成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2010.12.21
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カテゴリ: バス産業
両備グループの公式サイトで、同社・小嶋代表のメッセージ 『地域公共交通を延命策から夢のある21世紀の政策へ!』 が発表されている。公共交通の再生に関して数々の実績を残してきた同グループ小嶋代表の最新メッセージである。本メッセージ中にも「違法と思われるツアーバス」という表現もあり、ここだけは立場の違いというか以前から私としてはどうしても同感しかねる部分だが、それ以外は小嶋代表のご発言に個人としていつも共感しており今回も心から賛同する。「公共交通」という錦の御旗の元に自分たちを正当化し、事なかれ主義で自己変革を拒む形ばかりの経営者が多い中で、社内で強いリーダーシップを発揮する姿に私は大いに憧れるものである。

小嶋代表のご主張と公共交通再生への情熱は以前から変わりないが、今回は以下の点を明確になさっているところが目新しい(以下はいずれも原文中でも太字で強調されている)。
・「先進国で公共交通を民間に任せきったのは日本だけ」
・公共交通衰退の理由は、マイカー普及などとともに「補助金行政の副作用により」「経営不在を助長する結果になったこと」および「顧客不在の自滅的な労使不仲を助長する結果となったこと」である。

前者の<公共交通は本来的には民間が担うべきものではなかった>という考えは、研究者のみならず、最近ようやく事業者の経営者からも言われるようになってきた。人口密度の大きさや高度経済成長、土地の値上がり神話、「物言わぬ株主」といった恵まれた外的環境の元、日本の公共交通は戦後ずっと民間企業に任せられてきた。もちろんその過程で、沿線経営というビジネスモデルを構築した阪急の小林一三を筆頭に、地域交通への責任感使命感をもって業務に当たってきた一人ひとりの真摯さには心から共感する。だが外的環境が大きく変化を続けている今日、「古きよき時代」の手法は限界を迎えつつある。

この状況においてなお、<不動産や流通、高速バスなどの黒字で路線バスの赤字を埋め合わせることで公共交通ネットワークを何十年も維持してきたんだ。だからこれからも同じように食っていけるはずだし、そうするべきだ>と主張する経営者がいるなら、四面楚歌になりながらも<精神力で敵機を撃ち落せ>と指示した某国の戦時中の指導者となんら変わらない。路線バス部門の中において内部補助は当初から行なわれてきたものの、高速バス部門など他部門から補助が行なわれ始めたのはここ20~30年ほどの話でしかなく、しかもその間の路線バス部門の収支悪化の勢いは急激だ。歴史家的視点に立てる(というほど格好いいものではなく、要するに10年スパンで物を考えられる)経営者なら、内部補助の原資を守るために高速バスの競争を制限することや、公的補助の申請に分厚い書類を書くことが担当者のルーティンワークになっている現状が、短期的な延命処置にしかならないことはすぐに理解できるはずだ。

そして後者の、「補助金行政の副作用」としての「経営不在」「自滅的な労使不仲」については、お見事、さすが内側から変革を促し公共交通の維持(地元岡山)と再生(和歌山、福山、三重など)を成功させてきた同氏ならではのご発言である。公益性が大きい企業として競争が制限され、地元の名士企業として、保守系政治家との強固な関係をベースに生きてきた多くの既存事業者の経営力がいかほどであったか、その点については誰も指摘できずにいた(かくいう私自身、いろんな方に遠慮して本ブログでもぼやかしていた)。性善説にもとづいた<地方の路線バス会社は苦しい状況の中で一生懸命がんばっている>という感傷的な評価はこれまでから何度も出されてきたが、では全てのバス事業者の経営者は、異業種の経営者と比較して高い評価を受けることができるだろうか。規制産業ゆえの構造が、先送り経営と特有の労使関係を誘発してはいなかったか。異業種からバス事業者の経営者となり変革を進めてきた同氏ならではの鋭いご指摘である。

本メッセージ中の、規制緩和に関する評価については個人的には気になる(私の考えは、競争原理導入によって市場が拡大する蓋然性が大きい事業分野とそうでない事業分野とで対応を分けるべき、というものであって、なんでもかんでも規制緩和は悪というのは違和感がある)ものの、全てを外部環境のせいにし続けてきた他の多くの経営者とは大きく違う。まずは自らの体に自らメスを入れ、癌を取り出す勇気が必要だ。このまま変わることができなければ、バスという産業の余命はそう長くはない。繰り返すが、小嶋代表の勇気あるご発言に大いに賛同し、同氏には心から憧れるしだいである。

岩手県北自動車の「帰省・上京バス」 (正式な契約先は旅行会社である「岩手県北観光」)の取扱を開始した。最近、乗合系事業者の取扱開始であっても、「乗合」形式ではなく「ツアー」形式の場合、 イルカ交通の高速ツアーバス参入 (同社を「乗合系」と呼ぶかどうかは別にして)を最後にこの場で紹介していなかったが、本ケースは、全国に高速路線バスの路線網が完成する前から化石?のように残っていた「帰省バス」である点が興味深くあえてご紹介するものである。スタッフから<県北さんは、まずは「帰省・上京バス」から取扱させてくださるとのことなので準備に入ります>と報告を受けた際、「帰省・上京」という「昭和」感あふれた懐かしい響きに、この国における高速バス事業(という言い方で悪ければ「都市間のバス輸送サービス」)成長の歴史の長さをまず思った。そして、過去よりも未来の方がさらに長いであろうその歴史を意識し、いま自分たちが直面している課題を年表のどこにプロットすべきなのか常に考えながら仕事をすることを忘れないようにしよう。そんな風に思いを新たにしたのだった。





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Last updated  2010.12.21 18:18:27コメント(0) | コメントを書く


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京帝117@ ご参考まで この度 K電鉄バスの取締役安全技術部長に…
京帝117@ 残念でした 他にメッセージをお送りする方法を知らな…
成定竜一@ Re[1]:中央高速バス~ふたつの路線~(02/24) 京帝117さん、コメントありがとうございま…
京帝117@ Re:中央高速バス~この風は、山なみの遙かから~(03/02) 86年に私と、その後KKKに入社したH君の2…
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