成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2009.10.22
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カテゴリ: メディア掲載情報
『バスラマ・インターナショナル』の最新号の特集「都市間バスサービスの新時代2」。『バスラマ』は以前から、同じ都市間輸送サービスに2つの異なったルールが存在することについて矛盾や問題点の指摘を続けている。その趣旨はよくよく理解できるものの、高速路線バスの現状“だけ”を「正」としている点には、和田編集長には恐縮だが私は否定的だ。問題は、公益性が大きい「平場」の乗合バス向けの規制をそのまま高速バスに当てはめている点にあるのであって、諸外国同様、高速バスには高速バスに合った規制が当てはめられていればこのような問題は発生していないのだ。

JRバス関東の万代社長も本特集のインタビューで「一般的な利便性向上に資するものならば事後届出でいいのではないか」などと例を挙げた上で「ドリーム号と市街地路線バスが同じバスである必然性は無い」とおっしゃっておられる。全く同感だ。我々は、事業をやっているのである。スポーツであれば、サッカーなら手を使ってはいけない、ラグビーなら前へ投げてはいけないとあえて厳しい制約をつけることでゲームの面白さが増すことがルールの存在意義だろうが、事業をやっている以上、消費者を保護しつつも事業の拡大に寄与することが規制の存在意義だろう。道路環境も車両も販売手法もビジネスモデルも進化を続けている中で、どの規制が必要でどの規制は変えるべきか、高速路線バス事業者の側が自ら議論し、規制の主体に対して必要な働きかけを行なっていくべきである。その点、様々な面で規制のあり方を自ら主導して変えてこられたJRバスグループには敬意を覚える。

また万代社長は「内部補助は不要になったと国から言われても、様々な事情があって赤字路線から撤退できない」とも語っておられる。この気持ちも、私はよく理解できる。このブログで内部補助を何度も否定してきたではないか、と突っ込まれそうだが、 以前にも書いた ように、どの企業でも赤字部門はある。だから、内部補助で赤字部門を維持すること自体を私は否定しない。大企業であるほど社会的責任が増し文化活動や環境対策に注力することが求められるし、地域経済への影響を考え簡単に赤字工場を閉鎖できないといった話は世の中に転がっている。問題は(JRバスの場合は違うが)、<本業>である「平場」の路線バスの赤字を<副業>で埋めるような会社が永く持つはずがないという点だ。本業の利益で副業の赤字を埋めるというのなら、私は何も言わない。

本特集ではもう一つ、ウィラー・トラベル「ビジネスクラス」の乗車レポートを中心に、高速ツアーバスの上級車両や女性専用車両が紹介されている。この「高速ツアーバスの多様化」を考える上で、販売手法の変化についての視点が多くの人に欠けている。バスに携わる人はみな、車両や座席そのものに目が行きがちだ。しかしその背景には販売手法の変化がある。ある区間において特定の事業者が独占的に事業を行なうスタイルであれば、最大公約数的に多くの人に対応した商品作り(車両、ダイヤなど)が求められる。だが、首都圏-京阪神は高速ツアーバスだけで約20社100便以上が毎日設定されている。希望の乗車日と区間を指定するだけでその日に空席がある便が一覧的に表示され比較検討できる総合予約サイトで、一人でも多くの利用者に自社の便を選んでもらうためには「めちゃくちゃ高級」「女性専用」「アメニティ付き」「ポイント付与率が高い」など、ターゲットを絞り込んだ個性ある商品がどんどん投入されることになる。

高速路線バスにおいては、運用が煩雑になる上、時には乗車効率を下げるため女性専用車などの設定は好まれないが、多数の利用者が多数の選択肢の中から好みのバスを選べる環境の下では、むしろ差別化は乗車率や単価を上げる最大の武器になる。全国展開するウィラー・トラベルなどの陰に隠れがちだが、今回女性専用車が紹介されている平成エンタープライズだけをとってみても、3列独立シートの車両だけで既に10台ある。3列の夜行車を10台揃える事業者は、高速路線バス事業者でもそう多くないのではないか。低反発素材を使用したシート(特許出願中)、個室カーテン、アメニティグッズとサービスは充実している。出発後の「皆様、いっせいにリクライニングしましょう」のアナウンスや、女性専用車両でのパジャマ貸し出しなども秀逸だ。このように、自社の高速ツアーバスに、どう「色」をつけるか工夫している会社は多い。そしてその競争が「磁場」を生み、新たな利用者を呼び寄せてくる。

万代社長のインタビューから伝わってくるように、JRバス関東に代表される既存事業者の運行面での実力(安全確保への設備投資や教育など)には脱帽する。一方で高速ツアーバス各社は利用者目線のきめ細かい商品作りでは先を行く。だからこそ、両者がお互いの強みを持ち寄って多くの利用者にアピールしていただき、高速バス市場をさらに拡大させて欲しいと、心から願うのである。





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Last updated  2009.10.22 18:13:10
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バス会社の最低限のルールって  
第4セクター さん
高速バスを運行するにあたって、最低限の体制ってどのようなものなんでしょうか?
シティライナーの破産を見るまでもなく、現状のツアーバスのような運営形態(企画催行する旅行社と、実際運行するバス会社が違う)は、管理・責任体制が曖昧になってしまうのではないかと危惧しているしだいであります。

現状、国土交通省が高速路線バスを運行するに当たって、4条認可を求めている。
というか、コンプライアンスを重視する経営をするなら、規制の厳しい法律を尊守するというほうが、経営者としての正しい方策なのではないでしょうか。
それは公共性の高い、バス会社を経営するなら当然のことだと思います。

成定さんがいつも言っているように、公共交通として、高速バスを一元的に予約できるシステムは必要だとは感じていますけど、旅行会社のシステム(予約毎に手数料を取る)というシステムは、JRバスのような販売座席数が多い会社は良いとしても、運行便が少ない中小バス会社にとっては、売り上げ減少に繋がりかねず、大手の寡占化になってしまうのではないかと危惧もしています。

まあ、はっきり言って、利用者から金を集めてトンズラかました業者が出てきた以上、催行会社と運行会社の一体化は、最低限のルールになるのではww
とも思いますね。

(2009.10.23 02:04:26)

Re:バス会社の最低限のルールって(10/22)  
nalys  さん
第4セクターさん、コメントありがとうございます。これもまた難しい問題ですね…
まず現状での事実の確認ですが、国土交通省が、通達上やメディアでの発言等で「ツアーバスに係る募集型企画旅行については、それが単なる2地点間の移動を目的としたものであったとしても(中略)道路運送法上の問題は生じない」(一例として平成18年6月30日発出の通達より引用)としている以上、高速ツアーバス業態を選んだ(あるいはサンデン・弘南のように両業態に進出した)経営者に責はないと考えます。あと用語の確認ですが、法改正以降、現在は「認可」ではなく「許可」ですね。(細かい話に聞こえるかも知れませんが)法改正を象徴する点なので念のため。
その上で、では今後どのような制度を目指すか、の議論は非常に重要だと思います。その中で<責任の明確化のため、催行会社と運行会社の一体化は最低限のルール>というのも一つの見識だと思います。逆に、双方のノウハウを持ち寄ることの意義もまたあると思います。私個人は、運行・催行・販売(用語は仮です)の分離(もちろん事業者の希望により一貫で行なうのも可)は利点が大きいという考えでそこは第4セクターさんのお考えと異なりますが、それぞれのメリットデメリットを議論することが大切だと思います。今、それを議論する公式な場がないのが残念です。なお、トラベルメディア社の件に際しては、私ども経由でご予約いただいたお客様には全額ご返金できており、(本質論ではないですが)催行と販売が別だったことのメリットの一つかとは思います(この件に関しては後日書きますのでお待ちください)。
(2009.10.23 17:57:23)

(続き)  
nalys  さん
また、<旅行会社による販売が中小事業者にとっては売上(注:これは「利益」でしょうか?)の減少に繋がりかねず寡占化が進む>というご懸念ですが、私の意見では、事業者が自ら大きな販売力を持てるなら販売会社の力は必要ないわけです。中小だからこそ、自ら広告をどんどん打ったり自社の窓口を増やしたりできないから、販売会社を使って補うということです。まして私のサイトは、事業者側の判断で日ごと便ごとに販売を委託する座席数をリアルタイムにコントロールできますから、土日は登録席数を減らし手数料が不要の自社販路だけで満席にし、逆に平日は登録席数を増やして1席でも空席を埋めるとか、乗車率の悪い便だけ登録する、といった使い方です(1日1往復程度の高速ツアーバス企画実施会社もうまく活用してくださってますよ。そもそも、取引先が干上がってしまったら私たちは事業が継続できません…)。高速ツアーバス企画実施会社はどの既存事業者と比べても明らかに「中小」ですが、それが60社にまで増加したこと自体、むしろ寡占とは反対の流れだとご理解いただけますでしょうか。
考え方はいろいろあると思いますし、特にこの問題に関しては「高速ツアーバスの存在自体が疑問」という感覚をお持ちの方が多いことは、なにせ私も比較的最近までそう考えていたからよくわかります。公式非公式問わず議論と相互理解を重ねることが重要だと考えており、今後ともコメントなどお待ちしております。 (2009.10.23 17:57:58)

Re:『バスラマ』第116号特集「都市間バスサービスの新時代2」(10/22)  
経済人@尾張藩 さん
今回の内容についてコメントさせていただきます。
第4セクターさんのおっしゃるように高速ツアーバスも路線許可を取るべしという意見も、成定さんのおっしゃるように販売と運行を別会社にすることにもメリットがあるという意見も十分に理解できます。
ここまで高速バスが発展した(というか、バリエーションが増えた)のは高速ツアーバス各社の創意工夫によるところが大きいと思います。どちらかといえば、既存の高速路線バス事業者は後手に回る場合が多かったように思います。
とはいえ、現在のように高速路線バスと高速ツアーバスが別々の法令を根拠に運行されている実態はいかがなものかと懸念しています。高速路線バスも高速ツアーバスも双方ともにメリットとデメリットを抱えている以上、高速バスに「公共性」を求めるか否かの議論とも関連するかもしれませんが、バスを使用して都市間を高速道路等を通行して結ぶ交通機関は「一つ」の法令の中で定義され、運行されるべきと考えます。その中で現在のようにガチガチにいろいろな事柄を縛るのではなく、創意工夫できる余地を残す一方、行政監査を強化すべきだと考えます。 (2009.10.25 23:32:41)

Re[1]:『バスラマ』第116号特集「都市間バスサービスの新時代2」(10/22)  
nalys  さん
経済人@尾張藩さん、いつもコメントをありがとうございます。また、いただいたコメントですが、おっしゃる意味はよくよく理解できます。高速バスを運営する上で最適な制度のあり方を議論すべきだと思うのです。
その中で、ご指摘の「公共性」(私は「公益性」という用語を使います)という観点は非常に重要かと思います。例えば電力事業(東京電力)等は、公益性の大きいことが前提で、競争をほとんど排除した制度です。ではバス事業者はというと、間違いなく乗合は公益性が大きく、貸切事業とか副業である不動産やスーパーなどは公益性が大きいと言えず、自由競争に近いです(もちろん個別に消費者保護や安全担保のための規制はあります)。高速バスはその中間。事業の本質から言うと後者に近い気がしますが…
そして、安全性を担保するために事前・事後を含む監査の強化。特に今回、運輸安全マネジメントの評価対象が拡大(高速ツアーバスを運行する事業者も対象になる)と同時に、国だけでなくNASVAが認定評価者となり評価体制が充実した点など、制度も追いついてきていると思います。
大切なことは、みなで意見を出し合ってよりよい制度を作っていくことだと考えています。繰り返しますがその公式な議論の場がないのが残念です。 (2009.10.26 20:08:59)

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