成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.05.03
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カテゴリ: 高速ツアーバス
既存の路線バス事業者や彼らと深い関係がある方々(愛好家の方も含む)とお話しする度に、今日の高速バスが置かれた環境を、失礼ながらきちんと認識なさっていないことに失望する。何度も繰り返すが、彼らが高速ツアーバスのことをまるで親の敵のように見る気持ちは私には嫌というほどよくわかる。4年ほど前まで自分自身がそうだったからだ。しかし憎さあふれるばかりに、汚いものに蓋をするように目を背け、「なぜ、こうなったのか」「今後、どうなって行くのか」を正しく理解することを怠ってしまえば、既存事業者の高速路線バスの将来に影響してしまう。

例えば<新規参入に対する捉え方>である。たしかに高速ツアーバスという業態は、あまりきれいではない生まれ方をした。高速バスは「乗合」の制度で動いていたのに、先にお隣の「貸切」事業の規制緩和が進み新規参入が増え供給量が増加したことを受け、まるで「屋上屋」のように「旅行」の制度を活用することで擬似的に高速バス事業への新規参入を容易にしたのだ。このことは一体何を意味し、何をもたらしたのだろう?

上で「貸切事業の規制緩和」と書いたが、制度的には1年遅れて乗合事業も規制緩和(需給調整と参入規制の撤廃)が行なわれた事実は、二つの意味で大きなキーになろう。まず忘れてはいけないのは、そのような規制緩和が行なわれたのは何もバス業界だけでないことである。「日本版金融ビッグバン」が行なわれた金融業界を筆頭に、我が国のサービス産業の多くで同様の制度変更が行なわれている。次に考えないといけないのは、そのような考えで乗合バス事業でも制度変更が見られたにもかかわらず、様々な事実上の参入障壁が残り、貸切バス事業に比べほとんど新規参入が見られなかったことだ。

となると、歴史に「もしも」をあえて持ち込むとすれば、高速ツアーバス業態誕生までに起こりえた「もしも」は二つである。一つは「もしも、バス業界でそもそも規制緩和が行なわれていなければ」であり、もう一つは「上記事態(貸切では新規参入が続いたのに乗合では進まなかった)を踏まえ、募集型企画旅行という別のルールを当てはめることで余剰となる貸切バスを高速バスとして運用するというアイデアが実現していなければ」である。まず最初の「もしも」については、「もしも」という仮定自体が成立しないと言っていいだろう。昨今、「事業仕分け」などで行政機関やそれに準じる組織の非効率さが問われているが、その行政も含めた広い意味での「サービス産業」の非効率さが日本経済の癌であり、それまでの護送船団方式を改めることで彼らの競争力を回復すべきと言う考え方はほぼ定着しているからだ。もしもある政権がバス業界の規制緩和を行なわなくとも、次の政権がそれを行なっただろう。バスにたずさわる人は、バス業界の中だけを見て規制緩和がよかった悪かったと自分の意見を言いたくなるだろうが、そもそも他の産業も含め国全体で同じことが行なわれているのだ。バスの運賃(に限らず、電気代や物流コストやら法人税やら)が高止まりすれば、それが日本製品の価格に転嫁され、結果として日本製品の競争力ひいてはこの国全体の競争力に影響するのだ。

次の「もしも」は<高速ツアーバスという業態が定着(第一段階としては関係者がそれを「思いついた」ことであり、第二段階としては行政がそのモデルを容認したことである)していなければ>、という仮定であるが、その「もしもの行方」を、このブログをお読みの方はどのようにお考えだろうか。「もしも高速ツアーバスが定着していなければ、既存の高速路線バスに大きな変化は無く(一歩譲って、成定がよく言っているように成長のチャンスはフイにしているとしても)、少なくとも従来どおりの市場規模を保っていられた」とお考えだろうか。私には、そうは思えない。高速バス事業は収益性が比較的高い(わかりやすく言えば「結構おいしい」)ため、参入を希望する事業者はかなりの数に上る。一方、事実上の参入障壁が多く残り新規参入が難しいとなれば、何が起こっただろう。数少ない「高速路線バス業態での純粋な新規参入」ケースである仙台~福島線(富士交通/桜交通)において公正取引委員会が動いたように、いや、 ヤマト運輸が何度もの裁判を通して既存の運送業者や郵政省の既得権と戦ってきた ように、全国あらゆる所で、参入障壁を巡る裁判沙汰が多発したことだろう。

その意味で、高速ツアーバスという事業モデルが生まれたことは、新規参入希望者への「ガス抜き」としてちょうどよかった。何度も書いているように、全く異なるルールが生まれたことで、全く異なる事業者が全く異なる市場(つまりこれまで既存の高速路線バスが苦手としてきた大都市間路線)を相手に、「高速バス」事業を展開することができたからである。既存の高速路線バスに影響が全く無かったとは言えないが、ここまではほぼ、老舗の事業者は高速路線バス業態で大都市と地方都市、あるいは地方都市同士を結ぶ路線、新興事業者は高速ツアーバス業態で新規参入し、大都市同士を結ぶ路線(ほんの一部のみ、大都市と地方都市を結ぶ長距離夜行路線)という風に、おおむね住み分けをできてきた。

しかし、これは機会があれば別途詳しく書きたいが、大都市間路線について高速ツアーバスは市場の開拓をほぼ終えつつあり、つまりは、彼らの成長率が鈍化しているということである。ということは、高速ツアーバス各社にとって次のターゲットは明確に、大都市と地方都市を結ぶ長距離夜行路線に他ならない。実はこれまで、高速路線バスと高速ツアーバスが、本当の意味で競合するケースはほとんど無かった。少なくとも高速ツアーバス各社にとって、高速路線バスと競合していると言う意識はほとんど無かった。「高速路線バスが耕し忘れていた、放棄された土地」を勝手に耕していたに過ぎない。しかしこれからはそうではない。既存の高速路線バスが既に定着している地方都市路線に、その高速路線バスをスナイパーターゲットとして狙い撃ちしてくるのである。従来の高速路線バスと高速ツアーバスの関係とは全く異なる本当の意味での「競争」「競合」が、これからスタートする。本当の意味での競争、競合だから、当然、落伍者は出るだろう。だが、その競争が高速バス全体を大きく強くすることもまた、事実である。





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Last updated  2010.05.03 10:45:31
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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