成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.03.21
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カテゴリ: バス産業
■NTTドコモ「iモード」の生みの親として有名な夏野剛氏が、ウェブ上の連載 『夏野剛のネオ・ジャパネスク論』 で、こんなことを書いている。

<所得倍増計画などという威勢のいい言葉が叫ばれ高度成長し、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた経済大国化の時代に形作られた終身雇用、年功序列、官僚主導、長期政権、サラリーマン社長、多様性欠如、ものづくり神話、外国語軽視などの特徴は今も根強く日本社会のシステムに根付いている。これらの特徴はすべて、右肩上がりの成長基調のなかで、「みんなで成長し、みんなで困難を克服する」システムである。>
<横並びで業界意識が強く、プレーヤーの淘汰よりも全体の成長を重視する仕組み。したがって、各々の企業は他企業との差別化よりも他社と同じような製品、サービスを一律に提供する傾向が強い。 このようなシステムが有効に働いた時代は、日本が世界にキャッチアップする過程であった。>

その上で夏野氏は、バブル崩壊後の10年を、政府が様々な手法で「なんとかした」が、その結果<これらの施策に助けられた金融機関や企業経営者は一時的に息をついたものの根本的なシステムの転換・改善を怠り、高度成長型のあらゆるシステムが温存された。そのツケは若い世代の低い雇用や給与レベルに回され、結果的に50代以上の世代に優しい社会システムとなってしまった。>としている。「逃げ切り」ができる経営者たちは自己変革、社会変革を怠っている一方で<特にIT革命以降のこの10年は、変化のスピードに拍車がかかっている。そんななか、変化を嫌い、過去となるべく同じように仕事をし、政策を考えていては、状況についていけないことは明白>だと断定している。

■小説家の幸田真音女史は、わが国の金融界の裏側を描いた作品 『傷 邦銀崩壊』 で、<銀行協会側は、あくまでこれまで通り、金融機関の提携や合併は、同じ金融機関の範囲内にとどめておきたいと主張した。もし異業種の参入を許すことになれば、これまで保ってきた業界内の暗黙の了解や、商習慣が破られることになる>というような、架空の銀行「康和銀行」を中心としたわが国の銀行業界に関して、主人公に次のセリフを言わせている。<「救えって、あの不良債権の固まりみたいな康和銀行をどうやって救えというんですか。周囲がこれほど心配しているのに、当の本人たちには危機意識が薄いのか、ただ手をこまねいて見ているだけだ。自分達の手で腐った部分を削る勇気も、膿を出す知恵もありはしない」>

■一橋大学の一條和生教授は3月21日付の「日本経済新聞」読書面の書評『日本の製造業、試練に直面』で 『グローバル製造業の未来』 (カジ・グリジニックほか著)を取り上げ<「ものつくり」信仰から抜け出せない日本の製造業に成長への指針を示している。具体的には、自社および完全子会社で内製化すべき分野、提携先や合弁企業に委託すべき分野、外部のサプライヤー(部品会社など)から調達すべき分野を切り分け、過去へのしがらみなく事業モデルを見直すことである。ボトムアップ型の「ものつくり」に強い日本メーカーは、逆にトップダウンが必要な意思決定が苦手であり、製品削減や事業撤退の判断ができない。そこに日本企業の弱みがある>としている。

その裏側にあるシステム化や経営観念の不足 を指しており、幸田氏が取り上げた金融業界などのサービス産業も含めわが国の産業全てに共通する特徴といっていいだろう。

既存事業者の経営者や担当者の皆様とお話をしていると、明確に二つのタイプに分かれる。「自分たちは地域の公共交通という大切な役割を担っているんだ。そこに競争原理や金儲けを持ち込むのは許せない」と、私が「経営観念」というような話をすればするほど、まるで金の亡者の振り込め詐欺の首謀者を見るかのような軽蔑した目で私を一瞥するタイプ。もう一方で「既存事業者は規制に守られすぎたから、戦おうと思っても体がついていかない。新しい発想をしないといけないと思っても、どうやったらどんどんアイデアが生まれてくるのか」と、もがくタイプの二つだ。当然、前者は私の言動に否定的、後者は個人としては肯定的協力的なわけだが、共通するのは、「バス業界は特別」だという前提条件だ。

しかし、だ。上記を読むだけでも、バス業界が特別でないことは理解できるはずだ。幸田氏の小説中の銀行業界を「路線バス業界」と読み替えても、『グローバル製造業の未来』中の「日本の製造業」を「路線バス業界」と読み替えても、そのまま通用すると言っていいくらいである。「官僚主導」による「護送船団」で成長してきたのは、どの業界も同じなのだ。そしてその背景にあった右肩上がりの経済成長は既に終わっている。

「業界みんなで仲良く」を否定するつもりはない。私の会社では、取引先に当たる企画実施会社はもちろん競合相手に当たる他の予約サイトとの間でもずっと電話がなりっぱなしだ。事業が複雑になればなるほど、時にはトボケあい、時には探りあいながらも、心が通い合う「同志」の存在が、取引先はもちろん競合相手にもいないといい仕事ができなくなる。私自身も、高速ツアーバス連絡協議会を事務局として立ち上げた経験も含め、この4年間で高速ツアーバス、そして(まだ会社としては取引のない相手も含め)高速路線バスの業界に多くの仲間を作ることができた。しかし、そのことと「みんなでぬるま湯に浸かる」こととは意味が違う。いや、それが「ぬるま湯」の間はきっとそれでいい。だがやがてそれは冷め切って「ただの水」となっても、凍えながらも浸っているのは誰のためにもならない。

わが国の路線バス産業を永続させたいと本当に願うなら、求められることは一つ。自らの体にメスを入れ、どこが悪いのかを直視し、その病巣を取り出す勇気である。心配はいらない。バスに限らず周囲のどの業界も、これから同じことに取り組まなければならないのだから。





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Last updated  2010.03.21 19:14:25コメント(0) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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