成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.09.24
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カテゴリ: 高速路線バス
<遅ればせながら、ウチもようやく「ツアーバス対策」を始めてね>などと、最近よく耳にするようになった。それは大きな大きな前進である。まあ、競合の新規参入があって初めて、やれ価格施策だ、やれ増便だと、まるで夏休みの宿題を溜め込んでいた小学生のようにあたふたすることが満点かどうかは別として、そもそも収益事業であり、かつ鉄道や航空に対する挑戦者の立場である高速バス事業は、競争によるサービスレベル向上(価格低下を含む)が業界全体の規模拡大を後押しすることは間違いなく(その点が、競争が即、全体の規模拡大につながらない公益事業としての平場の路線バスとの相違点だ)、それこそが私が思い描いてきた業界の構図である。ただ、その「ツアーバス対策」。一昨日書いたような「現状認識」と「因数分解」が無いまま経営者や担当者の頭の中で感覚的に進んでしまいがちなのが少し気になる。<ツアーバスなんかに負けたくない。なんとかしろ!>では、うまく行くはずがないのだ。

事業者によっては、あるいは担当者によっては、<ツアーバスが安いから客を奪われているんだ→だから我々も値下げするしかない>と言うし、別の事業者や別の担当者は(私の言葉が効きすぎたのか)<ツアーバスはウェブマーケティングによって新規需要を掘り起こしたんだ→だから我々もウェブを活用して新規客を取り込もう>と言う。それぞれの意見は間違っているわけではないが、現在置かれた状況からある事象だけを採り上げ、それだけが原因で、だからそれに対応すれば状況が変わると考えてしまうのは短絡的だ。「結論への跳躍」というやつである。<我がチームは打撃が弱い。だから強打者を補強しよう>というのと同じだ。得点が少なくても投手力が強ければ勝てるし、得点数が少ないのは、個別の打者の打率が低いからではなく打線のつながりが悪いからかも知れないのだ。だから、まず、自社の置かれた状況の全体を「俯瞰」してみる必要がある。

その上で一つひとつ個別の項目に分けて考えないといけない。急成長する高速ツアーバスに比べ、低成長または縮小傾向にある自分たちの高速路線バスのどこにどんな問題があるのか。例えば「新規客と既存客」という分け方ができるかも知れない。「ツアー」側は【1】ウェブをうまく使って新規客を開拓した。同時に【2】既存客も少しずつ奪われていってしまっている。ならば、「路線」側が対応すべきなのは、自分たちも同じように新規を開拓しながら、これ以上既存が流れないようにブロックすることである。では【1】の新規について、「ツアー」は何をやったのか? そこで初めて【1-1】ウェブによるプロモーションという話が出てくるし、【1-2】高級志向/低価格志向、男性向け/女性向けなど細分化された商品設定という点も忘れてはいけない。【1-3】も【1-4】もある。で、一口に【1-1】ウェブによるプロモーションと言っても【1-1-1】検索エンジンで「高速バス」などと検索された際に自社サイトが上位表示されるよう努力しているという話もあるし、【1-1-2】予約サイトに席を預けることで、楽天会員のようにふだん高速バスに乗らない人たちへ配信するメールマガジンに掲載されるなどして高速バスの認知が向上したという話もある。【1-1-1】検索エンジンでの上位表示に限っても【1-1-1-1】SEOと【1-1-1-2】リスティング広告に分けられる。SEOはサイト構築そのものの問題だからすぐには結果を出せない。リスティング広告は、すぐに対策は可能だがコストが必要だ。【1】の新規の部分でこのように細分化できるのと同様、当然、【2】の既存客についても細分化が可能である。

<検索エンジン(Googleなど)で「高速バス」と検索してもウチのサイトが上位に出てこない>というのは、たしかに一つの事実かも知れないが、かといってそれがその事業者に最もクリティカルな課題とは限らない。「新規客の取り込み」という課題のうち、「ウェブ」という分野の、さらに<高速バスに乗りたいと考えているが、走っている会社名や予約方法がわからず、とりあえずGoogleで「高速バス」と検索した>というユーザーに限って有効な話である。特定の地方都市を発着する路線に乗りたい乗客候補のうち、いったい何%が、あまりに漠然と「高速バス」と検索するだろうか? ましてや、従来から自分たちの高速路線バスを使ってくれていた既存客が高速ツアーバスに逸走してしまっているという現実に、この「検索での上位表示」問題はなんら関係がない。

つまり、まずは自分たちが置かれた状況について全体を見渡し、それを一つひとつ大項目から中項目、そして小項目へと切り分けていく。なるだけ細かく分けられた項目と、それぞれに対する対応策の中で、いかに優先順位をつけていくか。つまり、どの項目への対応策が「小さいことだけど、今すぐカンタンにできること」ないしは「カンタンにはできないけど重要なこと」か、見つけ出すことがポイントだ(いや、高速路線バスに限っては、「カンタンにできて、かつ重要」な項目さえ、まだまだたくさんあるようにも思えるが)。逆に最も避けなければならないのは、何か特定の分野にだけ対応策を実施して、それで「ツアーバス対策」を打ったと満足してしまうことである。よほどビジネスに関して動物的な「嗅覚」に優れた人物でない限り、結論を急ぐのでなく、上記のように一つひとつ順番に考え優先順位をつけていくのが、まどろっこしいように見えて結局早道のはずだ。その手間を惜しむなら、いつまで経っても、せっかくの「ツアーバス対策」は結実しない。

もう一つ。<何を面倒な。ツアーバスなんてなかったら、あるいは規制緩和さえなければもっと平和だったのに>という気持ちがどこかに残っているなら、それもまた「ツアーバス対策」の実現には妨げになる。 右肩上がり経済の終焉とともに変化を迫られているのはどの業界も同じ 。この国全体に共通した課題だ。既存事業者各社がいま求められている変革は、この国全体が求められている変革でもある。誰かの判断で変えさせられるのではなく、変わらなければ未来が無いから、変わらざるをえないのだ。この状況でなお「バスは特別」という意識があれば、どこかに甘えが出る。そして業界全体で仲良くするのは楽かも知れない。ただし、業界全体で仲良く、一緒にずぶずぶと沈んでいく覚悟があるのならば、だ。





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Last updated  2010.09.24 18:33:35
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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