成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.03.10
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カテゴリ: メディア掲載情報
3月5日付の朝日新聞(中部本社版)朝刊で、高速バスのことを大きくご紹介いただいた。かなり大きな記事だが、見出し部分だけをなぞると<貸切VS路線 高速バス激戦><ツアー業者参入 需要を開拓><東京-名古屋間の高速バスが、価格とサービスで激戦を展開している。ツアーバスに大手バス会社が対抗、需要を底上げしている>とあって、ウィラー・トラベルの新型車両「シアター」や富士セービングバス「旅の散策」の大型座席、JR東海バスの「プレミアム・シート」が写真入りで紹介されている。<大都市を結ぶ高速バスは、これまで路線バス会社の独壇場だった。しかしインターネットの普及が新規参入を促した>とし、同区間で高速ツアーバスの便数が急激に増加した構図を説明している。その上で、「かつては『路線バスは高級』『ツアーバスは安い』だったが、今はツアーバス事業も充実したサービスの競争に向かっている」という私のコメントを使ってくださった。またそういった高速ツアーバスの攻勢に対し、既存事業者側もさらなる高級化や割引の充実など対抗策を講じている状況も紹介されている。

何度も書いているが、首都圏-名古屋間は、本来のマーケット・ポテンシャルに比べ需要の掘り起しが余り進んでいなかった区間だ。要するに「伸びしろ」がまだまだ大きいのである。だから、ウェブマーケティングの活用により私たちが新規需要を開拓すると同時に、朝日のような影響力のある新聞やテレビで「激戦」「サービス競争」と取り上げられ新型シートや高級シートが一般の方の目に触れることが、高速バスマーケット全体をさらに大きくしていく。競争が「磁場」を生み、そこに利用者が集まるのだ。

いつも既存事業者の皆様とお話をしていてちょっと違和感を覚えることが多いのは、「ツアーバスは安いから成長した」というご発言が多いことだ。もちろん、一般論として高速ツアーバスの料金が高速路線バスの運賃より低めであることは間違いがないし、それが集客の武器になったことも否定しない。しかし本当に価格の安さだけが高速ツアーバス成長の鍵だったのか。

例えばこんなデータがある。まずオリオンツアーが、次に西日本ツアーズ(現ウィラー・トラベル)が高速ツアーバス事業を「0」から開始したのが2001年。その4年後、2005年の高速ツアーバス年間輸送人員を「1」とすると、さらに4年後(2009年)の高速ツアーバス輸送人員は「17.5」である。つまり高速ツアーバス誕生以来最初の4年間に成し遂げた成長の16.5倍もの成長を、その後の4年間に実現しているのだ。

もう一つ、こんなデータもある。2005年度(つまり高速ツアーバスが爆発的に成長する直前)の首都圏-仙台間の高速路線バスの輸送人員を「1」とすると、その時点での同区間の高速ツアーバス輸送人員は「0.3」だった。しかし2009年の高速ツアーバス輸送人員は「4.1」にまで成長している(高速路線バスの輸送人員の最新データは手元にはない)。つまり、極端な話、同区間で高速路線バスを高速ツアーバスが「食って」しまって高速路線バスの輸送人員が「0」になっていると仮定しても、同区間の高速バスマーケット全体は4年間で約3倍以上に成長していることになる。実際には高速路線バスも苦戦はしつつも運行は継続されているわけで、同区間の高速バスマーケットは4年間で5倍近く(もしかしたら5倍以上)にまで成長し、その成長部分のほぼ全てが高速ツアーバスに流入している、ということになる。高速路線バスから転移した乗客はいるだろうが、それは高速ツアーバス輸送人員のごく一部に過ぎないことが上記の数字からわかるはずだ。

高速ツアーバスが生まれた2001年から2005年末までの4年間と、2006年初めから2009年末までの4年間。最初の4年間は「鳴かず飛ばず」だった高速ツアーバスが、新規需要を掘り起こしながら爆発的に成長した後半の4年間とは、いったい何だったのか。その前の4年間とは、何が異なるのか。単に「安いから伸びた」のであれば、成長のカーブは一定の角度で上り続けるはずだ。しかし2005年を境に、成長カーブの角度が桁違いに変わっているのはなぜか。答えは簡単だ。彼ら(高速ツアーバス各社)がウェブマーケティングを積極的に活用し始めたのが2005年の末ごろだった、というその1点に尽きる。ちなみに、私たちのサイトが高速バス予約事業に参入したのが、まさにこの2005年11月なのである。

「安いから伸びた」という高速ツアーバス観を間違いだと言う気はない。高速路線バスを頻繁に利用していたヘビーユーザーが、低価格に惹かれ高速ツアーバスに移ったケースも無くはないだろう。しかし、「安いから伸びた」だけに目をやりすぎると次の戦略を見誤る。「安い」のも、「豪華」「快適」「安心」も、それぞれ各社の高速バスの、相応の魅力なのだ。しかしその魅力を有効に利用者に見せなければ何の意味も無い。

本記事に掲載されているように、現在、首都圏-名古屋間の高速バスの最安値はJR系の高速バスだ。これは首都圏-京阪神でも同様である。逆に最高値は繁忙日の高速ツアーバスの高級車両である。平均単価では高速路線バスの方がまだ高いだろうが、少なくとも最高値・最安値どうしの比較では高速ツアーバスの方が高めの価格になっている。それでも、高速ツアーバス(少なくとも私たちのサイトの取扱)は対前年で約30%増のペースで成長を続け、高速路線バス側からはいいニュースを聞かない。高速ツアーバス利用者の多くは、高速路線バスとの価格の比較の上に高速ツアーバスを選んだわけではなく、高速バスを予約しようとした際に目の前にあったのが高速ツアーバスだったからそれを予約しているのに過ぎず、高速路線バスの存在も、例えば「ドリーム号」といった愛称さえ知らないのである。高速路線バス側が販路を拡げないまま運賃を下げても価格弾力性が働くわけがなく、単価減による運賃収入減を招く以外の結末はありえない。

戦略を立案する上で、もっとも重要なのは現状認識である。もしそこで誤れば、十分に戦えるはずがない。既存事業者側から高速ツアーバスを見る際にどうしても感情が先に立つことは理解できなくはないが、そのような状況の時ほど冷静さや客観性を失わないよう努めることこそ、経営者(既存事業者など日本の伝統的企業の場合は、社長さん個人ではなく本社部門全体を指す)に求められているはずである。





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Last updated  2010.03.10 18:24:29
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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