成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.11.21
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カテゴリ: バス産業
うまく時間が取れたので一人で九州の天草へ。目的は、九州の高速バスの多くに既に乗車したなか、「高速バス」ではないゆえ未乗だった「快速あまくさ号」と、九州産交ツーリズムが企画実施し産交バスが運行する「天草ぐるっと周遊バス・天草キリシタン物語コース」(詳細は 九州産交グループのサイト 参照)の乗車である。

まず仕事的な話から進めると、この「ぐるっと周遊バス」、ビジネススキームという点でなかなか興味深い。今日、旅行業界では「着地型ツアー」への関心が急速に高まっている。従来の、マーケット(つまり旅行者の居住地。「発地」)に近い主に大都市の旅行会社がガイドブック片手に企画する「発地型ツアー」は、市場環境の変化によって人気が低下するであろうと言われている。旅行会社に企画してもらわずとも消費者自らがウェブなどで事前に得られる情報量が圧倒的に増加しているからだ。代わりに、地元の旅行会社が、地元の人しか語り得ない地元の魅力をツアーとして組むことで、遠方からの観光客を呼び込めるというのである。当然、課題の一つは販路である。地方の会社が魅力的なコースを組んでも、東京や大阪で認知を広げることができない。もう一つの課題が安定的な催行である。着地型ツアーの原型といえるのが「定期観光バス」であるが、毎日安定して運行しようとすればどうしても「無難」な内容になる。博物館や古刹など地域の名所を漫然と網羅的に回るしかなく、結局はそれが飽きを生んで、東京(はとバス)、京都、奈良以外の定期観光バスの現状はご存知の通りだ。

九州産交グループはその二つの課題に挑戦した。半日程度の現地ツアーを数多く造成し、それをJTBなど大手旅行会社の販路に乗せた(実はそれは簡単なことではない)。また募集型企画旅行形式とした上で行政やJR九州などとの共同企画とし催行そのものへの同社のリスクを最小化した、結果、天草地区だけをとっても「キリシタン」「イルカウォッチング」などテーマ性のある半日コースが4つも設定されている。しかも1乗車500円(資料館入場料等は別)。催行リスクを無くしたことで多様な商品設定が可能になり、それがテーマ性を持つ「とんがった」企画を導いたのだ。行政にも旅行会社にも路線バス事業者にも深い知識と人脈を持つコーディネーター役と、熊本の観光開発に責任感を持つ新しい経営陣、細部にまで徹底したこだわりを忘れぬ企画担当者の熱意が、新しいビジネスモデルを生み出そうとしている。

この「キリシタン物語」コースは、普段は路線バスに使用される「リエッセ」(小型バス)にボランティアガイドが乗り込む。ガイドのTさんは、県外でサラリーマン生活を勤め上げ定年で地元に戻ったので「地域貢献を」とボランティアに志願したそうだ。たしかに、愛する地元について調べ上げたTさんから生で聞くガイド(というよりレクチャー)は迫力がある。小さな漁村に立つ天主堂の、ステンドグラス一つまで薀蓄が満載だ。資料館では、たまたま時間があいていた館長さん自らが展示を説明してくれた。1日数往復しか路線バスがない小集落の天主堂や資料館を公共交通で回るのは不可能だし、レンタカーでは書面にある以上の知識は得られない。今の私の業務とは直接は関係ないが、着地型ツアーの魅力を広く消費者に伝え、また簡単に予約できる環境を整備することにもまた、ウェブはお手伝いできるだろうと感じた。

さて昨年、長崎県のキリシタン地域(平戸、外海)を回った際にも感じたが、キリシタンの話に触れると、人生とは何なのかいつも深く考えさせられるのだ。例えば「おらしょ」と呼ばれる「潜伏キリシタン」や「カクレキリシタン」の祈り。ポルトガル語で祈りを意味する「オラシオン」が転化したと言われるその名が象徴するように、長い潜伏期間の間に本来のカトリックの祈りから大きく変化してしまっている。いや、ビデオやテープで聞く「おらしょ」はむしろ極めて日本的で、前提条件なしで聞けば仏教の「お経」だと誰もが答えるに違いない。それも僧侶による読経ではなく、庶民が日々口にする「ご詠歌」のようだ。「おらしょ」を唱える一人ひとりにはその意味さえわからないものになっていたかも知れない。正当なキリスト教からは大きく離れてしまっていたはずだ。一方、迫害に怯え屋根裏部屋に隠れながらも「おらしょ」を唱えることが、貧しく単調な人々の生活の中で何らかの支えになっていたなら、ラテン語による神学よりもよほど価値があっただろう。

さらに明治以降、キリスト教解禁を受け西欧からこの地に移り住み、人生をかけて天主堂を建て学校や孤児院を作り産業を興し、この地で亡くなった宣教師の人生。自分は、ガルニエ神父やド・ロ神父のような高邁な生き方はできないが、それでも自分なりに周囲から必要とされる人生を責任を持って歩んでいかないといけない。突然世俗の話に戻り恐縮だが、今の会社に転職し当面は高速ツアーバスを成長させながら高速路線バスの取扱を目指すと決めた際、それでもまだ、自分が大切に感じる高速路線バスへの裏切りではという懸念がないわけではなかった。しかしまもなく5年を迎えるに当たり、多くの方にご理解をいただき、意欲ある路線バス事業者のたくさんの皆様が私の話をよく聞いてくださるようになった。もう迷いなく、既存も新興も、「路線」も「ツアー」も関係なく、バスという産業なかんずく高速バス事業を成長に導く宣教師でいようとあらためて感じた。

平戸や外海もそうだがここ天草でも、紺碧の海と燦燦と降り注ぐ太陽、晩白柚(ばんぺいゆ)など柑橘類の実がなるこの風土は、どことはなしにカトリックの故地である南欧を思わせる。キリシタン禁制前、カトリックが一気にこの地に根付き激しい迫害にも耐えられたのは、もちろん地理的に見て西欧から最も近く南蛮船が入港しやすい、あるいは日本の中では西端に位置し迫害の嵐が届きづらかったという物理的な側面とともに、この気候風土も後押ししたのだろうと実感する。一方、東シナ海から吹き上がる風は地中海のそれとは違い湿り気を帯び、この海のすぐ先にウェットな活気溢れる中国そしてアジア各国が広がっていることを想起させる。500年も前、地球の裏側から文化を運んだ人々。今、急成長を遂げる隣国たち。時間や空間の無限の広がりとそれに比して自らの小ささとを、海を見下ろす天主堂で実感しながら、これからの自分の人生について焦点を合わせられた気がした。





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Last updated  2010.11.21 18:04:58コメント(0) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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