成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.11.16
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カテゴリ: 高速路線バス
出張などで羽田空港に向かう際、近くの駅から空港連絡バスに乗る。厳密に言うとその路線は、駅から徒歩5分ほどのホテルの玄関前が始発であり私の家はホテルの方が近いから、ホテル前から乗車する。その時点ではガラガラだが、すぐに駅前ロータリーのバス停に着きそこではかなりの乗客が列を作って待っている。その路線、片道運賃が820円。出張客や旅行者らはみな1000円札を手に入線を待っているので、運賃箱にそれを投入し「ジー(お札を飲み込む音)、チャリンチャリンチャリン」と釣銭180円が出るまで一人ひとりの乗車扱いにかなりの時間がかかり、朝の混雑時間帯などいつも5分ほど遅れて発車となる。

空港連絡バスに乗る以上はバッファを見込むから発車が5分遅れたくらいで飛行機に乗り遅れたことはないが、車内から見下ろしていていつも気になるのは列の後ろの方に並んでいる乗客のイライラ感ないしは不安感である。朝の羽田行きなど乗客のほとんどは地元(首都圏)在住者でPASMO/SUICAの保有率も高いと思われるから、乗務員が一言、車外マイクで「PASMO/SUICA使えます」と言えばなあ、と思うが、まだそのような案内を聞いたことがない。もちろん事業者には言い分があって<バスの側面(ドア横)に「PASMO/SUICA使えます」とロゴマーク入りで表示しているよ>ということだろうが、一般の乗客がどこまで認識しているか。極端な例えだが、仕事や趣味でバスにたずさわっている皆さんは、今朝自宅を出てから会社に着くまでに見かけた「バス」についてはおおむね事業者名も車種も記憶しているだろうが、では「トラック」についてはどこまで記憶があるだろうか。自宅の前でヤマト運輸を見かけ、交差点を曲がったところでローソンの配送車とすれ違ったことを覚えているか。駅の近くではゴミ収集車を見たが、その収集車は市民ゴミではなく駅前スーパーの業務ゴミの収集だから市の資源局ではなく民間の清掃会社のクルマだったが、ではその会社名を覚えているか。一般の乗客がバスについてどこまで各種表示を意識して見ているかと問われればそのレベルだと考えるべきである。

個別の事業者のマイク使用が足りないと非難するつもりではなく、私は単に、列の後ろの方でイライラする乗客を見て「なんとかしたい」と感じているだけだ。あるいは、後ろの人に気を遣いながら申し訳なさそうに1000円札を運賃箱に挿入している乗客を見て「なんとかしたい」と感じているだけだ。もちろん事業者が窓口や自動券売機を設置すれば解決するとは言え、それ以前にPASMOが使えることを伝えるだけで乗客は1000円札を財布に戻しPASMOでピッとしてくれるなら、その分一人ひとりの乗車扱いが短くなりそれぞれの乗客とその後ろに並ぶ乗客、車内で発車を待つ乗客のストレスが減るなら、私が代わりに窓を開けて車内から「PASMO使えますよ」と大声で言ってあげたいくらいだ。

「接客」をするというのはそういうことだ。<バスの側面に表示している><バス停に書いてある>では、それが伝わっていない以上、接客ができているとは言えないし、それ以上に、イライラする乗客に対し「なんとかしたい」と感じなければいい接客ができるはずがない。最近「ホスピタリティ」という横文字が使われることが増えたが、要するに「おもてなし」の気持ち。友人が自宅に来るといえば掃除もし、その友人の顔を思い浮かべながら彼が好きな酒とつまみを用意するだろう。一人ひとりの乗客に対しそれと同じ事をできるかどうかこそ、その「ホスピタリティ」なのである。

その意味では、高速路線バスも高速ツアーバスも、平場の路線バスも、まぎれもないB to C(一般消費者向け事業)である割にはホスピタリティという点で心もとない。最終的には、現場を預かる一人ひとりの乗務員が、一人ひとりの乗客に対し、上記「友人を自宅に招くつもりで」接することこそゴールである。私も、高速バスターミナルでのバイト時代に接客に目覚め(その頃の思い出話は 「中央高速バス~ふたつの路線~」 、 「秋田行きのお客様」 の項を参照)、それを機にホスピタリティ産業に進んだ身。詳しくは書けないが、今後いろいろな立場からバスという産業のホスピタリティ強化のお手伝いにもまた、たずさわっていきたい。今のところ、年齢的に「マニュアル言葉」に慣れた層が多い高速ツアーバスのセンディングのアルバイトたちが最も無難にこなしているというのは言い過ぎか。それくらい厳しい状況だと認識するしかない。

さて話は変わるが、最近、高速ツアーバスという事業モデルそのものへの賛否がまた言われ始めた。乗合バス事業とは何か、を問うような事象がいくつか起こったことがきっかけだろう。それぞれのご発言者のお気持ちはその立場を考えればよくよく理解できる。しかし、従来の、本来は公益性が大きい「乗合バス」のレギュレーションに「高速バス」を再び押し込めてしまうことだけは避けねばならない。それは、他でもない既存事業者の高速バスの未来をも狭めてしまうことになる。乗合許可で高速バス事業を行なうメリットデメリットと、募集型企画旅行で高速バス事業(といって悪ければ都市間移動を提供する事業)を行なうメリットデメリットを冷静に出し合い、高速バス全体が成長できる新制度やそれに答える事業モデルを作り上げなければならない。一方、逆に「平場」の路線バス事業については、その公益性ゆえ、継続的な運行を担保する仕組みが肝要だ。少なくとも現在高速ツアーバス事業を行なっている企画実施会社たちは、同一県内など短距離の生活路線に「ツアー」業態で参入する意思は全くないだろう。それはいつも書いているように、短距離になればなるほど「ツアー」業態が不利になるからであり、生活路線についてはマーケティングによって爆発的な(東京~大阪などで起きたような)市場拡大を実現するだけの潜在需要が見込めないからである。

まずは関係者が同じテーブルにつくことこそ、いま求められているはずだ。相互の無理解がバス産業の成長の芽を摘むことだけは、なんとしても避けなければならない。





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Last updated  2010.11.16 18:50:06
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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