成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.02.15
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カテゴリ: 高速路線バス
高速路線バスの共同運行事業者どうしで「ツアーバスの攻勢に立ち向かうにはどうすればいいのか」という話題になることが多くなったようだ。様々な地域でそういう話を最近よく聞く。単に私の耳に入るケースが増えたということでもないようで、既存事業者の理解ある担当者によると「ようやくそういう議論が始まったよ」とのこと。私が全国の既存事業者にお出ししている資料が紹介されたりして、「高速ツアーバスの成長は、ウェブによる販売力をうまく活用したからで…」という議論となり、「じゃあ我々もウェブの販売力を手に入れるにはどうすればいいんだ?」というような話になっているということだ。

そのこと自体は、私としてはもちろん喜ばしいことである。少なくとも、当初の「違法だから行政を使って締め出せ」、その後の「価格が安いから伸びているんだ(だから我々には戦いようもないんだ)」という高速ツアーバスへの一面的な認識よりは何倍も理解が深まったということだろう。そのような議論が始まること自体は大きな進歩だとした上で、より多面的なアプローチをお願いしたい。

そもそも、「ウェブでの販売力」とはいったい何なのか? もちろん、「プッシュ施策とプル施策があって…」というような話は私は彼らに何度も繰り返している。高速バスに関心がない一般的な消費者に対し高速バスの魅力を伝え次回の移動を高速バスに誘導するのが「プッシュ施策」。これは言うまでもなく私たちの独壇場だ。会員組織(6000万人)が高速バス予約以外のサービスと共通なので、メールマガジンを配信するとか、関連性の高い他サービス(例:顧客層が重なる大学生向け就職活動情報サービス)の画面上でバスの情報を露出するといった取り組みだ。一方で、今まさに高速バスを予約しようとしていて、どうすれば予約できるのか迷っている人を自分たちのサイトに誘導するのが「プル施策」。代表例が検索エンジン対策だ。YAHOO!やGoogleなどの検索エンジンで「高速バス」「夜行バス」などと検索された場合になるだけ上位に表示されるよう工夫するのだ。

しかし、このような手法で開拓した高速ツアーバスの路線網が「大都市発着」「長距離」「夜行」に大きく偏っていることは偶然ではない。私たちの取扱高の実に76%を「首都圏~京阪神・名古屋・仙台」の3路線が占める(ちなみに高速路線バスでみると3路線合わせて全国の3%しかない)。なぜそうなのか。その点を客観的に把握し、論理的に分析しなければ正しい打ち手は出てこない。

1つの大きな理由が、いつも書いているように「“地上戦”を得意とする既存事業者は、“空中戦”を求められる大都市マーケットで掘り起しが不十分だった」という事実である。逆に言うと地方都市では高速ツアーバスの入る余地が既に小さい。2つめが、「短距離・多頻度路線ほど当日発券など気軽な利用形態が好まれるが、煩雑な手続き(事前予約・決済、旅行条件書の手交)を必須とする高速ツアーバス業態はデメリットが大きい」という点で、3つめは「短距離・多頻度路線ほど習慣的利用が多く、“浮気利用”を誘発しにくい(スイッチングコストが高い)」という点である。ちなみに1点目と3点目は、必ずしもツアー業態に限らず、高速路線バス業態であっても短距離路線で新規参入が余り成功しない理由でもある。ちなみに高速ツアーバス側が徹底した“地上戦”を行なった宮崎~福岡では、市場全体が小さくかつ高速バスへの関心が非常に大きいという市場の特性からスイッチングコストは低く、高速ツアーバスが一定の成功を実現している。

つまり高速バスにおけるウェブマーケティングは、大都市側で市場を拡大する「攻め」には非常に有効で、全国の高速路線バス事業者にはぜひ「新規需要の開拓」に活用いただきたいものの、冒頭で挙げたような「守り」においては必ずしも有効とは言いがたいのだ。しかし、ではウェブ(あるいはIT)が「守り」に役に立たないかと言うとそうではない。

例えば繁閑や座席タイプに応じ価格差を設定できるという点は、もともと高速ツアーバスの方が高速路線バスより事業上で有利な点だったが、最近では高速路線バスの制度もこの点に関してかなり柔軟になった(まもなくさらに柔軟さが増す)。しかし高速路線バス各社が使っている基幹システムで、その柔軟さを十分に使いこなせる機能を持ったものは少ない。ほとんどの基幹システムが、制度が柔軟になる前に基本設計されたものだからだ。「ツアーバスの攻勢に対する守り」を考える上で最も致命的なのが、基幹システムが「レガシー(前時代の遺産)化」していることだ。

次に自社サイトでのウェブ予約も課題が多い。各事業者の自社サイト(静的ページ)では高速バスの時刻や運賃を確認できる。だが「いざ予約しよう」という際、また「発車オーライネット」や「楽バス」のトップページへ誘導され動的に路線を再度検索しなおすという動線はストレスが大きく、「ウェブ屋の常識」ではまず考えられない。商店で言えば、せっかくショーケースにはきれいに商品を並べているのにレジの場所がわからず購買をあきらめさせるような作りだ。動的エンジンの改修が必要な場合もあるものの、静的ページの対応だけでクリアする例も多いのだが…

もっともIT以外の「商品そのもの」(車両、ダイヤなど)についても書きたいことは山ほどある。あえて1点に絞るとすれば、昼行便の場合、大都市側の出張客・観光客が利用する時間帯(朝大都市発→夕方地方発)と、地方側の地元客を大都市側へ送りこむ時間帯(早朝地方発→夜大都市発)で、地方側の経由地(停留所)が同一でいいはずがない。大都市からの出張客が訪れるのは地方都市の都心であるが、地方側の地元客は郊外の自宅近くや駐車場から乗りたいのだから(なお、大都市側での乗降はどの時間帯も都心ターミナル駅にニーズが集中する。大都市側利用者は郊外の自宅から高速バス停留所まで公共交通機関を利用するからである)。






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Last updated  2010.02.15 18:01:17
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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