成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.03.23
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カテゴリ: 高速ツアーバス
就職活動にあたって私はホテル業界を選び、かつ国内系ホテルチェーンの本社機能に志望先を絞った。その頃から既に「新御三家」を中心に外資系ホテルの方が世間の評価は高かったが、それでも国内系にこだわったのは(英語が得意でない、というような話は別として)、運営受託やフランチャイズなど、実際のホテルの経営主体(社員の所属企業)とブランドが異なる仕組みの元で、自分自身の帰属意識、愛社精神というのが正常に保てるのか、自分なりに心配だったからだ。

大阪で最高級される「ザ・リッツ・カールトン大阪」を例に取れば、鉄道線路を地下化した後の余剰地に阪神電鉄がビルを建て、その中で阪神グループがホテルを経営している。社員は原則、阪神電鉄の100%子会社「株式会社阪神ホテルシステムズ」所属だ。一方、阪神は高級ホテルの運営ノウハウや国内外でのブランドを持たないから、米国の「ザ・リッツ・カールトン・カンパニー」に運営を委託。具体的には、人事権まで持つ総支配人の派遣を受け、その指揮の元、リッツ側が作成した運営マニュアルに基づいてサービスや調理を行なう(阪神側は、売上高等に応じ運営委託費をリッツ側に支払う)。当然、社員の名札にも「リッツ」のロゴが入っており、普通に利用する分には、そのホテリエ(スタッフ)が阪神の社員であることはまずわからない。「ヒルトン」「ハイアット」など一般に「外資系ホテル」と呼ばれるホテルチェーンで、実際に「外資」、つまりそこで働く社員の所属企業が外国資本である例は多くない。「外資系ホテル」ではなく「海外ブランドのホテル」というのが正しい。

当時の私は、例えば阪神や、あるいは小田急(「ハイアットリージェンシー東京」の経営は「株式会社ホテル小田急」)などの社員としてその会社から給料をもらう一方で、お客様の前では「リッツ」や「ハイアット」の制服を着て「ザ・リッツ・カールトンの成定でございます」と胸を張って言えるのかどうか心配だったのだ。それで「いいホテル」「ベストなサービス」をそれで実現することができるのか、生意気にも勝手に疑問視し、「所有」「経営」「運営」を三位一体で行なっている国内系老舗ホテル企業にこだわったのだ。

そのようなホテル企業を選んだことを後悔はしていないものの、その後ホテル経営を学んでいく上で上記の心配が杞憂だったことはよく理解できた。「ホテル経営の三要素」(所有・経営・運営)をあえて分離することの意義は実に幅広い。本日ここでは「いいホテル」「ベストなサービス」を実現するという目的にどう寄与しているかに絞って話を進めたい。

一言にまとめると「甘えの排除」である。上記事例で言えば、仮にリッツ側が、もらっている委託料に満たない分量しか阪神側にもたらすものがなければ(例:リッツ側から大阪に派遣された総支配人が能力不足、とか、世界的にリッツのブランド価値が低迷し海外での集客が少ない、など)、阪神側はリッツ側に委託条件を低下させるよう圧力をかけるだろうし、極端な話、委託契約を延長せず「パークハイアット」等の別ブランドに委託先を鞍替えする可能性を示唆するかもしれない。リッツ側からすればそれは困るから、スタッフがベストなサービスを行ない売上や利益がより増加するよう必死の支援をする。逆に阪神側が手を抜けば(例:人員不足でサービスレベルが低下、とか、カーペットが擦り切れているのに補修しない、など)、リッツ側は「ザ・リッツ・カールトンのブランド基準に達しないからすぐに改善しろ」と言うだろう。極端な場合、ブランド供与を断ち切り、大阪でのリッツブランドの展開は他の企業とパートナーを組んで行なうぞ、とプレッシャーをかけることもあるだろう。

互いに「いがみあう」ことがいいと言っているのではない。しかし、同一の会社が所有も経営も運営も一貫して行なえば、(その利点も多くあるものの)どこかに甘えが出る。総支配人の人選も、食材仕入れやスタッフ配置等、現場でのコスト管理も、最終的には一つの会社、一人の社長の判断になる。「売上が伸びないから、利益を確保するために食材のレベルを下げてコスト削減しておくか」という誰かの意見に対し「それをしてしまうとウチのホテルのブランド価値を保てないよ」という対立意見は出てこなくなってしまう。

学生時代の私自身がそう感じたように、一つのホテルをよりよいホテルに育て上げるにあたってこのような「牽制」関係を持ち込みことは、「和」を重要視する日本人にはとっつきづらい印象を与える。一つの会社がホテル全部を司れば全員で一丸となって邁進するのに…とつい考えてしまう。しかしよく考えてみれば、そのホテルがよいサービスをしてブランド価値を上げ売上や利益を増やすことができれば運営側(米リッツ)にも経営側(阪神)にもメリットがあるわけで、お互いに大切なパートナーなのだ。大人の企業であれば、お互いに得にはならない足の引っ張り合いなどしない。いがみあうデメリットより、より高めあうメリットの方が大きい。それなら「耳が痛い」ことをお互いに言える関係は重要だ。

「所有」「経営」「運営」の分離は、これ以外にもまだまだ多くの利点がある。その利点を高速バスにも、と考えるなら、それは高速ツアーバスに近くなる(もっともそれは「理念」としての高速ツアーバスであり、現状が理想に遠いことはお恥ずかしい限りだが)。少なくとも既存事業者では、高速バスの運行と営業を別セクションにすることがその一歩となるだろう。例えば私の会社では、毎月末、集客が目標に満たなければ各サービスの事業側責任者が全社員の前で詫びるし、システム障害などがあればシステム側責任者が同様に詫びる。各自に与えられた責任範囲を全うできていないからだ。だが一人の課長が「運行」も「営業」も両方に責任を負えば、それぞれに甘えが生まれる(以前は「運行だけ」考えておればよかったのかも知れないが)。実は電鉄会社には、百貨店やホテルなどマーケティングのセンスが求められるグループ会社も多く、新卒社員は数年目に「運輸系」「流通系」などと振り分けられるケースが目立つが、「高速バス営業課長」のようなポジションができ、(「運輸系」ではなく)「流通系」の有望な若手のキャリアパスの一環として定着するようであれば、今より大きく前進だ。航空会社の組織・人事システムなど、参考にできるものはたくさんある。





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Last updated  2010.03.23 18:47:36
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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