成定 竜一~高速バス新時代~

成定 竜一~高速バス新時代~

2011.04.14
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カテゴリ: 高速ツアーバス
昨日、徳島県の海部観光から、 「マイ・フローラ」 について正式発表があった。富山県のイルカ交通の 「和(なごみ)」 と合わせ、4月27日に二つの「2列シート」高速ツアーバスが運行を開始する。

片や、エアロクイーン。片や、ガーラ。片や、徹底的に居住性にこだわった12人乗り。片や、定員とのバランスを考慮した20人乗り。片や、まずは1台のみ導入し既存の3列車と隔日運行し乗客アンケートなどで改善点を洗い出したうえでもう1台を完成。片や、スタート時から一気に毎日運行の2台体制。対照的な面もあるが、この時期に、東京と地方都市を結ぶ夜行路線に、現地側の事業者(どちらも自社の旅行部門で企画実施)が2列シート車を導入するというニュースは偶然とはいえ興味深い。両社とも、オリジナルで作り上げた座席周りの造作が、保安基準等をクリアするようギリギリまで調整を繰り返したという点も共通している。

共通していると言えば、両社の経営者のバスへの熱い思い、もだ。一見、片や温厚で片やエネルギッシュなお人柄に見えるが、乗務員や車両などバス事業への強い思い入れは共通している(余談だが、ともに貨物運送ご出身という点も共通だ)。両社を訪問して打ち合わせを済ませ辞するとき、私はいつも、この経営者の思い入れを自分が十分に受け止め、力になれているだろうか自問する。「わざわざ東京から足を運んでもらって」という一言で、大目に見てもらっているのではないかと不安になるくらい、どちらもバスへの思いが強い。大げさではない。大手私鉄系事業者のアルバイトとしてバスと出会い、数年前まで、「ぽっと出」の独立系事業者などバカにしていた私が自省を込めて言うのだから理解してほしい。

同じ時期に、同じような事業者が同じような車両を導入するのは、もちろん、それ自体は偶然に過ぎない。だが、その背景にある環境変化を考えることは重要である。

ウィラートラベルや平成エンタープライズも含めた高速ツアーバスの高級車両ラッシュには、たしかに、デジャ・ヴ(既視感)を感じる。1980年代後半から90年代前半、高速バス(当時は「高速路線バス」のみ)は右肩上がりだった。田中角栄の列島改造論の結果として高速道路は全地方都市へ延伸され、共同運行クローズドドア制度定着で各地元の路線バス事業者が自ら高速バス事業に参入。地方都市側で最大限に需要を喚起した。我が国は空前の好景気(後から思えばバブル)の中にあり、各社とも車両の高級化を競った。その頃を知る人にとっては、「いつか来た道」であり、高速ツアーバスを快く思わない人なら「二番煎じを、さも“一番煎じ”のようにメディアが取り上げるのが許せない」ことだろう。

だが、「車両の高級化」という表面的な事象だけを取り上げるなら、木を見て森を見ず、である。あの頃の高級化とは何が違うのか。

当時は、高速バス事業は独占免許(平場の路線バスの「地域独占免許」に対して、1組の共同運行ペアに対して独占的に認可が与えられる、いわば「路線独占免許」)であった。また運賃についても認可制であり、同一区間同一運賃の原則が貫かれていた。だから、車両の高級化は、路線単位で行なわれた。所要時間が2時間を超えるとトイレが付き、3時間を超えるとシートピッチが広め、6時間を超えるあたりから3列シート、というのがおおむねのパターンで、これに各事業者や地域の特性により変化が加わる。すなわち、乗客が実際にどの車両に乗るかは、路線単位で、事業者側が決めていたことになる。



なぜそう変わったのか。もちろん規制サイドの変化もあるが、実はそれ以上に重要なのが、ウェブ予約の普及である。多様な車両、多様な価格を電話予約で取扱うのは難しいが、今日では、乗客自身が、画面上で画像やスペック、他の乗客の感想まで比較しながら自ら予約入力操作をするようになったのだ。それゆえ、既存の3列シートやスタンダードの存在を前提とした上での、「マイ・フローラ」「和」であることが、以前と大きく異なる。

その流れは、まず、潜在需要の大きさに比べて高速バスの認知が著しく低く大きなホワイトスペースが残っていた首都圏~京阪神などの大都市間路線において花開いた。既存路線の存在感が相対的に小さかったから、「ウェブ化以後」を前提とした市場展開ができたのだ。ウィラーの「ビジネスクラス」、平成の「ロイヤルブルー」はその象徴だろう。それが今、既存路線も相応の存在感を持つ、首都圏~地方都市の夜行路線に展開が始まった。

当然、その先には、高速バス市場の「本丸」である、多頻度昼行路線がある。もちろん、習慣的利用が多くフリークエンシーこそ最大のサービスとなる点で、夜行路線とは大きく事情が異なる。しかし、ウェブ化の進展により「情報の非対称性」が解消されたことは、路線の長短に関係なく共通だ。新宿~松本線の「Sクラス」、福岡~宮崎線の(まずは「皆割」その後の)「席割」用の「セレクトシート車」は、その萌芽とも言える。習慣的利用が多く、回数券比率が高く、さらにウェブ予約比率が低い多頻度昼行路線において、多様なニーズにいかに万遍なく答えるか。困難は多い。もっとも、各社に対しそれをお手伝いすることこそが、今回の私の最大の挑戦であり、同時にメシの種でもあるのだが。





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Last updated  2011.04.14 09:45:27
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Re:「マイ・フローラ」と「和(なごみ)」(04/14)  
pandacreate  さん
この国にもようやく「2列シート」が登場ですか。
台湾で「高速バス」を利用する機会が多いのですが、その殆どが2列シート車です。
定員は16~17名、ハイデッカー(中二階)、車両中央階下にトイレがあるタイプです。各座席には液晶テレビ、フルリクライニングするシートにはマッサージ機能付で国際線ビジネスクラス以上の快適さです。
彼の地では、運行事業者がバスを製造して営業しています。それぞれに特徴があり、他社に乗るのも楽しみの一つです。
それに運行本数が多いのも台湾ならではかもしれません。台北~高雄線などは複数社での運行ですから20分~30分待てば次のバスが来ます。

日本での2列シート車、大歓迎です。3列車は通路幅も半端で落ち着きません。

余談ですが、台湾の高速バス、台北~高雄まで約4時間、ドライバーの休憩はありません。私自身、かつてバスドライバーをしていた時期があり、大丈夫?と要らぬ心配をしてしまいました。乗客はトイレに行けますが、ドライバーさんはどうしているのでしょうか?と。未だに謎です。
(2011.04.14 19:15:06)

Re[1]:「マイ・フローラ」と「和(なごみ)」(04/14)  
nalys  さん
pandacreateさん、ご愛読、コメントいただきありがとうございます。

私は台湾の高速バスを自分で見たり乗ったりしたことはないのですが、車両もバスターミナルも高級なものも多く、運行頻度も大きいようですね。

そこに至るまでに、あえて日本に例えれば、高速路線バスの認可は国鉄バス独占、それ以外の民間事業者はすべて高速ツアーバス、というような状況もあったようですね(現在は違うようですが)。私としては、海部やイルカやウィラーや平成のような特別に元気な会社が起こすブレークスルーも大事ですが、その他大勢の会社も常に顧客の声に耳を澄ませ新しいアイデアを出し続けるような、「仕組み」(競争環境のあり方、法制度のあり方、業界の雰囲気など)を作ることが、高速バス業界(乗合もツアーも)全体を盛り上げると考えているので、仕組みづくりをがんばります。

あと、バス1台まるごとではありませんが、同じ4月27日運行開始の車両で、弘南バスの「津輕号」の新車も2列&3列合造車です。こちらは高速路線バスですが。

またコメントをお待ちしています。 (2011.04.17 08:32:42)

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