも、よっぽど人間らしく真っ当な価値観が、ここにはあります。----------「人間」あるいは「身体」の延長線上に手の届く範囲で生きる、という等身大の生き方の提示は、真の意味でのパラダイム・シフトと言えるのではないでしょうか。経済を数字のゲームから解き放ち、経済成長の源泉に教育の敷衍による選択可能性の拡大を置いた、ノーベル経済学者アマルティア・セン博士の思想にも通じると私は思います。我々は、経済の先でも、政治の先でもなく、思考の先に、人間らしい生き方を取り戻すことが出来るのかもしれない、そんなかすかな未来への希望を抱かせてもらえる、ディープな展覧会でした。==========「坂口恭平 新政府展」 @ワタリウム美術館 http://www.watarium.co.jp[会期]2012.11/17~2013.2/3[休館]月曜[料金]一般 1000円 / 学生(25歳以下) 800円 (会期中何度でも入場可)作者:坂口恭平 http://www.0yenhouse.com/
November 7, 2013
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兵庫県の中西部に、生野という、かって銀山として栄えた街あります。現在は朝来市生野町と呼ばれていますが、この街出身の「生野の三画伯」と呼ばれる画家がいます。明治末期に活躍した、白瀧幾之助・和田三造・青山熊治の三人です。----------お名前をご存じない方も、明治期を扱った現代美術の展覧会等で、知らず知らずの間に出会っているはず。----------姫路市立美術館では、2010年に没後50年「白瀧幾之助展」、2009年には「和田三造展」を行っていますので、今回の「青山熊治展」で、平成20年代の三画伯の美術展は一巡することになります。(三画伯について詳しくはこちら)==========展覧会は、青山熊治の画業を年代順に振り返る、オーソドックスな構成。初期作品については、画壇デビュー作の「老坑夫」、「アイヌ」等、一種プロレタリア的な重厚なテーマの取り方と、それに呼応する、暗い中に人物像を浮かび上がらせるレンブラント調の光の扱い、力強い描き方が印象的。----------1914年、シベリア鉄道経由でパリを目指した青山は、第一次世界大戦勃発の煽りを受け、ロシアで足止めをくらい、モスクワやペトログラードの美術館で模写をしながら勉強を重ね、スウェーデン、ノルウェーを経て、ロンドン、そしてようやく1915年、パリへ。パリを中心にフランスに長期滞在し、イタリア、スペインへも足を伸ばしたりしながら、1922年に帰国します。この時期の作品については、原画と比較しながら、模写作品が展示されているのですが、ルノワールやドラクロア、歴史叙事大作など、それぞれの画風をしっかりと学び取っている姿が浮かんできます。それとあわせて展示されている、風景画や人物画などの作品群からも、しっかりと何かを吸収してきた姿が垣間見えてきます。----------しかし、日本画壇への本格復帰は、1926年の「高原」を待たねばなりませんでした。帝展に出品されたこの作品は、当時の最高賞を受賞。少し遠く湖を望む高原に、服を脱ぎ、微睡み佇む裸婦たち。3mにも及ぶ画面の大きさ、弓なりの全体構図、裸婦が自然に溶け込んでしまうような淡く不思議な色彩感覚、思わず足が止められてしまう独特の雰囲気が、この作品にはあります。これと並んで展示されている、翌年の帝展に出品された「雨後」も、不思議な作品です。キャンパスの中心に、重なり合って描かれる、力強い馬たち。おそらく、小さな作品であれば、ごちゃっとした感じになってしまうのでしょうが、大作であるが故に、それがのびのびとした感じになるのは、構成の妙ということでしょう。「淡いが力強い」この色彩感覚は、初期の作品と同一人物とは思えない程です。----------何より大作が似合う作風という感じが強い展示のされ方から一転、次のコーナーでは肖像画、静物画に焦点が当てられます。この中では、「老婦人像」が秀逸。「いるよね」と思わせる、雰囲気の捉え方が本当に上手い。また、静物画の「上手い」を狙うのではなく、雰囲気を活写する描き方は、セザンヌの静物画に通じるものがあります。----------後半では、九州大学工学部の壁画や「九十九里」など、大作を描くに当たって描かれた習作、下絵が展示されています。パーツ毎それぞれの人物像や、構図を描いた下絵など、一つの作品それぞれにかけられたエネルギーを感じることが出来ます。どれだけの試行錯誤があって、「作品」に至るのかを思うと、良い作品を作りたいという作家の「業」を見ているような気がします。----------最後のコーナーは自画像。これらを見ると、厳しくも優しそうな画家像が見て取れます。==========それにしても、この画業にして46歳での死はあまりにも早く若い。最初から最後まで、作品の迫力に圧倒された展覧会でした。==========青山熊治展 @姫路市立美術館(兵庫・姫路) http://www.city.himeji.lg.jp/art/[会期]2013.09/14~10/20 [休館]月曜[料金]一般 800円/学生 500円/小中学生 200円作者:青山熊治
November 2, 2013
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(C)2013 フジテレビ 東宝映画「清須会議」この作品情報を楽天エンタメナビで見る公開前なので、映画はまだ見ていないのですが、原作を読みました。清須会議 [ 三谷幸喜 ]本屋で流れてた映画紹介のDVDで、三谷幸喜さんが、映画は本と違うアプローチだから見てね、って言ってました。それにしても、豊臣秀吉役に大泉洋さんというキャスティングには、ちょっと唸らされます。人懐っこくて、憎めなくて、でも、どこか何か企んでいる、そんな役を説得力を持って演じられるのは、まさに人徳でしょう。そもそも、キャストが贅沢すぎ。私からすると、キャスト表を見ているだけでも幸せな気分になれる映画です。==========さて、小説版の物語は、「本能寺の変」における、織田信長の独白から始まり、それから15日後、柴田勝家が本能寺を訪れるシーンへとつながっていきます。この15日の間に、豊臣秀吉が毛利との戦いを切り上げて戻ってきて、丹羽長秀の軍勢と合流し、山崎の合戦にて明智軍を打ち破っていました。明智討伐に加われなかった柴田勝家は、丹羽長秀からの助言を得て、織田家の後継者と領地の再分配を決める「清須会議」の開催を織田家の宿老達に提案します。ここからが物語の始まりです。----------織田家の誰が後継者を担い、それを支えるのは誰になるのか。織田家後継候補たちのそれぞれの思惑。信長の妹、美貌のお市の方の思い。軍師黒田官兵衛の活躍。そして開催されるイノシシ狩り。それを受けて変わる情勢。前哨戦の3日間を経て、いざ会議という名の戦場へ!誰が誰につき、誰が最後に笑うのか。会話劇では描き切れない、それぞれの思惑を活字にすることで、駆け引きの裏側まで見せて楽しませながら、思いもかけない展開をみせる物語は、まさに言葉のジェットコースター。さらに、会議という「戦」の後の駆け引きも、ハラハラドキドキと楽しませてくれます。そして我々は、「それはまた別の話」ではあるものの、豊臣秀吉が柴田勝家を破り、天下人となるという、その後の展開を知っているわけで。だからこそ、ラストには少しのほろ苦さと、切なさを感じてしまいます。==========全文、「現代口語文」で書かれているのが、展開の面白さを引き立たせています。本来、時代劇は「見てきたような嘘を言い」の世界で、あくまで「お約束」として、それっぽいセリフ回しで進んでいくわけで、本当に当時の言葉のままが使われる時代劇なんて、あり得ない。でも、どうせ見てきたような嘘を言うのなら、このような「現代口語文」で、心情に踏み込んでも構わないわけです。舞台の世界では、違和感なく行われてきた手法ですが、小説やドラマ(時代劇)にすると、斬新な感じになりますね。---------- また、戦国時代、というアクション満載の時代を背景にしながら、「会議」という舞台設定なのも、面白い点です。 今回映画で柴田勝家役を演じられる役所広司さんが宮本武蔵を、益岡徹さんが佐々木小次郎を演じられた、三谷幸喜脚本の抱腹絶倒の舞台『巌流島』も、決戦前夜の宿を舞台にした会話劇で、巌流島という題名にも関わらず、決戦のシーンを描かないという、驚きの展開だったのを思い出します。あるいは、三谷幸喜さんの代表作から引用するなら、映画化もされた『十二人の優しい日本人』や『笑の大学』の密室会話劇を連想する方が正しいのかもしれません。12人の優しい日本人 【HDリマスター版】笑の大学 スタンダード・エディション会議室という「密室」からくる緊張感が、戦国時代という舞台を背景にしたことで、より高められ、「笑い」以上に「言葉」の密度が高い、良い意味で様々な期待を裏切ってくれる、小気味よい作品です。----------文庫本のペリー荻野さんの解説が、非常に上手に上記の点を指摘されていて、わが意を得たりだったので、そこから展開させたような感想になってしまいましたが。----------さてさて、映画はどうなりますことやら。豪華キャストによる演技対決、楽しみにしたいものです。
November 1, 2013
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大宮エリーさんの名前は、NHKらしからぬNHK番組「サラリーマンNEO」の脚本家として知っていました。大阪の中之島を川沿いに歩いている途中、ふと目にした展覧会の看板。脚本家、だよね?というクエスチョンを頭に載せつつ、ふらりと立ち寄ってみることにしました。----------「愛の儀式」と銘打って、赤・青・緑それぞれの色のイメージを詩に書いて、それぞれのイメージとコラボレーションした部屋をプロデュースする、空間演出とでも言うべき作品。赤の部屋は、マグマのイメージ。生命力あふれる大地の営み。青の部屋は、海底のイメージ。生命が発生する母なる海。緑の部屋は、ジャングルのイメージ。生命を癒す森の空間。詩の言葉がそれぞれに力強く、生命力を感じさせられますそれぞれの照明に彩られた空間に足を踏み入れると、流れているそれぞれの音楽の雰囲気と相まって、不思議と落ち着いた気持ちにさせてくれます。題名の通り、何かの儀式が今にも始まりそうな、狭い部屋がワクワクする無限の空間へと広がりを見せるような感覚。 ----------非常に面白い空間表現ではあったのですが、この「答え」はあまりにストレートで、何か新しい視座を得られるというより、なるほどね、と納得する感じで、空間演出・空間デザインとしては美しいけれど、現代美術として観てしまうと、意外性、面白さには欠ける、かなぁ、と。その意味では、正しく「デザイン」の範疇なのかな、と思いました。----------緑の部屋が、カフェと一体となっていて、カフェ自体の演出になっていたのは、とても面白く、ちょっと混んでいたのと時間がなかったので、写真も含めて遠慮しましたが、ここでお茶でもしていれば、また違う感想を持てたのかもしれません。----------現代美術的な視座での感想を述べはしましたが、とても居心地が良い空間で、作家さんの「生」を感じられる、面白い展覧会でした。この展覧会は終わってしまいましたが、年内、同じく大阪は難波の「dddギャラリー」で「大宮エリー展」が開催されるそうです。==========『愛の儀式』 @中之島デザインミュージアム (大阪・中之島) http://designde.jp/[会期]2013.09/20~10/20 [休館]会期中無休[料金] 大人 : 300作者:大宮エリー==========『「大宮エリー展」-7年のOL時代と、7年間の今-』 @dddギャラリー(大阪・難波) http://www.dnp.co.jp/gallery/ddd/[会期]2013.11/05~12/20 [料金]入場料無料作者:大宮エリー※大宮エリー公式サイト http://ellie-office.com/生きるコント [ 大宮エリー ]
October 28, 2013
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10/21はオリオン座流星群が極大になる、ということで、夜、ベランダに出ました。明るい月がオリオン座の方角に眩しいくらい輝いていて、流れ星が見えないのは、そのせいかと思うくらい。なかなか見つけられないまま時間が過ぎ、でもせっかくだし1つだけでも見たいなぁ、と思っていたら、月明かりをものともしない明るい一筋の流れ星。あまりにも突然、あまりにも一瞬で、願いをかける余裕はありませんでした。もっと見たい気持ちはありましたが、寒くなってきたので、お部屋に退散。ぐっすり寝ている我が子を見ながら、いつか一緒に天体観測出来たら良いなと思った秋の夜でした。
October 23, 2013
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なのだそうです。私自身も、そう呼んで頂くことも多いのですが、しかし、この言葉、私自身はあまり好きではありません。父親も育児を楽しもう、というコンセプト自体は理解できるし、賛同もするのですが、共働き家庭も多い現在、本来的には、育児うんぬん以前に、夫婦間の家事分担比率の問題ではないかと思うのです。なので、「育児だけ」に重点を置いてしまうと、問題の本質がずれてしまうのではないか、と。==========現実に「家庭内労働」としては、子育てのみならず、料理、洗い物、掃除、洗濯、ゴミ出し、お風呂の用意、近所づきあい等々、いろいろあるわけです。もちろん、それを全部一方に押し付けて「我関せず」というのは、昔の世代ならいざ知らず、今どきの世代の人間であれば、論外と思いますが、家事負担の分担の話を飛ばして、「育児しているかどうか」を判断基準みたいにしてしまうのはどうなのか、と。==========私自身は、一人暮らしで自炊もしていましたから、我流ではありますが、一通りの家事は可能ですし、時間のある時は出来る手伝いをやっています。子供と遊んだり、「育児」的なこともしますが、それ以上に、「育児」と直接関係しない、これらの手伝いこそが、「育児」への一番のサポートなのだと思っています。平たく言うと、「オムツを替えた回数」よりも「食器片づけて洗い物をした回数」の方が、母親にとって価値がある場合もあるのではないか、ということです。あくまでも、夫婦間の価値観の問題なので、どっちが正解、というのはないですが。==========正直、私が危惧しているのは、真面目な人ほど、仕事もして、育児参加もして、と自分を追い詰めかねないのではないか、ということです。男性の「育児ノイローゼ」、いや「イクメンノイローゼ」が増える日が近いという気がします。だって、男性で家事が出来ない、苦手な人もいるでしょう。あるいは、仕事の関係で、疲れて帰って、時間的・肉体的に無理な人もいるでしょう。そこに、「子育てに参加しないあなたはイクメンじゃない」というレッテル貼りをされたら、逃げ場をなくしてしまいかねません。==========本来、他人の家庭と比較する問題でなく、あくまで夫婦間の家事分担、労働分担の話し合いの問題のはずが、言葉が一人歩きして、「非イクメン」狩りに向かってしまっている気がするのです。プライベートなことであるが故に、二人がちゃんとしっかり納得していれば、どんな分担比率であろうが、他人が(アドバイスは出来ても)とやかく言うことではないはず。==========まぁ、とはいえ、今回のお話自体、「家事を手伝う気がある男性」という性善説に基づいた話で、「そうは言っても何も手伝おうとしない男性」であるとか、「暴力で相手を従わせようとする男性」とかについては、文字通り「論外」なのですけどね。
October 19, 2013
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さて、昨日、ラジオに投稿したお話をさせて頂きました。(こちら)「お芝居」をテーマに、NHKラジオ「すっぴん」に送った内容が下記になります。==========学生の頃、「お芝居」をしていて、舞台に立ったこともある私。プロポーズに際し、自分にしかできないことをしようと頭をひねり、プロポーズの文面を手書きの手紙に書いて渡し、彼女が見ている前で暗唱して見せることにしました。心を込めて書いた手紙、時間にして7分。たった一人の観客の前での「お芝居」は、大勢の観客の前で「お芝居」するよりもずっと緊張しました。なんとか最後まで演じ切り、花束を渡して(指輪は要らないということだったので)、頂いた返事はイエス。文字通り、一世一代の大芝居でした。花束を渡した時、彼女は泣いていました、と言うと、高橋先生から「それも演技だよ」とツッコまれるかもですが(笑)==========「すっぴん」の高橋源一郎先生、藤井アナウンサーからは、「僕もされたい」「かっこいい」「どんな手紙か知りたい」との有難いお言葉を頂きました。---------まぁ、でも、難しいです。自己満足、自己演出と言われたらそれまで。相手が喜んでくれてこそのサプライズだし、プロポーズ。「指輪不要」と言われて、必死に演出を考えたらこうなった、というだけですし。---------え? どんな手紙か知りたい、ですって?リクエストにお応えしたいところですが、時間となってしまいました。残念ですが、今日はこの辺で。See You!
October 19, 2013
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小学生の頃、朝食の時はラジオを聞いていた。今思えば、母が時計がわりにしていたのだろう。----------関西ではメジャーな「ありがとう浜村淳です」が好きで、浜村さんの声や諜り方、また、映画以上に面白く、オチまでバラすこともしばしばの過剰で素敵な映画解説から受けた影響は大きい。http://www.mbs1179.com/arigato/----------中学に入って、ラジオを聞くことはなくなリ、大学からはテレビ中心になった。社会人になっても、東京にいる間は聞くことはなかったけれど、兵庫に帰り、車移動が増えて、また聞くようになった。----------午前中はNHK、午後・夜はKissFMというのが、だいたいのパターン。時々、地元FMのBanBanラジオをかける。移動の時間は大体決まっているので、聞く番組も決まってくる。http://www.nhk.or.jp/r1/http://www.kiss-fm.co.jp/http://www.banban.jp/radio/----------朝のNHKのニュースの声を聴いて、アナウンサーをしている後輩が大阪支局に来ていることを知った。時々TVでも顔を見る。----------「すっぴん」を聞くのは、月曜か金曜だ。月曜日、フィフィさんの元気さも良かったが、今の松田悟志さんも、爽やかで良いな、と思う。金曜日は、高橋源一郎先生。知的で隠やかで、時に皮肉な語り口が楽しい。「源ちゃんの現代国語」のコーナーは、聞ける機会こそ少ないが、小川洋子さんの「パナソニックメロディアスライブラリ」と合わせて、僕の読書指針の一つだ。http://www.nhk.or.jp/suppin/http://www.tfm.co.jp/ml/==========さて、今日のお話をしよう。投稿のテーマは「お芝居」だった。----------「お芝居をする」=「演技する」というのは、日常ではあまり良い意味に使われない。ラジオから流れてくるのは、そんなマイナスイメージの「お芝居」の話ばかりで、だから僕は投稿したくなった。----------運転中に文面を考えていたので、仕事の合間にさくっと打って投稿。再び仕事に戻って車で移動。ちょうど目的地到達前に、「今日は最後にもう一通お便りを」という形で紹介してもらった。----------内容からして、たぶん読まれるだろうと思っていたが、読まれるまで緊張感は独特だな、と思う。そして、文面も、藤井アナウンサーに読んで頂くと、自分の文章という感じがしない。実際に僕の書いた内容は、また後日。----------高橋先生のツッコミも予期して予防線を張っていたのだが、意外にも、「かっこいいよ」「その涙は本物だよ」と褒められた。って、内容を飛ばしたら分からないか(苦笑)----------自分の書いた文章が、プロのアナウンサーに読まれて、全国に届いていると思うと、やはりなんか不思議な気分。本来なら遠い存在の、藤井アナウンサーが、高橋先生が、すごく身近に感じられるのも、ラジオの魅力だなと思う。なるほど、投稿者の方々って、この感覚に中毒になるのか、と少し分かった気がした、NHKラジオ初投稿体験であった。
October 18, 2013
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久しぶりのお芝居は、劇団ここからさんの本公演。チラシの説明で、題材が重いことは知っていたのですが、役者さんの上手さのおかげで、一層ズシンと心に刺さるお芝居でした。題材が題材だけに、不愉快な表現も混じるかもしれませんが、ご理解ご容赦ください。============舞台は、性犯罪の被害を受けた経験を持つ4人の女性が共同生活を送る山奥のロッジ。そこにオーナーの孫娘であり、実家の雑貨屋を手伝う女性が訪ねてきますが、生憎の雪で帰れなくなってしまいます。折悪しく、メンバーの一人は、裁判を終えて帰ってきたところ、しかも、裁判結果が思わしくなかった上に、裁判員の一人が知り合いであったことに傷ついていました。語られる現在の裁判制度の欠陥、加害者の背負う罰の軽さ、被害者の人権への無配慮。そんな中、一人の男性遭難者が、寒さに凍え、身動きも取れない状態で、助けを求めて訪ねてきます。遭難者を助けるのが当然と思っている雑貨屋の娘の前で、何もしようとはしない4人。あまつさえ、遭難者を見殺しにしかねない状況の中、雑貨屋の娘は4人の説得を試みますが、助けて欲しい時に助けてもらえなかったそれぞれの心の痛みが、それを邪魔します。膠着する「議論」の中、雑貨屋の娘はある行動に出ます。その行動は、その後の彼女達の人生を変えていくきっかけとなっていくのでした。============とまぁ、あらすじを書いたわけですが、いや、本当に重いお芝居でした。明るさの見えるラストの展開に希望を見ることは可能ですが、とはいえ「午後からまた新しい人が来る」という、リアルな重さも同時に描かれるわけで。作品の中でも言及されますが、「男性社会」の中で積み上げられてきた法律体系の下では、被害者、特に性犯罪被害者の人権に配慮しきれていない部分があるのは当然なのかな、とも思います。----------先日、どこぞの野球選手が、殺人の被害にあった女子高生を揶揄して「自業自得」と呟いて炎上したそうですが、相手の同意なくそのような写真を流出させるのこと自体が言語道断ですし、バラ撒くことを脅し文句にするのは立派な恐喝であって、殺した方、脅した方、バラ撒いた方が悪いのは、自明の理。例えば、被害者を自分の彼女に置き換えて、元カレが写真をバラ撒いたとしたら…この選手は、まぁ、それを理由に別れるか、彼女に対して暴力を振るうのでしょうね。元カレを糾弾するのではなく。選手として何流なのかは存じませんが、人としてはそのレベルだと言うことです。恐ろしいのは、この選手の考えに共感するような人間が少なからずいること。彼女の脇の甘さはあったのかもしれません。それでも、殺される謂れはない。そして、この話は、殺人を媒介にしているからこそ公に語られていますが、性犯罪の被害は、もっと陰湿で危険、悪質なものに他なりません。痴漢の冤罪事案や、女性車両の導入を指して、逆差別等を堂々とのたまう輩もいますが、被害者の気持ちへの配慮、サイレントマジョリティに「思いをいたす」ことの出来ないそういう考え方には、正直、怖さを感じます。----------さて、肝心のお芝居のことですが、何より、役者さん達に、心からお疲れ様と言いたい。役を演じるのは、ただでさえエネルギーのいる行為ですが、今回のお芝居は、それぞれの役が「重い過去」を背負っている以上、そこまで背負う必要があります。話を聞くだけでもつらい内容なのに、それを自分の口で、自分の体験として語る。演じててつらかったろうな、と思います。(ただ一人、そこまでの重い「過去」を背負わない守永さんは、方言指導入ってましたし(笑))そして、さすがの斉藤さん。唯一の男性役で、ほとんどセリフがないにも関わらず、その存在感、「復活」してからのセリフの冴えは本当に見事。男性出演者は斉藤さん一人ですが、演出も、男性が演出するからこそ難しい部分は多々あったのだろうな、と。----------そして、ホールはアラベスクホール。コンサート主体の、船底みたいな天井が特徴のホールですが、声の響きに微妙な反響があって聞きにくい部分があったのが残念。音楽ホールは芝居用ではないのだなぁ、と思いました。以前見たのは音楽とか子供のミュージカルとかだったからなぁ。しかし、こんなホールだからこそ、ほとんど音響を使わず、澤田さんによるギターの生演奏を幕間に挟む演出が活き、暗くて重い物語の幕間に、温かな演奏が心を和ませてくれました。============いろいろ考えさせられる、本当に「社会派」なお芝居でした。正直、次は、カラッと明るいコメディが観たいです。(アンケートでは「推理劇」に○しましたけど。)============劇団ここから 第28回公演 『春の遭難者』 @アラベスクホール (兵庫・加古川)2013/10/13(日) 作;滝本祥生 演出;戸野本和久 出演;守永知世 / 田口陽子 / 冨田京子 / 橘美恵子 / 井川瑛美 / 斉藤宰(フリー)ギター;澤田繁一
October 13, 2013
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ちびはち [ エドワード・ギブス ]表紙であり、題名にもなっている「ちびはち」が、何かから逃げているようです。「なんでにげるの?」という問いかけに、その次のページに逃げる理由となっている生き物が描かれます。それぞれの生き物が、追われ、追いかけ、円環を形作る。食物連鎖、という概念とは少し外れてはいますが、その入り口になっています。訳が谷川俊太郎さん。動物の名前を正確に、というよりも、オノマトペとしての動物への呼びかけを大切にして訳されています。本来、絵本の動物の絵も、それが動物として「正しい」のか、というと違うわけで(だから、私は動物の写真集を買って見せることでバランスを取っているつもりです)、動物の名前を正しく覚える、ということよりも、楽しくリズムよく読むことに重点が置かれていることが、この独特の絵とマッチして面白い。読み終わると、裏表紙の円環の絵の意味が分かります。子供は終わった後で、裏表紙で遊んでいました。非常に楽しい本でした。
October 8, 2013
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『ついておいでよ』 [ 松田素子 ]子供の想像力って、面白いなぁ、と思うのです。例えば絵本。文字が読めない分、自分の聞いた話を再現しようとしたり、あるいは絵から受けるイメージで新しいストーリーを作ったり。===============お父さん、お母さんに本を読んでもらえなかった主人公の女の子は、ぬいぐるみのネズミと、お友達であるネコと一緒に本を読むことにします。表紙のウサギさん、カメさんと一緒に本の中で「おさんぽ」するうちに、おサルさんやクマさん、ライオンさん、ゾウさん達と出合い、みんなで一緒に森の音楽会に向かいます。。===============この、本の中に入っていく、メタフィクション的な作りが面白い。そして、「現実」に戻ってからラストへの持って行き方がとても素敵です。子供なら、主人公に共感する部分は大きいんじゃないかなぁ。とても楽しく読ませて頂きました。
October 5, 2013
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いないいないばあ [ 松谷みよ子 ]「絵本選び」でこの本を目にしないことはまずないでしょう。それほどの定番中の定番、ですが。内容は、ネコ、クマ、ネズミ、キツネ、最後にのんちゃんが、それぞれ「いないいない」「ばぁ」をする、というもの。ページをめくらせるタイミングと絵が秀逸な作品です。だいたい読む時は、ネコ(普通)、クマ(低め)、ネズミ(高め)、キツネ(しゃがれ声)という感じで声色を使って読んで、最後、のんちゃんの後に、本人にやってもらうようにしています。本人も面白そうです。やはり、多くの人が薦める絵本だけあるなぁ、という作品です。
September 14, 2013
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メディアアート、というと小難しく聞こえますが、私自身は「触れたり、作品に関わったり、体験したりして楽しむことが出来る、ちょっとデジタルな作品」のことだと理解しています。さて、明石市立文化博物館では初のメディアアートの展覧会ということで、子供が楽しめる展示だと良いな、と期待しながら行ってきました。----------最初の作品は、アトリエオモヤによる「光であそぶ」。これが秀逸で、白い布にビー玉をたくさん載せて、上から光を当てている、という作品なのですが、下の空間が、ちょうど子供の背が届く高さで、ジャンプしてこのビー玉を散らせるわけですね。すると、音と共にビー玉が広がって、カラフルな影が散らばります。シンプルなだけに、楽しくて美しい作品。----------影を使った「Kage's Nest」「Glimmer Forest」は共にプラプラックスの作品。前者は、丸い光の空間に足を踏み入れると、自分の影とは別に、飛行機や鳥やサルなどの影が生まれて動いていく、という作品。後者は、立木のオブジェにある光のスポットに手をかざして影で隠すと、そこから「何か」の影が生まれる、という作品…なのですが、自分の影で、いまいち何が生まれたのかが見えないままなのは残念でした。----------鳥の羽を使った一連のオブジェは、小松宏誠さんの作品。真っ白な羽を組み合わせたオブジェが、風にくるくると回り続ける様は、本当に美しいですし、孔雀の羽を使った時計も美しい。----------パーフェクトロンの「inside-out」は、この1月に東京駅ステーションギャラリーで見た電車の作品に引き続いての出会いとなります。真っ暗な部屋の中、ミニチュアの都市を、小さな電球をつけた車が走り抜けます。電球に照らされて現れる街、それ以上に、それによって生み出される影の変容と動きのダイナミックさ、それでいて静謐に流れる時間、素晴らしい作品で、ずっと見ていたい気にさせられます。うーん、でも、正直に言いますと、ステーションギャラリーの作品の方がダイナミックで面白かったな、と。----------真鍋大度/比嘉了氏による「happy halloween!」は、顔認識をうまく利用した作品。椅子に座ると、大きなスクリーンに自分の顔が映し出されます。すると、その顔に、不思議なマスクがかかるのです。顔を一度隠すと、別なマスクが。自分の顔が、次々と少し怖い顔に変身します。自分の顔の変身に来館の子供たちも大喜びしていました。なのですが、この時期になぜ、ハロウィンなのか、と。アイデア自体は面白いのに、マスクも「思い付き」のレベルですし、季節の選び方も含め、今一つ洗練されていない感じは否めませんでした。----------この、多分、今回一番人気だっただろう作品に見られるように、展示数にしても、内容にしても、雰囲気にしても、洗練されていない感じが残念。本当は、子供も楽しめる、とても楽しい展覧会でした、とまとめたいですし、それはそれで間違いないのですけれど…子供向けのとっつきやすさ、と言えばそうなのですが、ICCの展覧会が好きだった身からすると、子供にこそ「本物」のスタイリッシュさを感じてもらいたい、というのが正直な気持ちです。(岩井俊雄先生の作品とか)まぁ、子供が楽しんでいたから良かったっちゃ良かったんですけどね。----------同時期にICCもキッズプログラムだったのですね。いつか体験させてやりたいなぁ。http://www.ntticc.or.jp/Archive/2013/KidsProgram2013/index_j.html急ぐ必要はない、と思いつつも、自分ではさせてあげられない、こういうハッとする体験って、どこかで…というのは言い訳ですね。本当は子供をだしに、自分が行ってみたいのです。==========『博物館が大変身!光の魔法とあそぼう 魔法の美術館』展 @明石市立文化博物館 (兵庫・明石) http://www.akashibunpaku.com/[会期]2013.07/13~09/01 [休館]会期中無休[料金] 大人 : 800 大高生 : 500 中学生以下 : 無料作者:パーフェクトロン他
September 13, 2013
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