成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.11.12
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カテゴリ: バス産業
10日付けの「日本経済新聞」朝刊、「文化」面に、趣味が高じてバス会社を設立なさった、東村山市の「銀河鉄道」の山本社長さんの手記がかなり大きく掲載されている。この「文化」面にはこれまでから何度もバス趣味について紹介されている。かくいう私自身、仕事でご紹介いただく以外にも、かなり以前だが「日経MJ(日経流通新聞)」で非常に大きく(それも4色カラーで)掲載された記事『巡る巡るバスマニアの日々 乗車に撮影 西へ東へ 「小さな発見」探求』に主役?として登場したことがある。熱海ビーチラインで海をバックに貸切バスの走行シーンを撮影している私の写真と、たまたま来た貸切バスが国際興業観光バスの先代セレガ(要するに旧「国観」車)という比較的珍しいタイプだったことに興奮している私のコメントを掲載いただいたのだ(同記事では『バスラマ』和田編集長のコメントや他のマニア?の面々も紹介されている)。「にっけい」というとお堅いイメージがあるのか敬遠している方もいらっしゃるが、いやいや、なかなか面白いのでぜひ日経には毎日目を通すべきである。

さて同日の同紙1面には、いま話題の「TPP(環太平洋経済連携協定)」に関する連載が掲載されていた。『TPP 日本の選択(下) 攻める農業に転換を 開放テコに経営者育成』。このようなニュースを見るたびに感じるのは、以前、 『日本の農業は成長産業に変えられる』 の項で書いたように、「農業」の話を聞くとまるでそのまま「バス」にも当てはめられるような、身につまされるような思いを感じてぎくりとするのだ。今回の記事では、例えば、農業界の趨勢に反してTPP参加に賛成する石川県のある農家は以下のようにコメントしている。<「参加しなくても日本の農業は10年もたない。自ら変われないのなら、貿易自由化を利用するしかない」>。また「生産」と「販売」の関係性も変わっていく。<イトーヨーカ堂は千葉や茨城県などで農場を展開しているが、実際に農作業をしているのは地元の有力な農業者。「生産はプロに任せる。こちらは販売が専門だ」という戦略だ>。

農業界では(そこはバスと違って。逆に言うと、バスという産業のなんと特殊なことか!)もともと、生産と販売は別々の主体が行なってきた。ごくごく一部の例外を除き、生産者である農家が消費者に直接販売することはなく、農協などの流通網を通して八百屋さんお米屋さんが消費者に販売をしてきた。その中であえてイトーヨーカ堂の事例が紹介されているのだから、「安全・安心」なのか「エコロジー」なのかあるいは特別おいしいのか、何らかの特別な取り組みが行なわれているのだろう。話はそれるが、昨日書いたように、垂直分業による協業というのはお互いの専門性を持ち寄ってより高度な結果を出すのに非常に有効だが、そのためにもお互いにもたれあってしまう可能性を徹底的に排除し、お互いを高め合うことができる関係性を「仕組み」として構築することが肝要だ。

そして、<「経営者を育成する以外に手がない」>という、上記『日本の農業は成長産業に変えられる』著者でもある大泉氏のコメント。

『現場の深掘り、経営の広読み』 の項で書いたように、ホテルのみならず、バスのみならず、我が国では「プロの現場」には出会うが「プロの経営者」に出会うことは少ない。きっと農業も同じなのだろう。「現場」を守る一人ひとりの中では「安全で安心して食べられるコメや野菜を」という思いは嘘ではないだろう。作業工程の一つひとつにまで強いこだわりを持って今日も多くの農家が農作業にいそしんでいるだろう。しかしそれら現場のこだわりを、消費者ニーズの変化や経済環境の変化をにらみながら、高い競争力と収益性を持った「強い日本農業」へ脱皮する方向へ導く「経営力」が不足しているということだろう。

農業にたずさわる一人ひとりは、「安全・安心の農産物」「食糧自給率の維持・向上」に強い思いと誇りをお持ちで、それが「農業保護」の政策を要求する錦の御旗になっている。しかし本記事は以下のように指摘している。<農水省はコメなど主要19品目ですべての国と関税を撤廃すれば毎年4.1兆円の生産額が減り、自給率は40%から14%に下がると試算した。こうした極端な数字をはじいて農業を守ろうとする姿勢に国民は納得するだろうか>。従来のやり方で「農業を守る」ことが本当にこの国の農業を守ることなのか、国民は疑問を持ち始めているといいたいのだろう。あるいは従来のやり方で「農業を守る」ことが、実は他の多くの国民にとって何らかの犠牲を強いていることに国民が気づき始めているといいたいのだろう。

ただでさえ人口(すなわち消費のパイ全体)が減少するなか、(農業の場合は)海外の効率的な農業による低価格の輸入品との戦いが本格化し、(バスの場合は)モータリゼーションの進展によるバスの役割の低下が止まらない。食糧自給率向上や公共交通ネットワークの維持など一つひとつの目標の意義を否定するつもりは一切ないが、それを旗印に「守ってくれ」と叫ぶだけでは、既に国民の理解を得られないのも事実である。その現実を早く受け入れ、本記事のタイトルにあるとおり<攻める農業に転換を>図らないといけない。いや厳密に言うと、業界団体が「守ってくれ」と叫ぶこと自体は、それが彼らの役割である以上、問題ではない。しかし、農業に、バスにたずさわる末端の一人ひとりまでもが「守ってくれ、と叫んでさえいれば守ってくれるはず」と安心し変化への意思を失ってしまうことが問題なのだ。もう一度、冒頭で引用した石川県の農家の方のコメントを引用して本日の項を終わりにしたい。

<(TPPに)参加しなくても日本の農業は10年もたない。自ら変われないなら、貿易自由化を利用するしかない>





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Last updated  2010.11.12 18:32:17
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京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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