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2014.02.03
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ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵 

アンリ・ルソー 夢.jpg

                            「夢」    1910年 アンリ・ルソー 最晩年の代表作              

        6フィート8インチ×9フィート9インチ(204.5センチメートル×298.5センチメートル)

原田マハの 『楽園のカンヴァス』 という本を読んだ。

                           

本文より  (ルソーの詩)

Yadwigha dans un beau rêve
S'étant endormie doucement
Entendait les sons d'une musette
Dont jouait un charmeur bien pensant.
Pendant que la lune reflète
Sur les fleuves [or fleurs], les arbres verdoyants,
Les fauves serpents prêtent l'oreille
Aux airs gais de l'instrument.



甘き夢の中 ヤドヴィガは

やすらかに眠りに落ちていく 

聞こえてくるのは 思慮深き蛇使いの笛の音

花や緑が生い茂るまにまに 月の光はさんざめき

あでやかな調べに聴き入っている 赤き蛇たちも



この大作を描き上げたとき、画家は66歳だった。長らくパリ税関の入市税徴収員として勤め、
40代になってから本格的に絵筆を握った。生きているあいだにはろくに評価されず、子供の
絵だと揶揄され、笑われ続けた不遇の画家。のちに「素朴派の祖」と呼ばれて世界中の人々
に愛されるようになった画家が、死の直前まで手がけていた作品といわれている。




物語の始まり

2000年の倉敷、大原美術館の監視員をする早川織江のもとに、暁星新聞社文化事業部部長の高野智之がやってくる。

暁星新聞と東京国立近代美術館が企画するアンリ・ルソーの展覧会開催に際し、ニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵、ルソーの「夢」を借り受ける為の日本側の交渉人として、MoMAのチーフ・キュレーター(学芸部長)、ティム・ブラウンがオリエ・ハヤカワを指名しているという。

高野智之は、早川織江が一介の美術館監視員ではないことを調べ上げ、ニューヨークへの渡航を説得する。



時代は遡り、1983年、スイス・バーゼル、コンラート・バイラー財団理事長コンラート・バイラーの法廷代理人、エリク・コンツなる人物からニューヨーク近代美術館(MoMA)に勤務するアシスタントキュレーター、ティム・ブラウンに1通の手紙が届く。

ティム・ブラウンはハーバード大学修士でソルボンヌ大学にも留学しているルソー研究家である。

「アンリ・ルソーの名作を所有している。それを調査していもらいたい」

数々の名画を保有する大富豪で、誰も見たことがない伝説のコレクター、コンラート・バイラーからの手紙にティムは動揺する。

運命に導かれるままにチューリッヒ国際空港へと飛ぶティムは、出迎えの高級車に乗せられ広大な敷地の中にたたずむ城のような邸宅へと運ばれる。

邸の中の数々の美術品、そのすばらしさに茫然とするティムは、ロダンらしき彫像のそばに立つひとりの女性に気が付く。

オリエ・ハヤカワ、ソルボンヌ大学で博士号を最短26歳で取得した新進気鋭のルソー研究者、同じくバイラーから招待を受けている。

ミイラのごとき車椅子の老人、コンラート・バイラーが現れ、フランス語でふたりに挨拶をする。

執事が待ち構えたように運命の扉を開ける。そこに現れた絵は、まぎれもないルソーの「夢」そのものだった。

MoMAにある「夢」がなぜ・・ここに。 ティムは興奮する心を落ち着かせじっと観察する。

構図もモチーフも、寸分違わず、すべて同じだけれど、筆のタッチや緑の明暗が微妙に違う。 決定的な違いを一ヵ所みつける。 ソファに横たわる裸婦、ヤドヴィガの左手が・・・握られている。

バイラーは言う。 「この作品は『夢』ではない。この作品のタイトルは・・・『夢を見た』」
「君たちにこの作品の調査を依頼した理由はただひとつ。これの真贋を見極めてもらいたいのだ。」
この『夢を見た』には、近代美術史の分野における最高権威、アンドリュー・キーツの証明書が添付されているという。

では、MoMAに飾られている「夢」は贋作なのか、どちらが本物なのか。

この作品の鑑定に対し、「よりすぐれた講評を述べる者を勝者とし、本作の「後見人」として、取り扱い権利を譲渡する。」 「ただし、調査のためにしてもらいたいことが、ひとつだけある。」 

バイラーに促され執事がうやうやしく持ってきたものは一冊の古書だった。
その古書の七章からなる物語を一日一章読み、七日目に作品の真贋を判断してもらいたいという。


MoMAにあるルソーの「夢」

「ヤドヴィガ」の指先。 何かの理由でルソーは描き直した・・・。

なぜ密林なのか、なぜこの女は裸で寝そべっているのか。その指先は何を指しているのか。

そもそも、ルソーが自分で名付けた「ヤドヴィガ」とは誰なのか。





名もなきルソーを取り巻く若き芸術家たち。 シュールレアリスム(超現実主義)に目覚めつつあった頃のピカソ。ルソーの天才的な才能を認め影響を受けていたという。

1901~1904年「青の時代」(ブルーピカソ)と呼ばれているもの。暗青色を基調としたピカソの作品。
「夢」か「夢を見た」どちらかの作品の下に描かれているという。

そして、伝説のコレクター、コンラート・バイラーの正体・・・

手渡された古書を通し「夢」に関する謎が解き明かされていく。

七日間が終わり、ふたりの研究家が出した結論とは・・。

史実に基づくフィクションなので、そのミステリー性がものすごい面白かった。 

ルソーの世界にどんどん引き込まれた。

冒頭に戻り、織江とティムの17年を越えた再会へのアプローチがとてもドラマチックだった。






ルソーの作品は1910年の死後、シュールレアリスム《現実を無視した世界を絵画や文学で描く芸術運動》の画家らに評価された。



フランスの画商アンブロワーズ・ヴォラールは、1910年2月、ルソーからこの絵を買った。
それは、ニューヨークのノードラー・ギャラリーズ(Knoedler Galleries)をかいして、被服製造業者シドニー・ジャニス(Sidney Janis)に1934年1月、売られた。ジャニスはこの絵をネルソン・A・ロックフェラー(Nelson A. Rockefeller)に1954年に売った。彼はそれを近代美術館(Museum of Modern Art)の25周年を記念して美術館に寄贈した。









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最終更新日  2014.02.03 07:19:42
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