成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.07.14
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カテゴリ: バス産業
既存事業者に往訪して高速路線バスの取扱をご提案しても、ご想像のとおり、すんなりと話が進むわけではない。既に取扱開始したいくつかの会社もあるが、そこまで進んでいない会社にもご提案は続けていて、彼らの温度感は様々だ。考え方では合意したが手数料率で折り合いがつかず交渉継続中の会社、共同運行先がうんと言わないためにペンディングになっている会社などは「前向き」な方。「もうちょっと様子を見させて欲しい」と、具体的な理由も言わず断られる会社が、まあ「普通」。「後ろ向き」なのは、私たちの会社名を聞いただけで門前払いする会社、だ。「番外」として、経営者から担当者まで前向きなのに、「業界内の秩序」を慮って「もうちょっと待って欲しい」と言われている会社もある。「○○バスさんがやるんだったらウチもやるよ」と、具体的にベンチマーク先を率直に教えてくれる会社もある。それこそが「業界の秩序」ということだろう。

もう4年も同じようなご提案を続けている。私たちに高速ツアーバスの「色」が付きすぎているとか、既存事業者にこれまで持なかった「在庫出し入れ」のオペレーションをお願いしないといけないとか、ハードルがあるのは承知しているので各事業者のお気持ちは(これを言っては営業パーソンとして失格だが)よく理解できる。ただ、ちょっとしたご縁(共同運行先からの提案など)で突然ご契約に結びつく可能性もあるから、文字通り「門前払い」でない限り機会を見つけては各事業者にお邪魔するし、すぐに結果が出なくても不満と言う気持ちはない。「断られ慣れ」状態だ。むしろ、じっくり社内でご検討いただいた感じが伝わってくる丁寧なお断り方をされると、変な話だが感謝さえしてしまう。

ちなみに最も感銘を受けた?断り文句は、ちょっとシチュエーションが違う。高速路線バス取扱を本当に実現できるかまだ自信が無かったころ、「平場」の路線を持っているが高速路線バスを運行していない、けっこう伝統ある既存事業者にご縁があって、彼らのブランドで高速ツアーバスに参入しないかご提案に行ったことがある(※)。その、正に歴史が積み重なったような本社で、先方の役員がぼそっとこうおっしゃった。<熱心にお誘いいただいて光栄だけど、ウチら、ツアーバスやれるほどのタマではないですわ>。極めて本質を突いたお言葉だと思う。高速ツアーバスに参入するとか、それで利益を増やし企業を成長させていくというのは、いろんな意味でエネルギーのいる話なのだ

※サンデン交通や弘南バスの2社は似たパターンに見えるが、先方から希望があって高速ツアーバスに参入している。こちらからのご提案で実現したのは、中紀バスと、あとは厳密には既存路線バス事業者とは言いがたいがイーグルバスくらい。なぜ販売サイトに過ぎない私たちが「高速ツアーバス参入」を働きかけるのかというと、取扱う業界全体が成長しないと我々も成長できないからだ。一時は本気で<どうがんばっても高速路線バスの取扱は無理だ。ならば高速ツアーバスを、規模的にも、事業者の「格」的にももっと拡大させよう>と考えていたのだ。その時期の暗い気持ちを思い出すと、その後ご決断いただいた弘南、リムジン、西東京、南海、九産交、宮交への感謝の気持ちでいっぱいになる……

話は「高速路線バス取扱のご提案」に戻って、逆に「断りの理由」を聞いただけで疲れがどっと出てくる会社もある。<ウチの会社、まあまあうまく行ってるんで、今は結構です>。正直、たとえ言い訳でもよくこんな理屈が言えるもんだと。たしかにその事業者はいい地盤を持っていて会社は安泰だ。しかし、高速バスを、それも路線単位、便単位、日単位で見た場合、全て満席だとはとうてい思えないし、一歩譲って全路線全便が毎日満席になっているとしたら、次の路線、次の増便を考えるのが仕事ではないのか。いや、同じサラリーマンとして、会社が潰れない限り少しでも楽な方がいいのは「本音」としては理解できる。居酒屋でビールを飲みながらなら、わからないでもない。しかし初対面の私に「おおむね順調だからこれ以上がんばらない」と、よく堂々と宣言できるものだなと思う。

もっとも、その「感覚」はよくわかる。原則的に地域独占認可だった路線バス事業においては、(社会的責任においても)赤字路線の「撤退」「廃止」こそが最もやってはならないことだ。撤退は、他社の参入を許すことを意味する。ならば「路線を維持する」ことが優先課題。逆に黒字路線については、競争がある世界ならその黒字を狙って新規参入があるので余地を与えないよう突き詰めないといけないが、地域独占ではそれがない。黒字部門は、赤字部門を維持しさえすれば十分なのだ。「これだけ乗ってたらこの路線は廃止にはならないだろう」という言葉をよく聞くが、本来あるべき姿は「この路線にはこれだけ市場ポテンシャルがあり、今はその○%まで獲得できている(逆に残りは獲得できていない)」というアプローチのはずだ。残りの需要を開拓するには何をすればいいか、開拓率が100%に達するまで突き詰めるのが「仕事」のはず。そこに「乗客のニーズ」があるわけだから。

「黒字部門が赤字部門を補って、全体で黒字ならそれで十分」という考え方が常に悪いわけではない。が、それが通用するためには条件が二つある。一つは独占認可であること。これは制度上は否定されたものの平場の路線では実態としては生きている。問題はもう一つの条件だ。その条件とは、バスという輸送モード自体が右肩上がりであることだ。考えてみて欲しい。バス全体が右肩下がり、つまり黒字部門の黒字は漸減し、赤字部門の赤字が漸増する中で「全体でトントン」を目指すのに簡単な方法はただ一つ。縮小均衡しかないのである。そうやって我が国のバス事業者各社はここ数十年、毎年のP/Lの帳尻を合わせることに腐心しながら、振り返って見ると年率数%の縮小を続けてきた。需給調整撤廃や高速ツアーバス容認、「1000円高速」導入のずっと前から、この国のバス産業は縮小均衡の蟻地獄に嵌っていたのである。救い出すには、国全体、産業全体が右肩上がりだった頃のルールから抜け出すしかない。もっとも、レギュレーション(規制、制度)面では既に国の方針はそこから脱却している。問題は、各事業者の経営者、担当者の頭の中に化石のように残る、「よかった頃」の生温かい記憶の方である。





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Last updated  2010.07.14 18:50:16
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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