成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.12.17
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カテゴリ: バス産業
高速バスの制度を今後どのような方向に導くべきか。言うまでもなく難しい問題である。人により立場の違いも、短期的に何かを求めるのか長期的なのかの差もある。「バス業界の将来を考えて」などとキレイな言葉を誰かが使ったとして、そこでいう「バス業界」の範囲さえ人によって理解が違うわけだから、何が正で何が誤か、白黒つけることは難しい。大切なことは、関係者一人ひとりが他の関係者の立場を理解しようと努めることだ。自分の考えを、市民や利用者がどう捉えるか想像しようと努めることだ。客観性を失った発言は事態の収拾を難しくするばかりか、発言した側自身が思わぬ非難を浴びるリスクさえある。

一例を挙げるなら「内部補助理論」だ(いつも書いていることだが)。私自身は、公的補助の絶対額が十分と言えないなか、各事業者は地域への責任感と使命感から我が身を削って地域の公共交通ネットワーク維持に腐心していることを知っているし、それを尊いと感じるからこそバスに興味を持った。しかし多くの事業者は株式会社であり、全ての株主が将来も同じように感じ続けてくれる保証はない。あるいは「高速バスの競争が激化し収益性が低下したため過疎地の路線バスを維持できなくなった」ということを、それを「事実」として伝えることはよくても(事実として伝えるだけなら、メーカーが「海外製の安い商品が入ってきて当社の売上が減った」という事実を言っているのと同じだ)、政策への不満として表明するということは、捉え方によっては「過疎地の路線バスを維持するために高速バスの競争を制限すべきだ」と主張しているように受け止められるリスクがある。

現行の道路運送法では内部補助による路線維持の考え方が否定されていることは事実だし、過疎路線維持に関するモラルハザードの問題もある。そして上記主張は、裏を返せば路線バスの赤字が今後どこまで増えても社内のやりくりでなんとかすると社会に約束しているようなものだが、そんな約束が本当にできるのか。また「過疎地の路線バスを維持するため結果として高速バス利用者が不当に高い運賃を支払わされている」という論理がメディアを通して市民に流布するリスクが全く無いと誰も言い切れないだろう(現実に研究者の論文には見られる指摘である。まだ市民の目に触れていないだけだ)。ましてや、既存バス事業者に対し市民がどのような感情を持っているかという点を考慮に入れれば(「地元の大切なバス会社さん」と感じてくれているありがたい市民もいるだろうが、運輸政策研究機構・公共交通支援センターの座談会で鉄道事業者が自ら告白しているように 「電車は要るけれど○○電鉄は要らない」 という感情を持つ市民がいないとは、どのバス事業者も言い切れはしないだろう)、上記のようなリスクは最小限にとどめた方がいいはずだ。そこを判断するのが経営者の仕事である。

高速ツアーバスの集合場所のあり方に対する過ぎた非難も、舵取りを誤ると、「停留所の権利」とは一体何なのかという議論に進みうる。空港の発着枠でさえ「新規参入枠」が設けられている今、バスの停留所に関して再配分の制度、少なくとも新規参入を望む者に対し公平性が担保された配分の仕組みが無い現状について、メディアの採り上げ方によって市民がどう反応するかシミュレーションだけはしておくべきだ(つい先日も、オフィシャル感が強いお立場の方が停留所の権利について、<そんなの、ブンヤ(新聞記者)が一つ書いちまえばすぐにガラガラポンだ>と笑っておられた)。万に一つでも都心の停留所について再配分の機能が作られ(あるいは停留所の権利に入札制度でも導入され)たりしたら、高速バスの世界に何が起こるか想像だけはしておくべきだ。

新規参入高速バスのほとんどが「ツアー」形式であるゆえ事前予約・決済が必須とされ長距離の夜行便にほぼ特化している現状を正しく把握しているなら、万に一つでも既存事業者の都心の停留所の一部が強制的に取り上げられ、ウィラーや平成に優先配分されたなら何が起こるか、想像できるはずだ。新規参入側が大手を振って停留所から「路線」形式で高速バス事業を展開できるようになることは、収益性が大きくない長距離の夜行便のみならず、より収益性が大きい短・中距離の路線で本格的な競争が始まることを意味するのだ。既存事業者が高速バス事業から得る利益のうち、「ツアー」形式の方が有利とされる長距離夜行路線が占める比率と、「ツアー」では不利なため未だ新規参入がほとんどない短・中距離の多頻度昼行路線が占める比率はいかほどか、事業者自身がよく知っているはずである。

この場で(個人の立場で書いているから)高速ツアーバス側の正当性を主張するつもりはない。「事務局」の役割は、仕事として粛々とこなしていく。高速ツアーバスに課題が一切ないなどと言うつもりもない。直すべきところは直すべきだし、不足な点は補うべきだ。

しかし、誰かが客観性を欠いた一方的な主張をしたために、高速バスの未来が閉じてしまうことは許さない。私が考える最大のリスクは、旧来の固定観念の元に高速バスが戻ってしまうことだ。「やはり守ってもらえた」とばかり、既存事業者が自己変革の歩みを止めてしまうことだ。一般乗合のレギュレーションや業界の固定観念に固執しなければ高速バス市場を大きく拡大できることは、この5年間で証明された。その過程で発生した問題については真摯に対処すべきだが、それは、高速バスのレギュレーションを5年前の時点まで戻すことと同義ではない。高速バス市場成長の可能性を摘み取っていいわけはない。

繰り返すが、本日書いた内容を「高速ツアーバスの正当化」と読む方がいるなら、仕方ないとはいえ残念だ。よく読んで欲しい。上に挙げたのは全てあくまでも「リスク」であり、私の「希望」では決してない。そしてそれらは全て、既存事業者側のリスクなのだ(書きながら、<ああやっぱり自分は既存側のことばっかり心配しているよなあ>とあらためて実感している)。相手への無理解が客観性のない発言を誘発しないよう、既存事業者の側こそ、視野を広げていろんな人の意見に耳を傾けるべきである。





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Last updated  2010.12.17 18:45:27
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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
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