成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.05.25
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カテゴリ: 高速路線バス
先週の木曜、金曜と西日本の路線バス事業者をまわった(さらに土日は、当然、会社には内緒だが東京から家内が合流し、夫婦で唯一の共通の趣味?である小規模でお洒落なリゾートでの宿泊と食事を楽しむこともでき)極めて充実した出張だった。大雑把に言うと、西に行けば行くほど、高速バスのレベルが上がる。接客レベルも車両のレベルも上がる。そして各地域での高速バスの存在感も大きくなる。所要時間2~3時間の路線が高頻度で運行され、JRの特急と対等かそれ以上の立場で競合する姿は本当に気持ちいい。

ひとえに、各事業者の努力のたまものである。特に、その中でリーダーシップを発揮した大手事業者の熱意と、それに裏づけされた営業面、運行面、車両面での工夫には頭が下がる。

話は変わるが、私が路線バス事業者に持参するパワポ資料には、高速バスの成長の歴史を簡単に振り返ったページがある。そこでは、高速バスの歴史を3つのフェーズに分けて説明している。1960年ごろから80年ごろまでを「第1フェーズ」とすれば、正直、あまりいい成果を出せなかった時代である。事業者は、主に国鉄バスか、または沿線事業者の合弁で作られた高速バス専業者に限られていた。一定の結果を出した路線もなくはないが、東名急行のように会社ごと消滅したか、そこまで行かなくても起終点の大手事業者に面倒を見てもらう形になった合弁事業者の姿などを見ても、高速バスが苦戦した時代である。

1980年ごろからの約20年間が「第2フェーズ」で、日本の高速バスの成長期に当たる。この時期最大のエポックは、「共同運行」のシステムが定着したことだろう。共同運行のメリットは多岐に渡るが、最大のポイントは、地方の老舗事業者が自ら高速バスの運行にたずさわることで、地元において徹底した需要の掘り起こしを行なったことである。3列シートやトイレ付きといった快適な専用車両の投入がそれをさらに後押しした。

そして2000年ごろ以降が「第3フェーズ」である。主にJRバス系の進出で「マルチトラック化」が進展し、その後は高速ツアーバスの登場もあって「高速バス同士が競争する」時代になった。乗客が高速バス同士を比較しながら予約する習慣が生まれ、価格(運賃、料金)の低下を招く一方、特注のシートや女性受けするアメニティグッズなど商品力が充実した。バス同士の競争は「磁場」を生んで新しい乗客を集め、高速バスマーケットのさらなる拡大を導いている。

路線ごとに見ると、沿線合弁事業者の生き残りである東北急行が主に運行していた東京~仙台線は、つい数年前まで、『ジュラシック・パーク』の、恐竜達が生き残っている孤島のように「第1フェーズ」の面影を引きずっていた。潜在需要は十分に見込めながら1日2~3往復にとどまり続け、そのうちの1往復はなんと「夜行の各停便」で残っていたのだ。ところが、国鉄からJRになった辺りに参入した彼らが数年前から突然積極的になるとともに、その後はウェブマーケティングを活用した高速ツアーバスの草刈り場となった結果、既存事業者側(東北急行、JR系双方)も、最近では車両タイプ別、期間別などの柔軟な運賃設定を導入し、本質的には高速ツアーバスに近いビジネスモデルを展開している。「第2フェーズ」の成功体験を持たない路線、事業者だったからこそ、後発の高速ツアーバスも容易に規模を拡大できたし、既存の路線バス事業者側も「第3フェーズ」に柔軟に対応することができた。逆に、規制緩和後に同路線に参入した京王/宮城交通は「第2フェーズ」モデルを忘れきれないようで、あくまで傍目に見ての想像ではあるが、集客に苦戦しているように見える。

本日あえてこの点を書いたのは、「第2フェーズの成功例」の最たる地域を訪問し、その力強さをあらためて感じたからだ。そして私自身、趣味的?には、「第2フェーズ」が大好きなのだとあらためて感じたからだ。鉄道という大きな敵を相手に、路線バス事業者がコツコツ努力と工夫を重ねて地元の役に立つ高速バスを作り上げるというモデルは、西口でのアルバイトで高速バスと出会った私の原点でもある。一方、これはビジネスの世界では常識なのだが、前時代の遺産(レガシー)にこだわり続け変化に対応できなかった会社は、いつかは限界が来る。

普通の業界であれば、それは企業の淘汰という形で現われる。街の商店街から百貨店へ、そしてGMS(大型スーパー)へ、それもやがてコンビニやカテゴリーキラー(ヨドバシカメラなど)へと時代の主役は移り変わり、対応できなかった商店や企業は順に消滅していっている(もちろん、時代の変化に対応でき今でも元気な街の商店もある)。しかし、安全性や公益性を担保するために規制があるバスの場合、簡単には淘汰されない。そのことは、一定程度、企業を守る。だがそれは、特に高速バスのように他の輸送モードと競合するビジネスの場合、気がついたら利用者から選ばれなくなっていた、という事態を引き起こす。少しキツい例えを許していただければ、アクション漫画の決まり文句のように消費者から「お前はもう、死んでいる」と宣言されるのである。大切なことは、市内の「平バス」は公益性が高い事業だが、高速バスは(事業者の自己認識はともかく、乗客にとっては)「鉄道よりも安い」「鉄道よりも快適」を武器に鉄道から乗客を奪っていく「商品」だという点である。

繰り返すが、今回お邪魔した各事業者の高速バスは極めて元気で、今すぐに上記事態が発生するとは到底思えない。そして一愛好家?としては、その姿を眺めているのは極めて心地よい。自ら高速バスで移動し快適さに満足し、バスターミナルで高速バスを待つ長蛇の列を眺めつつ、変な言い方で恐縮だが自分でも安心感を覚えながら「変化の必要性」をあらためて思ったのである。





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Last updated  2009.05.26 10:51:36
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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