成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.01.30
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カテゴリ: バス産業
今回の出張は3つの県の県庁所在地でそれぞれ1泊ずつ。3日とも遅くまで本会議、じゃなくてお酒の席が続いた。関西で用件を済ませた後、翌日は取引先である九州産交バスへの訪問が入っていたので遠回りだが宮崎で1泊。宮崎と言えば、元同僚で今では宮崎県議会議員を務める 武井君 だ。忙しい彼だが私の出張に合わせ夜の時間を空けておいてくれて、現況など話していたら気がついたら深夜2時。私が既存事業者にばかりお邪魔しているのを聞いて「新規参入組にももっとサポートしてやらんと!」。彼は元宮崎交通の社員ながら、立ち上げから私たちのサイトにたずさわっており全国の中小貸切専業者を口説いて高速ツアーバスにどんどん引きずり込んで行く役割だったから、新しいチャンスをつかんで成長しようとしている彼らの熱い目が忘れられないのだろう。

翌日は早起きして、彼が原則毎日やっているという「辻立ち」に立ち合う。宮崎交通創業者で「観光宮崎の父」岩切章太郎翁の銅像前、という定位置がなんとも彼らしい。東京で辻立ちといえば歩行者の多い駅前などだが、この銅像前は「クルマの通勤ラッシュ」を前に演説をするイメージだった。相手がクルマだから、正直、ちゃんと聞いてくれているとは思えない。その日のテーマは外国人参政権の話だったが、あれではドライバーも武井センセイが参政権付与に賛成なのか反対なのかもわからないだろう。それでも彼は毎日あの場所で演説をしているのだ。もちろん、テレビCM同様、毎日顔を見せることで「刷り込み」になるとか、毎日辻立ちを続けることでまじめな政治家というイメージが定着するとか、長い目でのプロモーション(要するに選挙対策)にはなっているだろう。だがそれだけで早朝から毎日は大変だろう。

議員としての彼は、民主党にも自民党にも属さず若手3人で会派を作っている「改革派」だ。古いしがらみに縛られた宮崎の政治を変えようとしていて、例えば本人は「先生」と呼ばれるのをひどく嫌うなど「いわゆる政治家」「いかにも政治家」に見られないよう、あるいはそうならないよう注意している。一方、演説を聴いて感じたのは、やはり彼は演説がうまい(そういえば、商談でのプレゼンも演説風だった)。というか、演説が大好きだという感じが伝わってくる。歩行者に握手を求められても、その握手が見るからに上手だ。感じたのは、ああ彼は本当に政治を、宮崎を、そして宮崎の政治を愛しているからこそ、政治、宮崎、そして宮崎の政治について考えに考えた結果、本気で「宮崎の政治を変えよう」としているんだな、ということだ。あの変革への意思は、「いわゆる政治」が嫌いだからではなく、「いわゆる政治」を愛するが故なんだなと感じたのである。バスという産業に強い思いを持つからこそ、それを変えようとしている自分自身と重ねあわせ、勇気をもらって宮崎を離れた。

最終日に訪れた街では、その県には交通を専門とする研究者の先生が3人しかいらっしゃらないのに、地元の既存事業者の社員さんと一緒に、その3先生が揃って迎えてくださった。なるほど大学の先生というのは意外と忙しく、大学の就職委員になったりすると企業回りなども大変そうだ。もちろんご自身の研究と講義、そして地域公共交通会議の委員など大変そうだ。「交通」と名がつけば何でも飛んでくるようで、経済学部で交通論を担当なさっている先生は、地元の路線バスの交通事故についてテレビ局からコメントを求められたと苦笑されていた。たしかに明らかにお門違いだ。しかし私は、その件は極めて象徴的だと受け取った。

「地方分権」というきれいな言葉で公共交通についてのかなりの責任が国から地方自治体に移った。路線バスが赤字で撤退するとか、コミュニティバスを走らせようとかという際に、かなりの権限を公共交通会議が実は握っている。しかし実際には、本当のご専門は物流だとかシステム工学だとかいった先生方までその会議に動員せざるをえない。バスを専門とする研究者が各県に何人もいるはずがないからだ。先日ご一緒した先生方は皆さんバスに対しても熱心で、利害関係者の調整も上手そうなお人柄だったからおおむねうまくいくだろうが、それでも、たまたまそういった研究者に恵まれた県の町村は、コミバスを走らせてほどほどに成功するかも知れない。事業者もメリットがあるし、地域住民にも喜ばれるだろう。しかし今バス産業に吹いている逆風は、果たしてそのような個別の成功事例を作ることで跳ね返せるようなレベルなのか。○○県は国立○○大学の先生が、△△県は私立△△経済大の先生が、というように個別に壁にぶち当たりバラバラに模索しているのだとすれば、それは余りにもムダが大きい気がする。たしかに名古屋大の加藤博和先生の言うとおり「バスは東京の会議室を走っているんじゃない」んだとしても、バスが抱えている構造的な問題は全国共通であり、それなら中央で英知を結集して仕組みとしての改善を考え、各地域ではいかにそれを地域の実態に合わせてアジャストするかに特化するべきではないか。

バスに求められているのがもし「小さな改善」であれば、より地域に密着した取り組みをコツコツ積み重ねるボトムアップ型の改革が有効だろうが、いまバスが直面している課題はもっともっと構造的なものだ。「公共交通」「バス」にたずさわる研究者の先生は全国合わせるとかなりの数になるはずだ。その先生方の知恵を体系的に持ち寄り今後のバス産業のあり方を考える背骨にしていかなければならないと感じた。いわば「バス産業憲法」作りだ。そうしなければ、今後間違いなく地域の路線バス事業の赤字額が増加する中、今まで以上に税金を投入してもらう「大義名分」が立たないだろう。つまりはバス路線を維持するための方策の研究であり、事業者側が業界全体で本気でこれをサポートする価値は十分にあるはずだが。

全国どの街にお邪魔しても、地元のバス事業者や研究者の皆さんと食事をご一緒しながらバスの将来を熱く語る「サロン」のような場ができるようになってきた。それぞれの県でバラバラに開かれている「移動サロン」状態だから、横のつながり作りの意味もこめて年に一度でいいから「全国大会」を開いてみたいものだ。人との出会いは、それがさらに新しい出会いを呼んで、もっと輝きを増すのだと思う。





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Last updated  2010.01.31 19:39:18コメント(0) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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